「ヒンドゥー五千回/H5000project『うたかたの日々』」
構成・演出・出演:扇田拓也 出演:谷村聡一、久我真希人、向後信成、藤原大輔、西田夏奈子、立花あかね(ラ カンパニー アン)、宮沢大池、伊澤勉、瓜生和成(東京タンバリン)、成川知也
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舞台監督:甲賀亮 美術:袴田長武(ハカマ団) 照明:宮崎正輝、保谷翔太 音響:井川佳代、高橋真衣 宣伝写真:降幡岳 宣伝美術:大村麻美、H5000project WEB:くろしゃち、H5000project 企画・製作・主催:H5000project、ヒンドゥー五千回 チケット:2,500円〜1,500円(全席自由・日時指定/壮年割引、高校生以下割引などあり) 一般発売日:2007年1月6日
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2007年3月7日(水)〜3月13日(火)/サンモールスタジオ/http://www.h5000.com
扇田拓也さんが作・演出を手がけている、「ヒンドゥー五千回」の新作公演。新宿のサンモールスタジオで7日間行われる公演で、いつもに増して豪華な客演さんがたくさん出演されています。これは見逃さないだろう!と意気込んで劇場へ。ちなみに本劇団を観るのはこれで5回目になります。

≪作品紹介−WEB「ヒンドゥー五千回」より引用させていただきました−≫
彼らは退屈では決してなかった。仕事に取り組む姿勢は皆同様に優れていたし、一日の仕事が終われば酒を飲み、よく笑った。しかしどこまでも続く単調な生活の中、彼らは徐々にあることに気づき始めてもいた。「諦念の世界」を描くヒンドゥー五千回。最新作のテーマは「逃」。強力客演陣を迎えた新生ヒンドゥーが描く逃走と停滞と選択の物語。
チラシがさわやかな青空の写真だったのですが、そんなイメージを良い意味で裏切られました。男だらけでさわやかさとは一線を画すような、でも非常に味わいが深い作品だと思いました。いわゆる1つのドラマとしては、ちゃんと成立している気がします。でもあの良い意味での曖昧さと、思考する余韻を持たせる終わり方。すべてを明らかにしないのが、とても渋くてカッコいいです。単刀直入に言わせていただきますと、今まで観た同劇団の中で一番好きな作品に仕上がっていました。今回は役者さんのアンサンブルの良さに付け加え、演出もシンプルだけど渋くてセンスが良かったです。まだ作品が発展する可能性は大いにあると思うのですが、やはり今までの上演作品と比べると格段に洗練度が違うと思いました。上演時間はチラシに記載されている時間(1時間50分)よりも短くなり、実際は1時間35分弱にスッキリまとまっていました。
舞台となるのは日本ではない、治安の悪い異国の地。採石業をしている日本人の男たちが住んでいる施設に、コンノ(立花あかね)とオカヤス(久我真希人)が日本から訪ねてくる。コンノはここで働いている恋人・カマタに会いに、友人のオカヤスを同行させてやって来たのだ。しかしカマタは1年前にここから逃げ出したという。ショックを受けるコンノは帰国しようとするが、貴重品を盗まれたりしたため、しばらくこの施設に居座ることに。そして日本から派遣されたらしい男たちが、近々ようやく日本に帰国するらしい。過酷な仕事に耐えて仕事をする男たちだったが、いつしか彼らに殺気の影が忍び寄る。そんなギスギスとした人間関係が繰り広げられる中で、日本の本社から一通の手紙が届いた。その内容とは「この地での任期を更に延長する」、というものだったですが・・・・・。
施設の一室というワンシチュエーションのなかで行われる、淡々とした会話によって徐々に物語が浮かび上がります。いつもヒンドゥー五千回を観ると大体感じることなのですが、どんなに激しい感情表現があっても(怒る・泣く・笑うなど)、いつもさり気なく空虚で人物に影を落としているように思いました。そして舞台から漂ってくる空気感を共有しながらも、それを外部から客観的に見つめている自分がいます。上演時間が1時間35分弱というのも良かったですね。最近のヒンドゥー五千回の作品類では最短だそうです。ギュッと凝縮されている気がしますし、シャープで好印象でした。
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四角い部屋のセット(袴田長武)がひし形上に、客席まで張り出していました。全体的に薄汚れている空間になっており、鉄骨がところどころ露出したりしています。壁紙も剥がれかけているのですが、剥がれたところを総合すると「日本地図」になっていました。この「日本地図」がラストで大きな演出を見せてくれます。そして天井からは小さなランプが垂れ下がっていて、舞台の上手と下手に1つずつ出入り口があり、中央には木製のテーブルとイスが置かれています。照明(宮崎正輝、保谷翔太)とのコンビネーションも良く、衣装のコーディネートも作品の雰囲気にマッチしていました。
職員であるマルカワ(藤原大輔)やムナカタ(伊澤勉)は、ある一時を経て少しずつ異常をきたし始めます。そして日本からコンノに同行してきていたオカヤスは、実は本社からの使者だった・・・ということも明らかになりました。それに加えてこの職場から逃げ出したとされている、カマタの存在が曖昧になっているのが渋いです。この件に関して職員のアカシ(成川知也)が、コンノに何か言いたそうにしていました。更に劇中でもオカヤスがこの件に関して詰め寄りますが、もしかしたらカマタは普通に逃げ出したのかもしれないし、自殺してしまったのかもしれないし、殺されてしまったのかもしれない・・・。そう思わせてくれる要素が伏線のようにありましたし、観客に委ねてくれている部分が多い気がします。このように徐々に歯車が狂っていく・・・ような作品は今までにも観たことはありましたが、この作品はヒンドゥー五千回の特色などが上手い具合に出色していたと思いました。
役者さんは上手な方が多かったので、安心して独特の世界観に浸っていられました。特にコンノ役の立花あかねさんと、現地の日本人・デンドウ役の西田夏奈子さんの対話が凄かったです。会話は明らかに敵対的な喧嘩なのですが、平静を装いながら淡々と会話する2人は大迫力!印象に残った演出は「オープニング」と「エンディング」。どちらのシーンも職員たちの食卓風景だったのが、すごく良かったと思いました。食事に始まり、食事に終わる・・・。そしてオープニングでは影絵で「うたかたの日々」という公演タイトルが壁に映写され、エンディングでは壁の「日本地図」が照明によって浮かび上がりました。大きな仕掛けや装飾などはほとんどない静かなお芝居でしたが、こういうセンスの良いさりげない演出はすごく嬉しかったですね。ぜひ次回公演も期待したいと思います。
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