2012年5月12日から6月1日まで娘の彼方アツコが札幌のギャラリー山の手で個展を開く。
題は「謡」−版画と詩のコラボレーション となっており、アツコの版画に以下の4人が文章を添える。父の私と兄の裕一が文章、叔母の島村章子が短歌、義理の叔父の田中秀穂が詩である。
気楽に見にきていただければ幸いです。
ちなみにギャラリー山の手は、
札幌市西区山の手7条6丁目、電話011−614−2918 発寒川の横で、桜がきれいです。
先立って、下に私の文章を掲げます。
題 SPRING(絵はー桜の公園)
今年も円山公園の桜は真っ盛り。花見客が三々五々と円陣を組んでいる。
昭和一八年の五月は太平洋戦争も終盤戦に入り、敗色が見えはじめてきた。前の月には山本五十六連合艦隊司令長官も戦死している。
アリューシャン列島の端にあるアッツ島では北海道の第七師団が孤塁を守っていた。
一方、その円山公園の桜も戦時にもかかわらず芽をふき、だからこそ、その色はいっそう色鮮やかに映えていた。市民はささやかな花見に憂さをなぐさめていた。ところが、
五月二九日真夜中、円山公園の満開の桜の下で大勢の男の悲鳴が聞こえてきた。断末魔や切り結ぶ音や銃声なども。
翌日、桜の花びらは嵐にあったようにみごとに散っていた。アッツ島玉砕の話がそれとなく市民の耳に入ってきたのはそれから間もなくのことであった。
題 PAITIENTS(けしの花と7人の患者)
女は裸のままベッドの上で、体を反転し、長い脚を天井に向けて開いた。
「これ、ここ固くなっていない?」
女は鼠蹊部を差して、私に見ることと触れることを強要した。私はあまりそんなものを見ることを好まないので、おざなりに軽く触って言った。
「別になんともないよ」
「そお」
女は不満のようだった。
それから女は裸足のまま窓際に立って、タバコをくゆらせながらまた言った。
「あんた、夜中、眠りながらしゃくりあげることある?」
「そんなことできるわけないよ」
「面白くない男ね」
そう言って、女はタバコの煙を窓ガラスに吹きかけた。
いま考えると、あの女は麻薬中毒者だったかもしれない。アノ時の声だって異常だった。
年をとると後になって気がつくことがけっこうあるものだ。
題 宣告(愛の宣告、チューリップと抱擁の図、チューリップの花言葉は愛の宣告・告白)
「チューリップのどこがいいんだい」
と男は聞いた。枕元にはたくさんのチューリップが活けてある。女が男に買わせたのだ。
「可憐じゃない?」
「そうかな」
男はチューリップの花言葉なんて知らない。しかし女は誰もが知っている。男の奥さんも知っている。高校時代は一緒に花言葉あそびをしたものだ。
「ねえ、いつ結婚してくれるの」
「もう少し待ってくれ。いまタイミングを見ているのだから」
返事はいつも同じ。聞き飽きた。もう悠長なことはしておれないから、今日はセットの隠しカメラで撮りまくるだけ。その写真をさいしょに誰に見せるかはタイミング次第。
題 アフロの女説(アフロの美人がカウンターで酒を飲んでいる)
アフロの女「ねえ、最近、ボブ、来る?」
マスター「いや、そうでもない」
アフロの女「私、あの人怖いの、目つきが」
マスター「どうも、あんたに首ったけらしいぜ」
アフロの女「厭だわ、何するかわかったものじゃないわ」
マスター「最近は俺たちのことも疑っているらしいぜ」
アフロの女「気をつけてね、まだ死にたくないわ」
マスター「カッ、となったら何するかわからない奴だからな、前科もあるし」
アフロの女「あんたも挑発したらダメ、」
マスター「ああ、いらっしゃい、ボブ、ひさしぶりだな」

10