小さな種を手に入れて
そっと地面に植えてみた
そこは光も水も栄養も
豊富にあると聞かされていた
だけど種は出てこない
待っても待っても
生まれてこない
怖くなって掘り返すと
種は暗い地面の中で
カタカタ小さく震えていた
暗闇が怖かったのか
一人なのが怖かったのか
聞いても返事は返ってこない
僕は次の日
小さな種を
小さな鉢に植え替えた
小さな家の小さな出窓の
光の差し込む暖かい場所
「ここなら君は一人じゃないよ」
自然と口から零れた言葉
返事をくれるはずもないのに
僕はそっと語りかけてた
その日から
僕は毎日語りかけた
土の中でカタカタ震える
小さな種を包むように
「外の世界は怖くないよ」
「そこより少し眩しいけれど
たくさんの仲間が君を待ってるよ」
いつか誰かに伝えた言葉
今はこの
小さな種に語りかけてる
カタカタ震える小さな種は
いつしか動きを止めていたけど
掘り返したりはしたくない
君がどんな決断をしたのか
僕には言ってくれなかったけど
外の世界に出てくることを
僕は今でも信じているから
次の日の朝
小さな種はなくなっていた
土の中にも鉢の中にも
面影すら残ってなかった
だけど僕は寂しくなかった
だって僕の隣には
いつか同じ言葉を伝えた
あの頃の君が笑っているから
投稿者: nari1987818
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