「渋谷・コクーン歌舞伎『東海道四谷怪談−南番−』」
作:四世鶴屋南北 演出・美術:串田和美
出演:中村勘三郎、中村橋之助 、中村七之助、片岡亀蔵、笹野高史、坂東弥十郎、中村扇雀
---------------------------------------------
補綴:竹柴徳太郎 照明:齋藤茂男 演出助手・美術助手:眞野純 舞台監督:藤森篠次 制作:我孫子正、岡崎哲也、橋本苛考、船越直人 主催:松竹株式会社、Bunkamura
---------------------------------------------
2006年3月18日(土)〜4月24日(月)/Bunkamuraシアターコクーン
WEB:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/kabuki7/index.html
串田和美さんが演出・美術を務め、毎回渋谷のシアターコクーンから斬新で刺激的な歌舞伎を上演し続けている「コクーン歌舞伎」。そんなコクーン歌舞伎も今回で第七弾となり、今回の演目はいわずと知れた『東海道四谷怪談』。そんな四谷怪談を、再演であり「コクーン歌舞伎の集大成」という『南番』、そして全段を通して上演する新演出の『北番』の2バージョンが公演されています。
僕が観たのは、熱気で溢れた「南番」の初日。歌舞伎を見慣れているような年配の方々から、若い人まで客層はさまざまだったように思います。ちなみに上演時間は、約3時間10分(15分間の休憩を含む)でした。パンフレットは1500円で、作品の解説も充実していて良かったです。
さて劇場ロビーに入場すると、歌舞伎座のようにお土産物を売っている屋台が軒を連ね、いつもと違うシアターコクーンの雰囲気にボルテージが高まりました。そして客席内に入場すると、客席前方が座布団の上に座る平場席(桟敷席)になっているんです。舞台には歌舞伎の定番である引幕がかかっており、客席前方の天井からは大きな提灯が吊るされていました。提灯には確か「東海道四谷怪談」と「南無阿弥陀仏」が書かれてあったように思います。とても大衆的かつひらかれた雰囲気で、まるで江戸時代にあったような歌舞伎小屋のイメージ。
そしてやっぱり精神的にも具体的にも舞台と客席の境がないというか、距離が近いと思います。客席の通路が花道代わりになっていて、役者さんが客席で演技をしたり行き来したりしていました。サービス精神も旺盛だし、やはり劇場の一体感があるのがコクーン歌舞伎の魅力なんでしょうか。
「東海道四谷怪談」といえば、夫・民谷伊右衛門(中村橋之助)に裏切れたお岩(中村勘三郎)が幽霊となって夫へと復讐する・・・という怪談もの。だけど残酷だったり悲哀だったりな重厚な人間ドラマが展開しているんですね。ようやくパンフレットの解説を読んで、あの「忠臣蔵」に組み込まれていたり、深く悲しい物語だということが分かりました。傑作とよばれているわけを実感できたかも。
さてさて全体をふまえて考えてみると、随所随所で刺激的だったり斬新な要素が多々もりこまれているものの、比較的オーソドックスな気がします。あくまでも比較的ですから、たとえば普段歌舞伎を見慣れている方から見れば、とても踏み込んだ大胆な演出なのかもしれませんね。
コクーン歌舞伎といえば、大胆かつ刺激的な仕掛けも見所の一つですが・・・今回も凄かったです。いろいろありましたが、なんといっても本水を使った演出が一番の見所かも。興奮したな〜。
もう少しだけ遊びやおふざけがあっても良いような気もしないでもないのですが、僕はとっても楽しかったです。おぉっっ!!と驚いたり、鳥肌がたったり、こういう気持ちにさせてくれるエンターテイメントは数少ないのではないでしょうか。客席内でも飲食が可能だし(特製のお弁当が販売されたりしていました)、僕はさながらお祭り気分で楽しんでいた気がします。ちなみに今日は、普段まったくお芝居を観ない人と観に行ったのですが、とても楽しんでもらえたようです。良かった〜。
★下記ネタばれしています。
一幕については一つの事件というか展開に至るまでが長く感じてしまって、面白いのですがほんの少しだけ睡魔に襲われそうになりました。しかし休憩を挟んだ二幕からは、スピード感たっぷりに進んでいくことになります。お岩さんの幽霊が出てくるので、とにかく畳み掛けるように展開する仕掛けの応酬に目をみはりました。一幕は物語を楽しみ、二幕は演出を楽しんだ感じかな。
二幕からは舞台前方にプールというか水槽が特設され、ついに本水を使った仕掛けが登場します。客席前方のお客さんは、レインコートとビニールで水を防備。そんな水槽からびしょ濡れで登場する勘三郎さんの一人二役が見所の「戸板返し」、ボッと提灯が燃えてしまったかと思うとお岩さんが吊られて登場する「提灯抜け」・・・。やっぱり舞台でこういう仕掛けを見ると感動しちゃいますね。
そして舞台のみならず、お岩さんや人魂が客席にも次々と出没し始めました。客席ではキャー!という悲鳴が相次ぎます。僕は二階席だったので「さすがに二階席にまでは来ないだろう」と高をくくっていたら・・・来た!!恐るべしコクーン歌舞伎。僕もうわぁっ!と驚いたり、こればっかりは背筋がゾクゾクして寒気をおぼえました。劇場内が恐怖でいっぱいの中、ついに最終場を迎えます。
さて最終場は佐藤与茂七(中村勘三郎)と民谷伊右衛門(中村橋之助)の大立ち回りで幕を閉じました。舞台の上を所狭しと駆け回り、水槽の中でもダイナミックな立ち回りを繰り広げます。というか最後のほうは水の掛け合いになってましたね(笑)。大量の雪もふってきて、もう観客のボルテージは上がりまくりだったのではないでしょうか。僕はすごく楽しかったです。
★上記ネタばれしています。