「新国立劇場『コペンハーゲン/COPENHAGEN』」
出演:村井国夫、新井純、今井朋彦 A席:5,250円 B席:3,150円 Z席:1,500円
---------------------------------------------
脚本:マイケル・フレイン 演出:鵜山仁 美術:島次郎 照明:服部基 音響:高橋巖 衣裳:緒方規矩子 ヘアメイク:佐藤裕子 演出助手:中野史朗 舞台監督:藤崎遊
---------------------------------------------
2007年3月1日(木)〜18日(日)/新国立劇場・小劇場/http://www.nntt.jac.go.jp/
初台・新国立劇場による最新の演劇公演です。今回は2001年に同劇場で日本初演されて数々の賞を受賞した、英国人のマイケル・フレイン作「コペンハーゲン/COPENHAGEN」の再演でした。演出は次期新国立劇場の演劇芸術監督に就任される、鵜山仁さんが手がけられています。

≪あらすじ−WEB「新国立劇場」より引用させていただき、出演者名を追加−≫
ナチスの恐怖が欧州を覆う1941年のコペンハーゲン。盗聴器が仕掛けられた過酷な状況下で語られたボーア(村井国夫)、ハイゼンベルク(今井朋彦)、マルグレーテ(新井純)の会話の真相とは?3人は死後の世界からこの「謎の一日」を再現しようとする。原爆製造への関わり、祖国への忠誠心、ヒューマニズム、物理学者のエゴとプライド、家族への思い。数々の記憶が蘇る。しかし相補性原理や不確定性原理といった彼らの理論そのままに、語れば語るほど記憶は曖昧なものになっていく。やがて謎を解く核心に迫るのだが・・・・・・。原子力エネルギーの実践に、探究心と倫理観との間で揺れながら、対立と理解を繰り返すボーアとハイゼンベルク。二人を時に優しく時に厳しく見つめるボーアの妻マルグレーテ。スリリングな展開と知的興奮に満ち、エンターテイメント性にもあふれた『コペンハーゲン』にどうぞご期待ください。
上演時間は15分間の休憩を含める3時間弱という長時間、村井国夫さん、新井純さん、今井朋彦さんという実力派の役者さん3人による作品です。特に派手な仕掛けなどはほとんどなくて、役者さんの演技と台詞の応酬で魅せる、純粋な「会話劇」です。じっくりと達者で文句のない役者さんの演技を堪能しながら、洪水のように耳を襲う台詞を聞き逃さないように必死になりました。僕はすごく疲労困憊状態で劇場を後にしたものの、それと同じぐらい非常に面白い作品に出会えたと思っています。傑作と呼ぶに相応しい脚本と、渋くてセンスの良い上品な演出、そして抜群に冴えているスタッフワーク・・・。やはり初演で賞を沢山とったのもうなずける、非常に良質な演劇作品でした。
このお芝居に登場する人物は全員で3人。ボーア博士とその妻マルガレーテ、そしてボーアの弟子にあたるハイゼンベルク。既に死んでしまって死後の世界にいる彼らが、以前体験した「謎の一日」を回想する・・・という構造です。相補性原理、不確定性原理・・・難しい専門用語の数々がどんどん飛び交いますし、かなり静かなので観客の集中力も必要だと思います。でもこんなに濃密なお芝居にはなかなか出会えないのでは?でもそんな3人の会話から謎解きのように「謎の一日」の真相、そして人間が生きていく中でぶつかる、様々な根本的な問題が山のように現れます。このように非常に知的で奥が深い重厚的な内容で、それが良質なエンターテイメントになっていました。
でも正直なところ睡眠不足でウトウトと、睡魔に襲われかけたのも事実です。観客を惹きつける力をもった作品だとは思いますが、ぜひ体調を万全にして観に行ってもらいたいですね。学生なら新国立劇場のアカデミック・プランが適応されますので、「A席:5,250円→2,625円/B席:3,150円→1,575円」で観劇できます。もちろん僕もこのプランを利用して観劇しましたので、学生の皆さんにもぜひオススメしたいですね。ちなみに当日学生割引でも、上記の同じ値段で観劇できます。パンフレットは800円ですが内容は読み応えがあり、読めば作品の理解が深まると思います。
マイケル・フレイン作 / 小田島 恒志訳
劇書房 (2001.7)
この本は現在お取り扱いできません。
★下記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。
原子的な分野で起こる現象が、人間同士の関わりによって起こる現象と重なったり、静かに胸が高鳴って興奮するシーンがたくさんありました。量子力学や原爆開発に関する会話から、人間の深層心理にまで迫ってくるのは非常にスリリング。やはり作品自体は奥深いし難しいのですが、それでも心に響く要素はたくさんあると思います。そして死後の世界や「謎の一日」の回想が、巧みに交錯するのも効果的ですね。とても緻密に練り上げられて誤魔化しのきかない構成や台詞を、しっかりと自分の物して演じている役者さんたちには感服です。鵜山さんの演出も脚本に負けず劣らず良かったです。カーテンコールは数回行われていて、僕は強く拍手をしてこの感情を表現しました。
島次郎さんによる舞台美術が素晴らしかったです。円形をかたどって傾斜がついた木製ステージを中心に、灰色で少し汚しがかった重厚的な壁が、グルッとステージを取り囲みます。そしてステージの上には形の違うイスが3脚あるだけの、あくまでも抽象的な空間でした。この美術で島さんは「読売演劇大賞最優秀スタッフ賞」を受賞されています。この脚本が描いている世界を、上手く視覚化させているんですね。そして服部基さんの照明も徐々に変化が生まれますが、大胆でハッとさせられる場面が随所に見られました。渋い色使いが冴えており、灰色の壁によく映えていました。
★上記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。