「黒テント『籠釣瓶花街酔醒−クレイジー!!吉原百人切り!−』」
【出演】小篠一成、木野本啓、愛川敏幸、片岡哲也、平田三奈子、岡薫、久保恒雄、河内哲二郎、工藤牧、足立昌弥、本木幸世、太田麻希子、伊達由佳里、山中弘幸、久保野学、光田圭亮、山本健治【チケット】全席自由、一般前売:¥3,800、学生前売:¥2,500、当日:¥4,300
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【脚本・演出】山元清多【所作】藤間藤三郎【振付】渡辺美津子【殺陣】栗原直樹【照明】齋藤茂男【舞台監督】森下紀彦【音響】島猛【衣装】杉田文絵【かつら】奥松かつら【演出助手】白井真由美【舞監助手】立山ひろみ【イラスト】伊波二郎【デザイン】タグチケイコ【制作】宗重博之、畑山佳美、岩井加奈【芸術監督】桐谷夏子【使用音楽】クレイジーケンバンド「タイガー&ドラゴン」他
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07年2月15日(木)〜25(日)/theatre iwato/http://www.ne.jp/asahi/kurotent/tokyo/
黒テントの第61回目となる今回の公演『籠釣瓶花街酔醒』は、山元清多さんが脚本・演出を手がける、若手を中心としたメンバーでの作品です。個人的に黒テントはお気に入り劇団の一つですので、期待を胸にしつつ劇場へ足を運びました。僕は学生券2,500円を購入して観劇しました。

まず劇場内に入ってビックリ!いつものtheatre iwatoじゃない!それものはず、今回は劇場内が昔の芝居小屋のイメージに変貌していたからです。客席は畳敷きの桟敷席になっており、もちろん土足禁止。木製の舞台に下手に位置する花道、そして舞台上部を彩る提灯・・・。でも壁は汚しの入った打ちっぱなしの壁ですし、どこか現代と過去とが混在しているような空間でした。役者さんが開演前の客入れをしていたり、とにかくお祭り気分で開演前からとても楽しくなりましたね。
まず今回の作品は言わずと知れた歌舞伎の名作、「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」を下敷きとしています。三世河竹新七の世話物の代表作ですし、去年も歌舞伎座上演されていましたよね(先日はTV放送もあった)。野州佐野の実直な分限者・次郎左衛門は初めて来た吉原で、偶然にも美しい花魁・八ツ橋を見かけてしまいます。次郎左衛門はその美しさに迷いに迷い、田畑家財を売って八ツ橋に入れ揚げました。しかし最後には愛想づかしをされて捨てられます。そこで激怒した次郎左衛門は八ツ橋をはじめとする、吉原にいる大勢の人間たちをも切り殺す・・・というのが大体の筋書きです。まさにサブタイトルのとおり「吉原百人切り!」というわけですね。そして驚いてしまいましたが、この物語は享保年間にあった、実際の事件を題材にされているそうです。上演時間は休憩なしの1時間45分ぐらいだったでしょうか。
しかしこの作品を普通に上演しないのが黒テント版の特徴です。なんと舞台を現代のとある劇団の稽古場に設定し、「籠釣瓶花街酔醒」を上演しようとしている劇団の物語が本編と同時進行していきます。その劇団では芝居の稽古が始まっているが、肝心の八ッ橋役が未だ決まりません。そこへ現れたのは元ストリッパーの女なのですが、この女へ座長は芝居の役柄さえ越えてハまっていきます。そこにさまざまな劇団内の人間模様も加わって、その模様は「籠釣瓶花街酔醒」の物語と次第にシンクロしていき、最後には籠釣瓶の物語と同様に悲劇的な結末を迎えるのですが・・・。
そしてこのお芝居の特徴はもう一つあります。それは劇中で使用される音楽が、すべて「クレイジー・ケン・バンド」の楽曲ということです。なだみ声のように力強く、そして軽快にテンポ良く、男と女のことを歌った曲はこの作品の雰囲気に、ピッタリとマッチしていた気がしました。もちろん役者さんはその楽曲の数々を歌い、楽器の生演奏もあり、曲にあわせてダンスを踊ったりします。久しぶりに黒テントで歌のあるお芝居が観れて嬉しかったです(最近観た黒テントはストレート・プレイばかりだったので)。というわけで、僕はただただ楽しく最後まで拝見できました。現実と芝居の世界が混在して、やがて一つになる脚本は魅力的ですし、演出はセンスが渋くてカッコ良かったです。
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役者さんの衣装はちょっとお洒落な稽古着(ジャージなど)などを中心に、舞台が進行していくにつれて「籠釣瓶花街酔醒」の時代背景に沿ったものを着用されていました。そして役者さん自身がト書きのような場面の説明をしたり、劇団の役者の思いが「籠釣瓶花街酔醒」の台詞と重なったりします。このように現代?それとも芝居?というふうに具体的な境目が次第になくなっていき、どんどんと境界線が曖昧になっていくのがミソ。もともとこの脚本は流山児★事務所に書き下ろされた作品で、パンフレットで作・演出の山元さんは、モチーフはアントニオ・ガデスの映画『カルメン』だと語っています。設定はそのままに「カルメン」を「八ツ橋」に変えたのが、今回の黒テント版とのこと。
特に印象に残ったシーンと言えば、やはり終盤の吉原百人切りでしょうか。「タイガー&ドラゴン」がガンガンの大音量で流れる中、切って切って切りまくり、役者さんが狭い舞台の上を所狭しと走り回ります。「俺の話を聞け!」という歌詞が劇場いっぱいに痛快に響き渡りました。あと個人的なお気に入りのシーンは「流星ドライヴ」を歌うシーン。大勢の出演者が楽器の生演奏をしながら、女性3人がキュートに歌い上げるのが素敵でした。気に入ったので、早速iTunesで購入してしまった。
役者さんの出入り口や小道具が赤く縁取ってあったり、全体的な舞台美術は赤がポイントになっていました。そして舞台正面の黒幕が照明の変化によって、透けたりするのが効果的に使われています。そしてラストは舞台正面奥の上部に、桜の花(だったと思います)が浮かび上がって美しかった。照明(齋藤茂男)は狙いが絞ってあって、素朴でなおかつ渋いのでとても素敵です。ほぼ照明のみで場面転換するのが刺激的で、たびたび大胆な色使いが現れるのでドキッとさせられました。
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