2008/7/10
さばくまちのとなりにある、こうげんのいなかまちでぱいなっぷるくんはうまれました。
そのまちは、まわりがさばくばかりだったので、ちいさいころのぱいなっぷるくんは、よのなかにあるのは、さばくか、くさばかりのそうげんか、どうぶつがすこしだけすんでいるいなかまちのどれかだと、ずっとおもっていました。
やがておおきくなり、ぱいなっぷるくんは、せんとらるというだいとかいにいき、それから、ぶりっぐずというおしろのおひめさまのあそびあいてとしてはたらくようになりました。
これは、ぱいなっぷるくんが、おしろのみんなといっしょに、さくらんぼをとりにいったときのおはなしです。
ぶりっぐずのおしろにすんでいるおりびえひめさまは、あーむすとろんぐけという、とてもりっぱなきぞくのいえの、いちばんうえのおひめさまです。おひめさまは、おひめさまのごりょうしんから、ぶりっぐずのおしろにちかいところにある、のうじょうをいくつももらっていました。
まいとし、はるすぎになると、おひめさまはおしろのみんなをつれて、きいちごをつみにいきますが、ことしはとてもいそがしかったため、きいちごをとりにいくじかんがとれませんでした。
のうじょうのすぐちかくにきいちごのきがはえているというところから、おひめさまのためにつくりました、というおてがみがそえられて、きいちごのじゃむがたくさんおくられてきました。そして、このてがみには、こんなことがかいてありました。
「もうすぐなつがきます。あとはんつきもすれば、わたしのいえのさくらんぼがたべごろになります。ぜひ、さくらんぼをたべにおこしください。」
おりびえひめさまは、くだものがだいすきです。さくらんぼもだいすきなので、さっそくとりにいきたい、といいだしました。
ぱいなっぷるくんは、すこししんぱいになりました。さくらんぼは、さくらのきになります。さくらのきは、おおきいりっぱなきだと、たかいところまでのぼらないとさくらんぼがとれません。
「なにをいうか、まいるず。ひさしぶりにきのぼりができるから、わたしはたのしみにしているのに。だいいち、はしごの1つや2つ、のうじょうにはあるだろう。たまには、たかいところにのぼって、たかいそらにちかづき、うまいさくらんぼの1つや2つ、たべたいものだ。」
わかりました、とぱいなっぷるくんはこたえました。でも、おひめさまがきからおちてけがをするといけないので、こっそりいむしつにいって、ほうたいやぬりぐすりなどをたくさんもらってきました。おつきのくまくんも、どこからかおおきなまっとをもってきて、これでおひめさまがおちたときにうけとめる、といいました。
2しゅうかんほどたったところで、おひめさまはおしろのひとたちをつれて、さくらんぼをとりにいきました。
のうじょうにつくと、さっそくおひめさまは、さくらのきによじのぼろうとします。
「まいるず、ばっかにあ。このさくらのきのしたに、しーとをしいておけ。これからわたしがさくらんぼをとるから、それをうけとって、あつめるように。」
ぱいなっぷるくんは、おともとしてきていたくまくんたちといっしょに、くっしょんをしきつめ、そのうえをおおうよう、びにーるしーとをしきました。すると、おひめさまはさくらのきにはしごをかけると、するするうえにのぼっていきます。
やがて、しーとのうえに、おひめさまがとったさくらんぼがどんどんおとされていきます。
「うん、くっしょんがあるので、さくらんぼをおとしてもいいぐあいだ。」
おひめさまは、ごきげんでさくらんぼをとります。ときどき、さくらんぼをつまみぐいしながら。けっきょく、ほとんどのさくらんぼをとったあと、したにしかれたくっしょんのうえからすべてのさくらんぼがなくなったところで、くるんとえだをいっかいてんし、おりびえひめさまは、くっしょんのうえにちゃくちしました。
「なにをなきそうなかおをしている、まいるず。わたしはだいじょうぶだから。さあ、さくらんぼをたべよう!」
おひめさまは、ぱいなっぷるくんや、くまくんたちに、じぶんがとったさくらんぼをてわたします。
さくらんぼは、ひょうめんがつやつやしていて、こいぴんくいろをしています。あまずっぱくて、きゅんとするあじです。なんだか、おひめさまのくちびるみたいだな、とおもいながら、ぱいなっぷるくんは、さくらんぼをたくさんたべました。
しばらくしてから、おひめさまが、おかしなことをいいだしました。
「そういえば、このまえいむしつでおもしろいことをきいた。さくらんぼのえだがくちのなかでむすべるひとは、とてもきようだと、いっていた。」
「きよう、ですか?どのへんが?」
「さあな。」
おひめさまは、うっすらほほえむと、しらんかおをします。
ぱいなっぷるくんは、なにがきようになるのか、ぜんぜんわかりませんでしたが、おひめさまが『まいるず、きさまもすこしれんしゅうしておけ。』というので、おとなしくれんしゅうしはじめました。
できるだけながいさくらんぼのえだをえらびましたが、なかなかおもうようにいきません。でも、くちのなかにさくらんぼのえだをいれて、ほほをふくらませたりすぼめたりしながら、なんどもなんどもれんしゅうし、やっと40ふんくらいかかって、さくらんぼのえだをむすぶことができました。
おひめさまはそれをみて、もっとはやくできるようになれ、とわらいました。ぱいなっぷるくんは、おひめさまがわらうのならば、もっとたくさん、それもいっしょうけんめいれんしゅうしようとおもい、また、なんどもなんどもれんしゅうしました。やがて、5ふんくらいで、くちのなかで、さくらんぼのえだをむすぶことができるようになると、おひめさまはわらって、よくやった、とぱいなっぷるくんをほめてくれました。
「これくらいうまくむすべるようになれば、いいだろう。よくがんばったな、まいるず。あとで、わたしのへやにこい。ごほうびをやる。」
「――それで、マイルズに唇を奪われ過ぎた、というわけなの、オリヴィエ?」
ここは、ブリッグズの医務室。そこでは、城の主ことオリヴィエ・ミラ・アームストロング少将が、唇専用の腫れ止め薬を塗ってもらっている。
「だいたい、貴様が妙なことを言い出すからだ。さくらんぼの枝を口の中で結ぶようになれれば、テクニシャンになれるとか、女をうっとりさせるキスができるようになるとか言うからだ。」
「私がそのことを話したのは、オリヴィエに対してだけれど?」
「あのな、私の後で常に影のように付きまとっている男の存在を忘れたのか?」
オリヴィエは、よほど唇が腫れぼったいのが鬱陶しいのだろう。腫れ止めの内服薬もよこせ、と女医に詰め寄った。
「補佐官は、いつ何時も、上司である将軍を守る責務を負っている。だからこそ、仮に私がここに居る時も、本来ならばいっしょにいるのだ。」
「でも今は、なぜに別行動?」
「節操無く唇を奪い続ける男は嫌いだからだ。礼を知る人間ならば、舌を絡めるタイプのキスは、夜のベッド以外でするもんじゃない。少なくとも、昼食後に歯磨きをする前には、だ。」
医務室の部屋に貼られた、食堂の献立表。昨日のメニューはエスニック風カレースープだ。なるほど、確かにこんなものを食した後に唇を吸われたら、100年の恋だって1分で冷めかねない。
タンニンの渋みの強い、まずい紅茶を啜りながら、『ほんと、男って、バカよねぇー』と言っているオリヴィエたち――その隣の部屋で、マイルズはイーストシティにいる、とある女たらしに連絡していた。いかに、唇を腫らさない形で、深く口づける方法は何かないものかを尋ねるために。
電話口の向こうの男は、呆れた声ではあるが、それでも根気よく2,3の助言をしつつ、ところで、とマイルズに訊ねる。
「しかし、あの女王様が怖くないのか、君は?」
「もちろん、怖いですよ。――仕事をしているときは。でも――。」
言いよどんだ言葉は、相手に伝えなかった。『ひとたびベッドの中に入れば、オリヴィエは甘やかな声とつややかな唇と、しっとり濡れた瞳で、私だけ見つめてくれる。』ということを。
経験値の高い相手――ロイ・マスタングは、すぐさま色ごとに関する気を読んだ。ただ、いつかオリヴィエが自分の近くのところに来た日には、噂の真相を確かめてやろうかと、危険な好奇心に爪立てていた。マイルズには気づかれぬよう、実にこっそりと。(FIN)
投稿者: miyanomiki
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