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甲斐―――
義信は奥間で杯に酒を盛っていた。
義信「そろそろ曽根周防守が伏見に着く頃だな」
飯富「そうでございますな」
飯富は空になった義信の杯に酒を酌みながら答えた。
義信「ん?桔助、どこに行くんだ?」
桔助「!」
義信は開いていた襖から見える廊下を、歩いてどこかへ行こうとしている桔助を呼び止める。
桔助「新しい傀儡を見に行って来ます」
桔助は笑ってそう言い、義信達の視界から消えた。
飯富「新しい傀儡?」
飯富は何の事かと、義信を見る。
義信「恐らく攻めてきた軍勢達の事だろう。奴ら、桔助の毒霧を気にせず中へ入って来よった・・・・・本に、愚かな者達よ」
――霧中
甲斐を包む霧の中は、死んだ兵士で溢れていた。
桔助「こりゃまた大勢で・・・・・御苦労なこった」
桔助は顔に笑みを浮かべながら、霧の中を歩き回る。
そして・・・・・一人死なずに苦しみ倒れている武将の傍に立つ。
桔助「まさか、謀神と言われたあんたが掛かってくれるとはな・・・・・思いもしなかったぜ、毛利元就殿」
その武将は毛利元就だった。
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越後―――
かすがは城に着くと、すぐさま謙信に報告をしに行った。
謙信「そうですか・・・・。景勝達にもこのことを伝えて来てください」
かすが「承知」
かすがは城を後にし、伏見へ向かった。
謙信「・・・・・・(かすがが見たものが間違いなければ・・・・勝つことは難しいですね・・・・」
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甲斐―――
――霧中
元就は桔助に気づくと、視界に桔助を入れた。
元就「・・・・思いもしなかったと・・・・口にするわりには、そのような顔には・・・・見えぬぞ・・・・」
桔助の顔には笑みが浮かんでいた。
元就は霧の毒によって、動くことができず、言葉を発するのがやっとという状態だった。
桔助「あんまり無理すると、早く(意識が)逝っちまうぞ?」
元就「死んだ方がよい・・・・っ忌まわしき記憶が・・・・ちらついて、仕方がない・・・・」
桔助「あっそ。まぁこっちにとっちゃ、都合がいいからいいんだけどね」
元就「!!?」
桔助はしゃがみ、右手で元就の目を塞ぐ。
桔助「じゃあ、おやすみなさい・・・・」
桔助は闇に満ちた笑みをうかべて
桔助「乞食若殿」
元就「っ!!?」
そう言った。
元就「その名を・・・・口にするなっ・・・・」
そして、元就は気を失った。
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伏見―――
――上杉邸道場
景勝「義信軍が・・・・この上杉邸に向かっているだと・・・・?!」
菊姫「まさか、幸村がここにいることを悟られて・・・・?」
幸村「っ!!」
慶次「・・・・・いや、多分俺達を追って来たんだと思う」
政宗「・・・・・・さてと、」
政宗は立ち上がり、刀を腰に着けた。
政宗「敵は武田義信。その死に損ないをさっさと冥土へ送り返しに行くぜ!!」
元親「おうよ!」
慶次「いっちょ暴れますかねー!!」
幸村「・・・・・・」
政宗の後に、元親、慶次も立ち上がり、いち早く道場を出ていった。小十郎も続くが、部屋から出る寸前で足を止めた。
小十郎「真田幸村」
幸村「!」
そして不甲斐ない表情をして座っているままの幸村の名を呼ぶ。
幸村は、小十郎に名を呼ばれ、俯いていた顔を上げ、自分に背を向けている小十郎を見た。
小十郎「猿飛は信じている・・・・・・主のてめぇのことを」
幸村「!!」
小十郎「それに応えられねぇ様なら、てめぇは一生政宗様には勝てねーぞ」
幸村「・・・・・・片倉殿も・・・・・・信じておられたのですか?政宗殿を・・・・・・」
小十郎「たりめーだ!家臣として当然のことだからな・・・・・・一度でも主を信じられなくなったら、家臣失格だ!」
幸村「・・・・・・」
政宗「小十郎!!」
外から政宗の声が聞こえる。
小十郎「今参ります!!・・・・・・豊臣の件では助けられたからな・・・・・・協力はしてやる」
小十郎はそう言いのこして、外へ出て行った。
幸村「・・・・・・」
幸村はまた俯いた。
景勝「・・・・・我も行こう・・・」
景勝も立ち上がる。
景勝「・・・・うぜん、皆に伝えろ」
うぜん「はい!」
その後に、景勝の命令でうぜんが、兵を挙げるために外へ
菊姫「景勝様、私も・・・」
景勝「・・・・いや、お菊はここにいろ。・・・・・お前は武田信玄の娘・・・・・・つまりは義信の妹・・・・。お前の存在を知れば、奴らは・・・・義信達は必ず・・・・お前をさらうだろう・・・・」
菊姫「っ、しかし・・・!」
菊姫は景勝から目を離さず立ち上がる。
景勝「我に任せろ・・・・・。お前はここで真田と・・・・」
幸村「某も参ります」
全員「!!」
幸村「仲間が・・・・佐助が、俺のことを信じているというのに・・・・・俺は・・・・!!」
幸村は槍を手に取り、立ち上がった。
幸村「某も出陣するでござるッ!!そして、敵襲を退けた後、武田軍救出を果たしてみせまするッ!!」
小十郎の言葉によって、幸村はいつもの覇気を取り戻した。
菊姫「幸村・・・・!」
その時、“スパンッ!!”と部屋の戸が開いた。
信玄「よくぞ言った!!幸村ッ!!」
全員「!!?」
幸村「お館様!?」
入って来たのは景勝の部屋で横になっていたはずの信玄だった。
幸村「お館様ーー!!よくぞ御無事でッ!!」
幸村はすぐさま信玄の傍へ。
景勝「・・・・信玄公・・・」
信玄「・・・・わかっておる」
景勝は何かを言いたげな顔をし、信玄はその顔を見て察してそう答えた。その後、再び幸村に目を向ける。
信玄「幸村よ」
幸村「はっ!」
信玄「話を聞くと、彼奴等はもう・・・・わしの知っている者達ではない」
幸村「と、申されますと?」
信玄「彼奴等の強さは、以前の時より計り知れん・・・。決して油断するでないぞ!!」
幸村「承知致しました!!」
菊姫「幸村が行くのなら・・・・、景勝様!どうか私にも出陣の許可を!!」
菊姫は、両膝と両手を床につき、景勝に頭を下げた。
幸村「き、菊姫様?!」
景勝「・・・・お菊、我はお前を失いたくない・・・・。だから」
三成「安心しろ。その女は私が見ている」
全員「?!」
何も言わず座っていた三成が口を開く。
三成「私が菊姫を守っていてやる。そうすれば、貴様は目の前の敵に集中できるだろ?景勝」
三成は立ち上がって景勝にそう言う。
景勝「・・・石田・・・」
予想もしなかった言葉に、景勝は困惑する。
信玄「よいのか?」
三成「ああ。しかし、勘違いするな。その女には借りがあるからだ」
景勝「借り・・・・?」
三成「貴様らには関係ない」
三成は足先を出口に向ける。
三成「出るのなら早くしろ。私は先に行く」
そして道場を出て行った。
幸村「景勝殿!某も敵を撃退しつつ、菊姫様を護衛致します!ですから・・・・なにとぞ、菊姫様の出陣の許可を!!」
幸村も頭を下げる。
景勝「・・・・・・」
景勝はさらに困惑した表情を浮かべる。
信玄「景勝」
景勝「!!」
信玄「菊はお前が思っているほど、ひ弱な女ではない」
景勝「それは重々わかっております・・・・しかし・・・」
菊姫「景勝様・・・」
景勝「!!」
菊姫のゆるぎない眼に、景勝は負けた。
景勝「・・・・わかった、一緒に行こう・・・・」
――道場外
いち早く外に出た政宗達は、自分の兵士達を集める。
元親「・・・・・」
慶次「・・・元親?」
慶次は、元親がその最中に度々曇天を見上げている事に気づいた。
慶次「どうしたんだ?」
元親「いや、最近・・・日が出てねぇなって思ってよ」
慶次「あー、確かに・・・・。ハハハ、こんなんじゃ、毛利の兄さんが機嫌悪くするな」
慶次は空を見上げながらそう言う。
元親「そうだな・・・(何なんだぁ?この胸騒ぎは・・・・」
小十郎の言葉によって、復活を遂げた幸村。
一方で、桔助の手によって、闇へと堕ちた毛利元就。
武将達は、義信の思惑を阻止する事ができるのか・・・・
戦いはここからが本番である。
〜第七章に続く〜

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