2008/5/18
群雲後編16−信長x光秀恋物語− 光秀公記
『群雲後編第十六話』
弘治二年(一五五六年)卯月十八日、その日は朝から麗らかな日和であった。水色の空が広がり、穏やかな太陽が春の野を照らしている。そろそろ桜の蕾も膨らみ出して、花見の仕度に心も浮き立つようなそんな一日が、始まるはずであった。だが、
「報告、稲葉山城より義龍軍が鶴山方面へ向かっております!」
「報告、第一陣鷺山より出発致しましてございます!」
物々しく武装した兵達が将達に率いられ、次々と鷺山城を出発して行く。様々な色の旗指物が、鷺山から真っすぐに列を成して伸びている。整然とした行軍風景は実に勇壮だ。
「とうとう、この日がやって来たのですね」
蒔絵細工の見事な鞍を纏った白馬に跨り現れた光秀は、自らも桔梗の前盾を頂いた目にも鮮やかな赤糸威鎧に装っている。甲冑姿の光秀は兜の下から覗く切れ長の瞳が普段以上に凛々しく、禁欲的で冴え渡った美を放っている。光秀の叔父光安が、立派に成長した光秀を眩しそうに見つめている。
「光秀、此度の戦はこれまでとは違い辛く厳しいものになるであろう。しかしだからこそ奮起し、功を立てる機会も多くあると言うものだ」
苦境を嘆くのではなく、この状況を逆に利用してやるくらいの気概で行けと、光安が光秀を励ます。光秀は、いつであっても前向きな叔父に、力強く頷き返した。
圧倒的不利を悲観する前に、今自分にできることを考えなくてはいけない。油断すると怖気に負けそうになる心を自ら叱咤する。
「叔父上、我ら明智の力、存分に見せつけてやりましょうぞ」
「おお、おお、その息じゃ」
頼もしい甥の言葉に、光安は満足そうな笑顔で答えた。
やがて集った兵達が二手に割れ、黒糸威鎧に身を包んだ主君斉藤道三が肩で風を切るようにして颯爽と現れた。鎧兜を身に纏った道三は美濃の覇者にふさわしい風格だ。
「お館様、出立の用意相整ってございます」
叔父光安と共に片膝をつき、頭を垂れた光秀は道三の言葉を待った。
道三が顔を上げ、前方の様子を確認する。合戦場へ向け、行軍していく自軍の兵に目を止め、道三は低い声で唸った。むんずと結ばれたいかつい唇が二ッと綻ぶ。
「ハッハッハッ、これはなかなかの見物よのう。血、肉滾るようじゃわい」
老いて尚、衰えることを知らぬように、道三の瞳は闘志にギラギラと輝いている。生命力に満ち溢れ、本来の獰猛さを取り戻した道三に、光秀の胸もワクワクと高鳴る。誇らしい思いで、光秀は主を見上げた。
「光秀、光安、そなたらには今日まで苦労をかけたな。よくワシに尽くしてくれた、感謝しておるぞ」
「――お館様」
視線を向けて来た道三の瞳は慈悲に満ちていた。道三が代わる代わる光秀と光安を見つめる。悟りにも似た静かで穏やかな瞳、その奥には消そうとしても消せない悲哀の色を含んでいる。
そうだ、これはただの戦ではないのだと、光秀は大切なことを思い出した。道三と共に戦場に立てるのが嬉しくて不謹慎にも胸を弾ませてしまったが、この戦は義龍との決別なのだ。
我が子を手にかけねばならぬ道三の苦悩は計り知れない。それに気づいた途端、急に道三が遠くなった気がした。道三はあんなに溌剌としているのに、今にも病の床に臥してしまいそうな年齢以上の老人に道三が見えるのは何故だろう?
「今日は長い一日になるであろうなぁ」
高い空に目を移し、道三が感慨深く呟く。何かを覚悟したような、重い響きがそこにはあった。光秀はこんな時道三になんと声をかけたらいいのか、皆目見当もつかなかった。ただ切なさと哀れみの入り乱れた目を、主に向けていた。
光秀の視線を痛いほどに浴びていた道三が、空から再び光秀に視線を移す。道三は自らも膝を折ると、ガッシリとした大きな手で光秀の肩をつかんだ。道三がまっすぐに光秀を見つめる。
「光秀、そなたはまこと智にも武にも優れ、ワシにはもったいないほどの武将に成長した。そなたほどの武将を配下に持ったこと、ワシは誇らしい。そなたはワシの自慢の部下であり同時に、可愛くて仕方ない甥っ子じゃ」
道三はポンポンと、親しみのこもった手で光秀の肩を叩いた。温かい道三の言葉に、目頭が熱くなる。
「もったいないお言葉でございます」
瞳を伏せ睫を震わせる光秀は、らしくなく感情を素直に面に載せていた。
この方にお仕えできてよかった。このお方と同じ時代に生まれることができてよかったと、光秀は心から喜びを噛み締めた。
すくっと道三が立ち上がる。
「さて、バカ息子を諌めに行くかな」
トントンと自ら肩を叩き苦笑いを浮かべ、普段と変わらぬ口調で道三が言った。
「鶴山へ向け、進軍じゃ」
「ハッ」
主の下知に、光秀光安そろって頭を垂れる。
いよいよ大戦が始まる。負けるわけにはいかない大一番、なんとしてでも勝つ!
意気揚々と面を上げ、主に続こうとした光秀に、しかし道三は思いもかけぬ命を下した。
「光秀、そなたは明智城の守りを固めよ」
「明智の城に? お館様、それはいったいどう言うことでございましょう!」
これより長良川の合戦場へ出て全軍への指揮、道三の護衛にあたるつもりでいた光秀には、寝耳に水であった。
「私は、この身命を賭してお館様をお守り致す所存です!」
今更城へ帰れだなどと、冗談ではないと光秀が牙を向く。しかし道三はそれを歯牙にもかけず、反対に光秀の勇み足を諌めた。
「そなたの忠義はこの道三まこと、ありがたく思う。だからこそ全幅の信頼をおけるそなたに頼みたいのじゃ。これはそなたにしかできぬ大役じゃ」
怖いほどに真剣な目を向けていた道三が、フワっと目元に皺を刻む。父のように優しい瞳で道三が光秀に告げた。
「光秀、そなたに頼みたいのは他でもない、婿殿――信長殿のことじゃ」
「――信長様のっ」
道三の口から飛び出した名前に、光秀の心臓がひっくり返る。ポカンと口を半開きにしたまま、胸をざわつかせる光秀を、道三は静穏な瞳で見つめていた。
「そなたには、明智城へ戻り尾張の婿殿と連絡を取ってもらいたい。この戦、婿殿の軍が勝敗の鍵を握ることは、そなたも承知しておろう。そなたは尾張よりの婿殿の軍を先導し、戦場へ入るように。これはそなたにしか頼めぬことじゃ。やってくれるな、光秀」
信長への援軍要請、それはこの戦において大変重要な役目である。信長を戦場まで導く。美濃の地理に疎い信長を先導するのは自然なことで、道三の言うことはもっともらしいように聞えた。
道三の判断に間違いはないと、光秀も思う。しかし、今ここでお館様と離れてはいけない。本能めいた感情が、光秀の返事を鈍らせる。
」
「安心せい、そなたの活躍の場はしっかり残しておいてやる。それでな、これが書状じゃ、そなたの目で改めよ」
道三が差し出した書状を開き、目を通す。終いまで読み終えぬうちに光秀は顔色を変えた。苦渋の滲んだ面で道三を仰ぎ見る。
『戦に勝利した際には、美濃は信長に献じる』書状にはそうした内容が記されていた。
(お館様、これほどのお覚悟とは)
「光秀、そなたの役目は重要ぞ。そなたの手腕に我が軍の行く末がかかっておる。どうじゃ、引き受ける気に、なってくれたか?」
再度道三が光秀に訊ねる。光秀は迷いの失せた澄んだ瞳で道三を見つめ直すと、姿勢を正し深々と頭を下げた。
「必ずやお役目果たし、お館様のおそばに馳せ参じます」
「うむ、共に戦場を駆け抜けようぞ」
力強く道三が頷き返す。笑顔すら滲んだその面には、光秀に対する信頼の厚さが浮かんでいる。
低頭として道三の視線を受ける光秀は、大変な役を仰せつかったと、心を引き締めた。
「お館様、お支度が整いました」
武者姿も初々しい前髪立ち前の小姓が、どっしりとした脚つきの黒毛の馬を、道三に引き渡す。道三は差し出した小姓の手も借りず、年齢を感じさせない軽やかな動作で愛馬に跨った。
「ご武運を」
「うむ、行って参る」
光秀の呼びかけに短く答え、道三は馬の腹を蹴り、颯爽と鷺山城を後にした。
「光秀、お館様のことはワシがお守りする。そなたは、そなたの役目を果たせ」
「ハッ。叔父上、お館様のこと、くれぐれもよろしくお願い致します」
「任せておけ」
ドンと光安が胸を張る。道三につき従う光安を、光秀は羨望と嫉妬の入り乱れた視線で見送った。
できるものなら、片時もお館様のおそばを離れたくなかった。しかしこれも主君よりの命、自分には他になさねばならぬことがある。叔父上、どうかお館様をお守り下さい。光秀は光安の背に向かい、胸の内で手を合わせた。
道三達が駆け抜けて行った後には、砂煙だけが残った。それにひどく哀愁を感じて、光秀は自分が泣きそうになっていることに気づいた。
(寂しいなどと、子供じみたことを)
ひりつく胸を甲冑の上からそっと押さえ、光秀は明智の城へ戻るべく、クルリと身を反転させた。ゆるやかな風を巻き起こし、愛馬に跨る。
未練を振り切るように、光秀は部下達に帰還命令を下したのだった。
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鼻風邪が治ったと思ったら、又風邪引きました。今度は胃腸風邪。そんなわけでしばらく又寝込むと思います(´-ω-`)う〜んあーしんど。
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弘治二年(一五五六年)卯月十八日、その日は朝から麗らかな日和であった。水色の空が広がり、穏やかな太陽が春の野を照らしている。そろそろ桜の蕾も膨らみ出して、花見の仕度に心も浮き立つようなそんな一日が、始まるはずであった。だが、
「報告、稲葉山城より義龍軍が鶴山方面へ向かっております!」
「報告、第一陣鷺山より出発致しましてございます!」
物々しく武装した兵達が将達に率いられ、次々と鷺山城を出発して行く。様々な色の旗指物が、鷺山から真っすぐに列を成して伸びている。整然とした行軍風景は実に勇壮だ。
「とうとう、この日がやって来たのですね」
蒔絵細工の見事な鞍を纏った白馬に跨り現れた光秀は、自らも桔梗の前盾を頂いた目にも鮮やかな赤糸威鎧に装っている。甲冑姿の光秀は兜の下から覗く切れ長の瞳が普段以上に凛々しく、禁欲的で冴え渡った美を放っている。光秀の叔父光安が、立派に成長した光秀を眩しそうに見つめている。
「光秀、此度の戦はこれまでとは違い辛く厳しいものになるであろう。しかしだからこそ奮起し、功を立てる機会も多くあると言うものだ」
苦境を嘆くのではなく、この状況を逆に利用してやるくらいの気概で行けと、光安が光秀を励ます。光秀は、いつであっても前向きな叔父に、力強く頷き返した。
圧倒的不利を悲観する前に、今自分にできることを考えなくてはいけない。油断すると怖気に負けそうになる心を自ら叱咤する。
「叔父上、我ら明智の力、存分に見せつけてやりましょうぞ」
「おお、おお、その息じゃ」
頼もしい甥の言葉に、光安は満足そうな笑顔で答えた。
やがて集った兵達が二手に割れ、黒糸威鎧に身を包んだ主君斉藤道三が肩で風を切るようにして颯爽と現れた。鎧兜を身に纏った道三は美濃の覇者にふさわしい風格だ。
「お館様、出立の用意相整ってございます」
叔父光安と共に片膝をつき、頭を垂れた光秀は道三の言葉を待った。
道三が顔を上げ、前方の様子を確認する。合戦場へ向け、行軍していく自軍の兵に目を止め、道三は低い声で唸った。むんずと結ばれたいかつい唇が二ッと綻ぶ。
「ハッハッハッ、これはなかなかの見物よのう。血、肉滾るようじゃわい」
老いて尚、衰えることを知らぬように、道三の瞳は闘志にギラギラと輝いている。生命力に満ち溢れ、本来の獰猛さを取り戻した道三に、光秀の胸もワクワクと高鳴る。誇らしい思いで、光秀は主を見上げた。
「光秀、光安、そなたらには今日まで苦労をかけたな。よくワシに尽くしてくれた、感謝しておるぞ」
「――お館様」
視線を向けて来た道三の瞳は慈悲に満ちていた。道三が代わる代わる光秀と光安を見つめる。悟りにも似た静かで穏やかな瞳、その奥には消そうとしても消せない悲哀の色を含んでいる。
そうだ、これはただの戦ではないのだと、光秀は大切なことを思い出した。道三と共に戦場に立てるのが嬉しくて不謹慎にも胸を弾ませてしまったが、この戦は義龍との決別なのだ。
我が子を手にかけねばならぬ道三の苦悩は計り知れない。それに気づいた途端、急に道三が遠くなった気がした。道三はあんなに溌剌としているのに、今にも病の床に臥してしまいそうな年齢以上の老人に道三が見えるのは何故だろう?
「今日は長い一日になるであろうなぁ」
高い空に目を移し、道三が感慨深く呟く。何かを覚悟したような、重い響きがそこにはあった。光秀はこんな時道三になんと声をかけたらいいのか、皆目見当もつかなかった。ただ切なさと哀れみの入り乱れた目を、主に向けていた。
光秀の視線を痛いほどに浴びていた道三が、空から再び光秀に視線を移す。道三は自らも膝を折ると、ガッシリとした大きな手で光秀の肩をつかんだ。道三がまっすぐに光秀を見つめる。
「光秀、そなたはまこと智にも武にも優れ、ワシにはもったいないほどの武将に成長した。そなたほどの武将を配下に持ったこと、ワシは誇らしい。そなたはワシの自慢の部下であり同時に、可愛くて仕方ない甥っ子じゃ」
道三はポンポンと、親しみのこもった手で光秀の肩を叩いた。温かい道三の言葉に、目頭が熱くなる。
「もったいないお言葉でございます」
瞳を伏せ睫を震わせる光秀は、らしくなく感情を素直に面に載せていた。
この方にお仕えできてよかった。このお方と同じ時代に生まれることができてよかったと、光秀は心から喜びを噛み締めた。
すくっと道三が立ち上がる。
「さて、バカ息子を諌めに行くかな」
トントンと自ら肩を叩き苦笑いを浮かべ、普段と変わらぬ口調で道三が言った。
「鶴山へ向け、進軍じゃ」
「ハッ」
主の下知に、光秀光安そろって頭を垂れる。
いよいよ大戦が始まる。負けるわけにはいかない大一番、なんとしてでも勝つ!
意気揚々と面を上げ、主に続こうとした光秀に、しかし道三は思いもかけぬ命を下した。
「光秀、そなたは明智城の守りを固めよ」
「明智の城に? お館様、それはいったいどう言うことでございましょう!」
これより長良川の合戦場へ出て全軍への指揮、道三の護衛にあたるつもりでいた光秀には、寝耳に水であった。
「私は、この身命を賭してお館様をお守り致す所存です!」
今更城へ帰れだなどと、冗談ではないと光秀が牙を向く。しかし道三はそれを歯牙にもかけず、反対に光秀の勇み足を諌めた。
「そなたの忠義はこの道三まこと、ありがたく思う。だからこそ全幅の信頼をおけるそなたに頼みたいのじゃ。これはそなたにしかできぬ大役じゃ」
怖いほどに真剣な目を向けていた道三が、フワっと目元に皺を刻む。父のように優しい瞳で道三が光秀に告げた。
「光秀、そなたに頼みたいのは他でもない、婿殿――信長殿のことじゃ」
「――信長様のっ」
道三の口から飛び出した名前に、光秀の心臓がひっくり返る。ポカンと口を半開きにしたまま、胸をざわつかせる光秀を、道三は静穏な瞳で見つめていた。
「そなたには、明智城へ戻り尾張の婿殿と連絡を取ってもらいたい。この戦、婿殿の軍が勝敗の鍵を握ることは、そなたも承知しておろう。そなたは尾張よりの婿殿の軍を先導し、戦場へ入るように。これはそなたにしか頼めぬことじゃ。やってくれるな、光秀」
信長への援軍要請、それはこの戦において大変重要な役目である。信長を戦場まで導く。美濃の地理に疎い信長を先導するのは自然なことで、道三の言うことはもっともらしいように聞えた。
道三の判断に間違いはないと、光秀も思う。しかし、今ここでお館様と離れてはいけない。本能めいた感情が、光秀の返事を鈍らせる。
」
「安心せい、そなたの活躍の場はしっかり残しておいてやる。それでな、これが書状じゃ、そなたの目で改めよ」
道三が差し出した書状を開き、目を通す。終いまで読み終えぬうちに光秀は顔色を変えた。苦渋の滲んだ面で道三を仰ぎ見る。
『戦に勝利した際には、美濃は信長に献じる』書状にはそうした内容が記されていた。
(お館様、これほどのお覚悟とは)
「光秀、そなたの役目は重要ぞ。そなたの手腕に我が軍の行く末がかかっておる。どうじゃ、引き受ける気に、なってくれたか?」
再度道三が光秀に訊ねる。光秀は迷いの失せた澄んだ瞳で道三を見つめ直すと、姿勢を正し深々と頭を下げた。
「必ずやお役目果たし、お館様のおそばに馳せ参じます」
「うむ、共に戦場を駆け抜けようぞ」
力強く道三が頷き返す。笑顔すら滲んだその面には、光秀に対する信頼の厚さが浮かんでいる。
低頭として道三の視線を受ける光秀は、大変な役を仰せつかったと、心を引き締めた。
「お館様、お支度が整いました」
武者姿も初々しい前髪立ち前の小姓が、どっしりとした脚つきの黒毛の馬を、道三に引き渡す。道三は差し出した小姓の手も借りず、年齢を感じさせない軽やかな動作で愛馬に跨った。
「ご武運を」
「うむ、行って参る」
光秀の呼びかけに短く答え、道三は馬の腹を蹴り、颯爽と鷺山城を後にした。
「光秀、お館様のことはワシがお守りする。そなたは、そなたの役目を果たせ」
「ハッ。叔父上、お館様のこと、くれぐれもよろしくお願い致します」
「任せておけ」
ドンと光安が胸を張る。道三につき従う光安を、光秀は羨望と嫉妬の入り乱れた視線で見送った。
できるものなら、片時もお館様のおそばを離れたくなかった。しかしこれも主君よりの命、自分には他になさねばならぬことがある。叔父上、どうかお館様をお守り下さい。光秀は光安の背に向かい、胸の内で手を合わせた。
道三達が駆け抜けて行った後には、砂煙だけが残った。それにひどく哀愁を感じて、光秀は自分が泣きそうになっていることに気づいた。
(寂しいなどと、子供じみたことを)
ひりつく胸を甲冑の上からそっと押さえ、光秀は明智の城へ戻るべく、クルリと身を反転させた。ゆるやかな風を巻き起こし、愛馬に跨る。
未練を振り切るように、光秀は部下達に帰還命令を下したのだった。
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2010/8/31 20:09
投稿者:秋良千穂
梓様>コメントありがとうございます(*/∇\*) キャ励ましのお言葉とっても嬉しかったですぅー。ありがとうございました(●´ω`●)ゞテレ
2010/8/30 17:48
投稿者:梓
応援してますっ>w<))❤



