12月31日。
岡山発下関行き、という実に気が遠くなりそうな長距離を走る各駅停車の普通列車で九州を目指す酔狂な大晦日。
384キロ7時間24分、さすがに何度かめげそうになりながらも、意外に景色が良い山陽本線。天気にも恵まれ、瀬戸内の多島美に励まされつつ何とか九州に上陸。
そのまま一路別府を目指し、2500円の安宿泊。
市営の、歴史ある竹瓦温泉は年末年始なんと無料。熱々の湯に浸り。
カプセルホテルで夜の9時頃に就寝、という2011別府の大晦日。
1月1日。
あけまして2012。
大分から熊本まで、阿蘇のカルデラを行く豊肥本線はしかし、時々霧のような雨が降る、重た〜い曇天。標高が700mを超えるあたりでは、ほんの少し積雪も。
20年以上前にいちど乗ったことがあったけど、その時もあまり良い天気ではなかった記憶が。
熊本で大平燕(タイピーエン)というご当地麺を食べて、これがなかなか旨くて。
向かいの席でものすごい美女が口をガバッと開けて居眠りしている肥薩線で人吉を経て、くま川鉄道の多良木という駅へ。
駅周辺には日帰り温泉とコンビニと居酒屋、以上。何もない町。
しかし駅前に簡易宿泊施設があり。
これがかつての夜行列車の寝台車を、車両まるごと再利用した宿で。
温泉で温まり、人吉で調達しておいた駅弁をパクつく元旦の晩餐。
1月2日。
正月二日から部活に勤しむ高校生の群れに紛れて始発で人吉まで戻り、ここからがハイライト。肥薩線の人吉以南は人気の観光路線。
普通列車の車内は、おそらく全員が観光客。
前日とは一転、雲ひとつない真っ青な空の下、たった1両のディーゼルカーは、急勾配を喘ぎながら登る。
大畑、と書いて「おこば」と読む次の停車駅は、ループ線の途中にスイッチバックを伴って設けられた、という特異な構造が有名な駅で。
山あいの原っぱの中の駅から、ジグザグを描きながら更に登るディーゼルカー。
勾配がきつすぎて全然速度が上がらないけど、高度をどんどん増していく。
左側の車窓がまるで展望台のようにひらけ、遠くに折り重なる山々と、はるか眼下に町が見える。
突然、列車がブレーキをかけて停止。
この景色がかつて日本三大車窓のひとつに数えられた、という説明と、今日は天気が良いので桜島が見えます、という案内。
なるほどよく目を凝らしてみると、山々のちょうど途切れたそのずっと先、朝日を浴びた桜島が、靄の中に浮かぶように見えている。
三大車窓のうち、ひとつは既に廃線やし、もうひとつの姨捨はまぁ悪くないけど期待外れやったことを思えばつまり、この景色が日本一、ということかしら。
これならば納得しないでもないな。もちろん日本のすべての車窓を知ってるわけではないが。
何度か乗り継ぎ、これまた20年ぶりの鹿児島中央駅。
ここから指宿枕崎線で更に南を目指す。
駅で買ったさつま揚げが旨い旨い。
快晴で、海の向こうに桜島。
まるで1月とは思えないような、生き生きとした緑がそこかしこに見える。実際、全然寒くないし。
家々のつくりも、なんとなく南国的。おそらく火山灰や台風に耐えるための工夫のあるつくりなんやろね。
西大山駅は、JRとしては最も南にある駅。
沖縄にゆいレールという鉄道が走る今は、本当の日本最南端の駅ではないけれど、「JR日本最南端」と謳うことで体裁を取り繕っている笑
前方にボカンと開聞岳、その手前には、何やら黄色い花が咲き乱れる花畑…もしかして菜の花?1月2日に菜の花?
開聞岳の北側をぐるっと回って再び海沿いへ。と言っても海岸線は数キロ向こうで、線路はごくごくなだらかな丘の上。遮るもののない野原の向こうに、右から左まで全開の、キラキラ光る水平線。
終点、枕崎からはバスで鹿児島へ引き返す。
薩摩半島の高原の、峠のトンネルを抜けると、まさに灰の色をした桜島を背景に、喜入の街をはるか見下ろす。
山は灰色でも、海も空も真っ青。
鹿児島中央駅近くで、この旅唯一のまともな宿(といっても3500円)にチェックインし、銭湯へ繰り出す。
鹿児島は普通の銭湯も天然温泉が標準。はからずもこれで3日続けての温泉。
1月3日。
素直に日豊本線で北上すれば良いものを、せっかくなので吉都線にも乗りましょうということで早起き。
意外にも平々凡々で退屈な吉都線を経由して都城、更に昼前に宮崎。
そういえば、と宮崎出身の友にメールしてみたり、チキン南蛮定食で口のまわりをベトベトにしたりしながら、この旅の最終ランナー、日南線の列車に乗り込み、うとうとしながら志布志に到着。
南港行きのフェリーさんふらわあで、太平洋をドンブラコと帰路についたのでありました。
写真は開聞岳&花畑(下)と、日本三大車窓(上)、ではあるけれど、絵心のない俺の写真の、なんと伝わらないことか。


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