「ハイバイ『プレビュー≪おねがい放課後≫/再演≪ヒッキー・カンクーントルネード≫』」
「お願い・・・」出演:古館寛治(青年団)、市子嶋しのぶ(カムカムミニキーナ)、石橋亜希子(青年団)、内田慈、岡田昌也、師岡広明、三浦俊輔、永井若葉 「ヒッキー・・・」出演:平原テツ(reset−N)、村田牧子(青年団)、渡猛(Tokyo Comedy Store)・中川幸子(五反田団)、松本裕亮
---------------------------------------------
作・演出・出演(ヒッキー):岩井秀人 照明:松本大介(enjin−light) 音響:荒木まや 制作:原田瞳(tsumazuki no ishi) 前売:¥2,000 当日:¥2,500 発売日:2007年2月1日 ※16日(金)の昼の回(15:00開演)のみ、前売:¥1500円、当日:¥2,000 5日間8ステージ
---------------------------------------------
2007年3月14日(水)〜18日(日)/アトリエヘリコプター/http://hi-bye.hp.infoseek.co.jp/
岩井秀人さんが作・演出を手がけられている、「ハイバイ」の最新公演を観てきました。
「演劇ぶっく」で紹介させていただいた劇団です。今回は5月に本公演を控えた「おねがい放課後」のプレビュー公演と、ハイバイの代表作「ヒッキー・カンクーントルネード」の再演を2本立てで公演する企画。

公演会場である「アトリエヘリコプター」へは初めて伺いました。五反田団の前田司郎さんの実家家兼工場を改造した空間で、JRの大崎駅と五反田駅から程近い場所に佇んでいます。実際に行ってみると、本当にイメージどおりの『工場』でした。古い工場の面影を強く残している空間なんですね。ガラス戸の入り口を入るとそこはアンティークなイスが点在するロビーで、今回の公演会場は階段を上って2階にありました。とても小さくこじんまりとした会場でして、舞台を2方向から挟み込む客席形態です。ちなみに『ヒッキー・・・』と『お願い・・・』では、休憩中に転換が行われ、美術の変化がありました。でも美術にしても照明にしても音響にしても、あくまでもシンプルかつ抽象的な趣向に仕上がっています。
独特の世界観を持った現代口語演劇を展開している劇団「ハイバイ」。今回は2本立て公演ということで、一度で二度美味しい観劇体験でした。2本ともすごくすごく面白い内容に仕上がっていて、満足感を胸に劇場を後にすることが出来ました。10分間の休憩を1度だけ挟んで、上演時間はまるまる3時間弱。なのにチケット代金は破格の2,000円(当日500円増し、前売1,500円の回あり)!この内容でこの価格はすごくお得だと思います。上演中は堪えきれずにクスクスと肩震わせて笑ってしまっているのに、心の奥底では痛々しくて切なくて悲しくて仕方がありませんでした。ナンセンス的で可笑しな独特の世界観を通して、人間の可笑しさや悲しさを浮かび上がらせる、非常に巧妙な劇作術が光を放っている2本だと思います。僕の観劇した日は初日だったせいもあるのか、若干役者さんの演技に硬さを感じましたが、全体を応酬して観てみれば小さなことでした。5月に控えているこまばアゴラ劇場での本公演、『お願い放課後』を楽しみに待ちたいと思います。
★第一部:再演『ヒッキー・カンクーントルネード』
≪作品紹介・あらすじ−WEB「ハイバイ」より引用させていただきました−≫
プロレスラーになりたいけど引きこもりの男、 登美男の夢と現実の葛藤。 ハイバイ旗揚げの作品であり 名作の呼び声高い 主宰岩井の半自伝的悲劇。 −−−−− プロレスラーになりたいけど引きこもりの森田登美雄。唯一の理解者である妹と、今日も楽しくプロレス談義。心配した母親は引きこもりを引きずり出す職人さん『出張お兄さん』に相談をしに行くのだが。
10年間自宅から一歩も外へ出ていない、いわゆる「引きこもり」の男性を主人公にした物語。「引きこもり」は社会問題に発展している事柄ですし、けっこう身近だけどすごく重要な問題だと思います。どんなふうに描くのかな・・・と興味をそそられていたのですが、今作でもたくさんのユーモアを交えながら、だからこそ浮かび上がる悲しさや切なさを強く感じました。シンプルだけど強く印象に残る演出や、キャスティングの匙が絶妙なんですよね。上演時間は1時間10分弱だったかな・・・と記憶しています。案内文に記載されている「名作の呼び声高い作品」の意味を実感しました。
★下記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。
ここで登場する「主張お兄さん(又はお姉さん)」の存在は、テレビ番組のニュースで報道していて知っていました。一般的には「
レンタルお兄さん(
又はお姉さん)」と呼ばれているようです。でもここで描かれる主張お兄さんはとんでもない人物でした。彼は行く先々で過剰に適応してしまう「ひきこもり」ならぬ「とびこもり」の患者で、登美雄の自宅にもいつしか居ついてしまいます。そして次にやってきた出張お姉さんも強烈な人物で、出張お兄さんを連れ戻そうとすると同時に、登美雄の引きこもりもやめさせようとしました。出張お姉さんは買い物療法というのを実践しますが失敗し、最後に登美雄は「みちのくプロレス」が近所にやってきたことをキッカケにして、戸惑い迷いながらも、自分の足で1人家を後にします。あんなに突飛で可笑しな展開だったはずなのに、最後の最後にはしっかりと感動して目頭が熱くなりました。役者さんの演技も生々しいほどすごく上手かったです。登美雄の母親役をreset−Nの男優さんである、平原テツさんが演じられていたのも面白かった。
★上記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。
★第二部:プレビュー公演『お願い放課後』
≪作品紹介・あらすじ−WEB「ハイバイ」より引用させていただきました−≫
1年に4歳、年をとってしまう奇病を 患った高校生とそれを取り囲む 親、 仲間達。 冴え渡る10代の自意識と性欲の宴。 −−−−− 一年に4歳年をとってしまう奇病にかかっている 志賀君。 彼を取り囲む、陽気な同級生達。 17歳なのに肉体的には 68歳の志賀君は、 見た目はおじさんだけど恋だってするし、 ちょっとした背伸びもしたい。 ある日、演劇部の新しい顧問がやってきて、 それまで部の中心だった 志賀君の立場が一気に揺らぐ。 果たして。
もう・・・最高!!胸が強く締め付けられるような切ない気持ちになるのに、衝動は抑え切れなくて爆笑せずにはいられませんでした。1本目の「ヒッキー・・・」もすごく面白かったですが、今作も負けず劣らずハイバイの本領発揮!という感じがしました。本公演では17歳なのに肉体的には68歳の志賀君役を、青年団の実年齢・59歳の
志賀廣太郎さんが演じられます。今回のプレビュー公演では違う方が演じていらっしゃいますが、この役を志賀さんが・・・と想像するだけで笑いが堪えきれません。本公演は色んな意味でホント必見だと思います。このプレビュー公演で寄せられたアンケートを今後の参考にすることはもちろんのこと、チラシに賛否両論を問わず返答して掲載したりして、5月の本公演を迎えるプロセスのようですね。ちなみに上演時間は1時間40分弱でした。
★下記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。
思いっきり思春期真っ只中の志賀君を主人公にすえて、時に生々しく、時に痛々しく、時に愛おしく描きだします。ナンセンスかつ良い意味で馬鹿馬鹿しい傑作だと思いました。暗闇の中でのラブシーンや、母親が息子の自慰行為を目撃など、「これも志賀さんにやらせるのか!?」という要素がふんだんに盛り込まれています。演劇部の新しい顧問・品川幸雄先生は、明らかに蜷○幸雄さんをモチーフにしていたり、細かなところでもツボ満載でした。このプレビュー公演を踏まえて、いったいどんな本公演に仕上がるんでしょうか。今回のプレビュー公演も最高に面白かったものの、本公演ではキャストも一部変わるようですので、今から公演日をとても楽しみに待ちたいと思います。
ほとんどなにもない素舞台に近い抽象的な舞台上で、自由に場面が転換していきました。そして終盤になると、物語の展開が劇中劇として上演される、
シェイクスピア作「ハムレット」の展開と重なり合います。クローディアス役の品川先生とハムレット役の志賀君は劇中劇同様に命を落として、死後の世界と思われる場所に場面は展開していきました。これはこれでアリな展開だと思うのですが、たとえ物語がまとまらずに終わったとしても、僕は充分に面白いと思えていたと思います。
★上記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。