「ドルイド・シアター・カンパニー『西の国のプレイボーイ』」
出演:マリー・ムーレン、アーロン・マナガン、デニス・コーウェイ、ほか ≪「東京国際芸術祭2007(TIF)」参加作品/ベケット生誕100年記念フェスティバル参加作品≫ 英語上演・字幕付き
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作:ジョン・ミリトン・シング 演出:ギャリー・ハインズ 美術:フランシス・オコナー ムーブメント:ディビッド・ボルジャー 照明:ディヴィー・カニングハム 衣裳:キャシー・ストラカン 音響:ジョン・レナード 作曲:サム・ジャクソン 舞台監督:小林裕二 翻訳:目黒条 共催:アイルランド大使館 後援:カルチャーアイルランド 一般料金:4,000円 学生料金:2000円(当日要学生書提示)
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2007年3月22日(木)〜24日(土)/新宿パークタワーホール/http://tif.anj.or.jp/
いろいろな劇団に触れることが出来る、「東京国際芸術祭2007」もいよいよ終盤!今回はアイルランドの老舗劇団「ドルイド・シアター・カンパニー」の来日公演を観て来ました。アイルランドではチケットがなかなか取れない人気劇団だそうで、今回は同劇団きっての代表作が登場することに。

≪あらすじ・作品紹介−WEB「東京国際芸術祭」より引用しました−≫
「アイルランドを代表する劇作家シングの最高傑作!無慈悲な喜劇、奔放な悲劇」アイルランド西部の寂しい村に、平凡な青年クリスティが現れ、父親を殺して逃れてきたと告白する。 村人たちはその話をもてはやし、たちまち彼を村の英雄に祭り上げる。ところが、そこに殺したはずの父親がやってきて・・・。厳しい自然と共に生きる人々の圧倒的な存在感を具現化した劇作家シング。100年の時を越えて、この傑作を現代に蘇らせたのは、98年に女性演出家として初めてトニー賞を受賞したギャリー・ハインズ率いるドルイド・シアター・カンパニー。 世界各国で上演され賞賛された、リアルでファンタジックな悲喜劇『西の国のプレイボーイ』、遂に日本初上陸!
ドルイド・シアター・カンパニーは日本でもお馴染みの劇作家、マーティン・マクドナーの作品が有名で、トニー賞も受賞されています。今回の作品を観た印象の限りでも、「この劇団によるマクドナー作品は確実に面白いだろうな」と感じさせるものでした。そして待望の来日公演となった今作「西の国のプレイボーイ」は、アイルランドを代表する劇作家である、ジョン・ミリントン・シングの戯曲作品です。今から100年前に執筆されたという同作品の初演では、観客の間で暴動が起きたことでも有名だとか。確かに痛烈なほどの風刺や皮肉を交えるために、やはり昔の観客には大変な問題作だったんでしょうね。でも今も昔もきっと通じるような、普遍な要素が散りばめられていました。今回は英語上演の日本語字幕付きで、上演時間は15分間の休憩を含める2時間15分弱でした。
作品自体は非常にクオリティが高かったですし、最後まで退屈せずに面白く拝見しました。思った以上にユーモアが盛り込まれて、コメディといっても言いぐらいです。でも喜劇性と悲劇性が上手く組み合わさって、絶妙なバランスを保っていました。舞台美術、照明、衣装、音響などのスタッフワークも抜群に冴え渡っており、ギャリー・ハインズさんの演出も個人的に言うとすごく僕好みでした。ただ戯曲は「傑作」という噂を聞いていましたが、けっこう荒唐無稽な印象を持つことになりました。でも全体を一貫してみると、主題が鮮明に浮かび上がります。今回の上演では少々唐突で突飛な展開の壁を、演出や役者さんが上手く超えている気がしました。その感覚は非常に爽快感溢れるものです。だから結果的に面白いと感じられる「良作」へと、仕上がっているのではないでしょうか。ですからこの戯曲を上演するのは、そう簡単なことではないと思います。手強さを強く感じました。
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ある1人の男が自分の想像や虚構的な世界で、自分自身を見つけて向き合い、そして成長を遂げる・・・というようなストーリーでしょうか。ピリッと風刺の効いたユーモアや、不条理的な要素も織り込まれます。まず殺人者を村の英雄に持ち上げる・・・、というのからして突飛ですよね。しかし住むことになったバーに、クリスティが殺したはずの父親が現れて自体は急展開!クリスティは残酷に父を殺した!、と人々に自分をアピールしますが、実は頭を殴っただけで殺してなどいなかったのでした。そうこうしている間に彼は村の運動会で優勝し、バーの娘と恋に落ちて結婚の約束までします。ところが父親が登場によって、今までの嘘がすべて村人たちに暴かれてしまいました。村人からの態度はすっかり急変し、暴力的かつ冷たくなり、結婚も取り消し。そしてクリスティは父親を殺してしまいます。しかし終盤になってまたもや父親が生きていたということが明かされ、彼は自分自身と向き合った結果なのか、父親と共にバーを後にします。嘘が暴かれたからとはいえ態度が豹変したバーの娘は亡き悲しみ、夫と子供を殺害した未亡人の存在もすごく印象に残りました。
お洒落な新宿・パークタワーの3階に位置する、パークタワーホールが今回の会場でした。フリースペースにプロセニアム形式の舞台が設えてあり、上演前は黒幕によって舞台と客席は遮断されています。開演して幕が開いたとき、心の中で溜息が出ました。舞台となるのは田舎地方のバー。高い天井に向かって、高くそびえる灰色の汚しが入った重厚的な壁。バーカウンター、イス、テーブル、窓、食器棚・・・すごく生活感やリアリティを感じるのに、例えば田舎のバーとは思えないほどの高い壁(及び天井)など、良い具合に抽象的な要素が挿入されているんです。床には茶色の砂が敷かれるのも効果的で、お世辞にもキレイとは言えない、良い意味でどこか殺風景な仕上がりでした。なんだか舞台美術だけ空間が成立してしまうような、「絵画」のような世界が広がります。
照明は地味であまり主張しない素朴な印象を受けるものの、実はゆっくりゆっくりと地道に変化していくんです。そして変化が終わった瞬間「ハッ!」と、その大胆さに心奪われてしまいました。いろいろと今作のポイントとなる、いわゆる見せ場がありましたが、そこでも効果的に舞台全体を演出しています。衣装や音響なども・・・然り!!どちらかといえば「派手」ではなく、「地味」な系統の演出作品だと思います。でもすごく渋くてセンスが非常に冴えていて、心揺さぶられるものが確かにありました。役者さんに対しても同じことが言えると思います。皆さん「西の国のプレイボーイ」という作品の一員として一貫性を持ちながらも、自由かつ非常に生き生きと演じられていました。胸を打つ演技や瞬間にたくさん出会えて、ぜひ「ドルイド・シアター・カンパニー」のまたの来日を切に希望!
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