「TPT『エンジェルス・イン・アメリカ−第一部≪ミレニアム≫−』」
出演:山本亨、斉藤直樹、パク・ソヒ、池下重大、チョウソンハ、宮光真理子、松浦佐知子、植野葉子、矢内文章、深貝大輔、小谷真一、アンソン・ラム 一般:5,000円 学生:3,000円(TPTのみ取扱い) 通し特別観劇料金(一般):9,000円 通し特別観劇料金(学生):6,000円
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作:トニー・クシュナー 訳:薛珠麗、TPTworkshop 演出:ロバート・アラン・アッカーマン 演出補:薛珠麗 美術・衣裳:ボビー・ボヤヴォッツキー 照明:沢田祐二 ヘア&メイクアップ:鎌田直樹 音楽:粟屋顯 音響:高橋巌 舞台監督:赤羽宏郎 ※国家的テーマについてのゲイ・ファンタジア
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2007年3月20日(火)〜4月8日(日)/ベニサン・ピット(森下)/http://www.tpt.co.jp/
TPTの最新公演は再演が待望されていた、『エンジェルス・イン・アメリカ』が登場!いくつもの賞を受賞されているトニー・クシュナーの傑作戯曲を、ロバート・アラン・アッカーマンさんが演出されました。2部構成の超大作を一挙上演する企画で、僕は第一部「ミレニアム」から拝見してきました。

本作の第一部「ミレニアム」は休憩を2回含める、3時間30分弱という長丁場の上演時間。そして第二部の「ペレストロイカ」も休憩を2回含める、3時間30分弱というこれまた長丁場・・・。そうなんです、この2つを通してみると7時間に及ぶ超大作なんです。実質的な拘束時間も8時間以上と長いですし、観るほうも演じるほうも体力勝負!な作品ですよね。でもぜひ一部も2部も観て頂きたいです。それはどうしてかと言うと、二部は一部の続編にあたるので、どちらとも観ないと作品は完結しない・・・という憎い構成。ぜひ一部→二部の順番でご覧になることを、絶対にオススメしたいですね。
≪あらすじ−WEB「WOWOW」より引用させていただき、一部変更いたしました−≫
1980年代、アメリカ。連邦控訴裁判所の首席書記官ジョー・ピットは、法曹界の大物である弁護士ロイ・コーンからワシントンD.Cの司法省で働かないかと持ちかけられる。自分が同性愛者ではないかと薄々意識していたジョーだが、精神安定剤に依存している妻ハーパーが気がかりで、コーンの申し出を受けるかどうか悩む。同じ頃、ジョーと同じ職場の同僚、ルイスにはプライアーという同性の恋人がいたが、彼からAIDSにかかっていることを告白される。急接近していくジョーとルイス。やがてプライアーは、現れた天使から彼には使命があると告げられる。一方、息子ジョーから同性愛者であると告白された母親ハンナは、ひょんなことからプライアーと知り合い、彼の面倒を看るようになる。そして気丈だったコーンも医師からAIDSにかかっていると宣告されるのだが・・・・。

もちろん期待を胸にして観に行ったものの、TPTはその期待を遥かに超えてくれました。めちゃくちゃ面白かったです。既に1部の1回目の休憩時で、「観に来て良かった・・・」と心から思えました。戯曲は噂どおりの傑作ですし、演出も自由ですごくユニークだし、役者さんはプロ揃いですし、スタッフワークも抜群に冴えています。僕が拝見したのは初日にもかかわらず、この高いクオリティにはビックリ仰天でした。再演ということもあるのか、もう完成形が観れました。やはりほぼ変わらず初演のキャストで上演されているのが、このクオリティに結びついた大きな要因なのでしょうか・・・。今回の公演は1本だけだと一般は5,000円、学生は3,000円の入場料金です。そして1部と2部を通して観ると、一般は9,000円で学生は6,000円というお値段。これを高いか安いとみるかは人それぞれですが、僕はこの内容でこの値段は比較的安いと思います。ぜひこの傑作をお見逃しなきよう・・・!!
今回の公演にはサブタイトルが付いています。「国家的テーマについてのゲイ・ファンタジア」。このサブタイトルを聞く限りで僕が想像すると、「難しい!暗い!重い!」という良くないイメージを持っていたんです。しかも上演時間は7時間ですし。でもそんな予想は良い意味で裏切られました。まず、ぜんぜん暗くないんです。むしろ明るい雰囲気だし、良い意味で軽快なんです。悲しくて胸が痛むシーンもいっぱいありますが、それと同じくらい笑いどころがたくさん散りばめられていました。政治や宗教などが絡む人間関係が展開されますが、それを帳消しにして超えてしまうような存在が現れます。それは「天使」。サブタイトルのとおり今作は完璧な「ファンタジー」として作られていて、例えば両性具有の天使や死者が登場したかと思えば、精神安定剤中毒の女性が見る幻覚の世界が、実際に舞台上で展開していくのが大きな見所です。7時間も嘘じゃなくあっという間でした。
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先ほど「むしろ明るい雰囲気だし、良い意味で軽快なんです。」と書きましたが、だからといって問題を軽視しているわけではないんです。1,980年代のアメリカで生きるゲイを主人公に、軽快だかこそ強いメッセージが浮かび上がりました。まさにファンタジーのように壮大なスケールで展開する物語から、「生命」や人間本来の普遍的なテーマが描かれてくるのです。こんなに重く重要なテーマを扱っているにもかかわらず、エンターテイメント作品に仕上がっているのがスゴイと思いました。悲しくなったり、笑ったり、可笑しかったり、共感したり・・・、こんな風にいつのまにか惹きこまれているんですよね。たとえば悪人でも悪の部分だけでなく、善の部分も描いていて、愛おしく感じられる要素が随所にありました。だから登場人物(及び役者さん)に対して、親しみが持てたんです。
こんなにも劇場という1つの空間で、観客と俳優が一体になる作品は数少ない気がします。一体になるというか、観客もこの作品の一部になって、参加しているような印象。生で観客と俳優が空間を共有する、「演劇」の醍醐味が存在していました。これは実際に劇場に足を運んで、ぜひぜひ体感していただきたいです。やっぱり役者さんがすごく上手なのも大きな要因ですが、演出自体が「演劇」ということを全面に押し出しているんですよね。まず、ベニサン・ピットの壁や床を露出させて生かす舞台美術で、廃墟のようにも見えるシンプルで抽象的なステージが張り出しています。そしてイントレを使用したり、舞台の転換などは袖で待機しているスタッフさんや、役者さんが実際に行いました。だから演劇での「ライブ」という臨場感が、観客までビシバシと強く伝わってくるんです。
精神安定剤中毒の女性が頻繁に、幻想の世界に飛び込みます。それが過剰な演出なしでテンポ良く展開するので、すごく爽快な気分で観劇できました。青空が見える丘のシーンで、青空が描かれた巨大なカーテンが登場したり、照明や美術がシンプルだけどホントに大活躍!いろんな演劇の演出方法を見せていただけました。個人的なお気に入りのシーンは、やはりラスト・シーンでしょうか。チョウソンハさん演じる両性具有の天使が、部屋の天井を突き破って登場します。そして「ごあいさつを、預言者よ!大いなる仕事がはじまる!使いは到着した!」と、エイズで苦しむゲイであるプライヤー役の斉藤直樹さんに叫びます。そして行き着く暇なくして舞台は暗闇に包まれて、Billy Joelの「Uptown Girl」をBGMに、笑顔の役者さんたちが客席に駆けてくるカーテンコール・・・。僕はすごく興奮してしまい、楽しくて仕方がなかったですね。完全に二部へと物語が持ち越される終わり方なので、絶対に一部を観た人は二部を観たくなるはずです。なんて憎い構成なんだろう。
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