「オペラシアターこんにゃく座『オペラ≪まっぷたつの子爵≫』」
出演:井村タカオ、高野うるお、太田まり、梅村博美、大石哲史、川鍋節雄、田中さとみ、石川貴美子、富山直人、佐藤敏之、酒井聡澄、佐藤久司、豊島理恵、花島春枝、彦坂仁美、岡林景子 楽士:伊藤博(オーボエ)、前田正志(ファゴット)、手島志保(ヴァイオリン)、服部真理子(ピアノ)
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原作:イタロ・カルヴィーノ(河島英昭訳による) 作曲:林光、萩京子、吉川和夫、寺嶋陸也 台本・詞・演出:加藤直 美術:池田ともゆき 衣裳:半田悦子 照明:齋藤茂男 振付:范旅 舞台監督:北村雅則 演出助手:高木陽子 芸術監督:林光 音楽監督:萩京子 宣伝美術:伊波二郎(イラストレーション)+小田善久(デザイン) 一般前売(全席指定):6,000円〜2,000円
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2月23日(金)〜2月25日(日)/世田谷パブリックシアター /http://www.konnyakuza.com/
日本語のオリジナルオペラを創作しているカンパニー、「オペラシアターこんにゃく座」の新作公演です。今年で36年目を迎える老舗の劇団で、去年の暮れには駒沢から宿河原に拠点を移されました。僕は10年ほど前から拝見していて、ファンクラブの会員にもなっているファンのひとりです。

≪ものがたり−WEB「こんにゃく座」より引用させていただき、一部改良−≫
戦争で敵の爆弾に吹っ飛ばされて身体がまっぷたつになってしまったメダルド子爵は、まっぷたつのまんまで故郷の村へと帰ってきた。でも、最初に村に帰ってきた半分は悪い方の半分で、その<悪半(あくはん)>の悪さによって、たくさんの人たちが処刑され、たくさんのものがまっぷたつにされ、人々は子爵を恐れて大さわぎ。そこへ今度は、善い方の半分<善半(ぜんはん)>が帰ってくる。悪い方の半分にさんざんな目に遭わされていた人たちは、善い方の半分のおこないに期待するのだが・・・。お医者さんなのにお医者さんらしくないトレロニー博士、メダルド子爵をちいさい頃から育ててきた乳母のセバスティアーナ、音楽をこよなく愛す「きのこ平」の住人、迫害から逃れてきた厳格なユグノー教徒たち、羊飼いの娘パメーラ、そして、メダルド子爵の甥にあたるボク。様々な登場人物が織りなす、不思議な村の不思議な物語。
こんにゃく座の座付き作曲家である林光さんと萩京子さん、そして吉川和夫さんと寺嶋陸也さんを加えた4人の作曲家で、ひとつのオペラを創作するという画期的な試みが行われた作品でした。原作はイタロ・カルヴィーノ(1923〜1985)が執筆した、『まっぷたつの子爵』という寓話のジャンルに分類されるであろう小説。今作ではこんにゃく座お馴染の加藤直さんが、脚本・詩・演出の3役を手がけられて、満を持しての舞台化に挑戦です。こんにゃく座で舞台化するという噂をずっと聞いていましたし、4人の作曲家によるオペラということで、非常に観劇する日を心待ちにしていました。
しかし残念なことに期待していたような、満足できる作品ではありませんでした。もちろん面白いと思ったところや、素敵だと感じたところはたくさんありました。4人の作曲家による合作オペラというだけで価値がありますし、演出もいろいろと工夫がなされていて感心してしまいます。でも全体的に単調というか盛り上がりに欠けるというか、どうしても最後まで惹きこまれることはありませんでした。特に1幕はどうしても退屈してしまって、同伴者は眠ってしまっていました。しかし2幕になってからはテンポもアップして見せ場もあり、1幕より圧倒的に楽しむことが出来て嬉しかったですね。お話は非常に面白いと思いましたので、ぜひ原作本を読んでみようと思います。ちなみに上演時間は15分間の休憩を含める、2時間55分弱でした。聞くところによると原作に忠実なようなので仕方ないかもしれませんが、実際の上演時間よりも体感時間がすごく長く感じたのは残念ですね。
場面ごとに作曲家が変わる構成になっていたので、ひとりひとりの個性や作風の違いを楽しめました。でも歌に役者さんが苦戦しているように感じるというか、もしかして僕が3階席だったからかもしれませんが、特に一幕は歌詞が聞き取りづらかったです。複雑に立て込んだ内容ですので、歌詞が聞きづらいのは致命的でした。これは最近こんにゃく座を観るとよく思うことなのですが、役者さんによって歌や演技の力量にバラつきがあるというか、今まで魅力のはずだったアンサンブルの良さがあまり伝わってきませんでした。もっと役者さんには生き生きと輝いていて欲しいと思います。
イタロ・カルヴィーノ著 / 河島 英昭訳
晶文社 (1997.8)
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劇場に入ると白と黒のストライプがはいった長方形のステージが、客席に大きく迫り出しているのが目に入りました。舞台頭上には赤い大きな雲と月が浮かんでおり、客席のほうまで無数の豆電球が浮かんでいます。ステージ上には三角形をした灰色の旗が8つ点在しており、舞台奥には楽屋のような空間が観客の目に晒されていました。全体的に灰色を貴重としたモノトーンなステージに、茶色の傾斜がついた大きな台が、いくつも登場して動くことによって場面転換をしています。シンプルな空間でしたが、だからこそ想像力が広がりました。渋くてカッコいい照明(齋藤茂男)や抽象的な美術(池田ともゆき)を利用して、たくさんのバリエーションがあったので目移りしました。
戦場で受けた爆弾のせいで善と悪のまっぷたつになった、メダルド子爵(悪半:井村タカオ 、善半:高野うるお)が主人公の作品です。子爵の叔父にあたるボク(太田まり)がストーリーテラーとなって、舞台を着々と進行させていきました。善と悪にまっぷたつ・・・なんて面白いアイディアなんでしょうか。悪半は故郷の村に帰ってきて次々と悪事をはたらき、やがてやって来た善半も堅物なのが原因で、人々から「悪半よりも始末が悪い」と言われる始末。この展開はとても面白かったですね。
そこへ子爵と村娘・パメーラ(田中さとみ)とのロマンスもあり、やがて彼女をめぐって善半と悪半は決闘をすることになります。この決闘シーンでは2枚の大きな鏡を、巧みに利用していたのが印象的でした。そして決闘の結果善半と悪半は二人とも倒れてしまい、トレロニー博士は二人を繋ぎ合わせて、子爵は完全な一人の人間へと戻りました。善と悪があってこそ、一人の人間なんですね。そして迎えたラストシーン、トレロニー博士はイギリスへと帰っていき、たった一人取り残されたボクがこう歌って終幕します。「責任と鬼火とに満ちたこの世界に、ボクは取り残されてしまった」と。寓話なれど共感や関心する言葉がいろいろあり、これは原作本を読まなくては!と意気込みました。
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