「新国立劇場バレエ団『バレエ≪オルフェオとエウリディーチェ≫』」
【キャスト】湯川麻美子、江本拓、丸尾孝子、グリゴリー・バリノフ、冨川祐樹、安藤赴美子、吉川健一、田上知穂、真忠久美子、厚木三杏、遠藤睦子、神部ゆみ子、楠元郁子、八幡顕光、楠元郁子、西川貴子、西山裕子、川村真樹、寺田亜沙子、市川透、陳秀介、グリゴリー・バリノフ、貝川鐵夫、冨川祐樹(日によって変わります。ダブルキャストあり。僕の観たのは23日19:00の回。)
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【演出振付】ドミニク・ウォルシュ【音楽】クリストフ・ヴィリバルト・グルック【編曲・指揮】デヴィッド・ガルフォース【衣裳】ルイザ・スピナテッリ【照明】沢田祐二【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【合唱】新国立劇場合唱団【シリーズ協賛】花王株式会社【チケット】7,350円〜1,500円
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2007年3月21日(水・祝)〜25日(日)/新国立劇場・中劇場/http://www.nntt.jac.go.jp/
新国立劇場バレエ団による新作バレエ公演は、『オルフェオとエウリディーチェ』というタイトル。アメリカ人の振付家であるミニク・ウォルシュさんが、演出・振付を担当された作品でした。今回は新国立が新作創作バレエのレパートリー化を図る、「エメラルド・プロジェクト」の一環公演でもあります。

今回の作品は「ギリシャ神話」の中に登場してくる、オルフェオとその妻エウリディーチェの悲恋劇です。そしてこの物語を基にした「クリストフ・ヴィリバルト・グルック」による同名オペラが、今作の基礎になっている模様でした。分類分けをすれば「バレエ」というジャンルになるけれど、オペラとバレエの融合が非常に注目されるプロダクションです。まずグルックのオペラ音楽が編曲の後に使用される形式で、オペラ歌手と合唱団による声楽が随所に挿入されます。ですから舞台上には「動き手(ダンサー)」と「歌い手(歌手)」がいるわけなんですね。例えば演劇公演では「ク・ナウカ」による、ムーバーとスピーカーの形式を思い出していただければ、分かりやすいのではないでしょうか。上演時間は25分間の休憩を含める、1時間50分弱。丁度良くて爽快な時間でしたね。ちなみに今回も学生優待企画『アカデミックプラン』を使用して、「A席:4,200円→2,100円」の半額価格で観劇できました。席は1階の端っこのほうでしたが、観るのに支障はほとんどなかったです。あとは「パンフレット」で少し嬉しかったことが1つ。通常の新国立劇場公演と同じ情報量にも関わらず、いつもより300円安い500円で販売されてました。
≪ものがたり−WEB「新国立劇場」より引用させていただきました−≫
太陽神アポロンの息子オルフェオは美しい妻エウリディーチェと幸せな毎日を送っていたが、妻は毒蛇にかまれて死んでしまう。悲しみにくれたオルフェオは妻を取り戻しに黄泉の国へ下る。オルフェオの奏でる竪琴の美しい音色に心動かされた冥界の神は、黄泉の国を出るまでは後ろを歩く妻を決して振り返って見ない条件でエウリディーチェをオルフェオに返すことを約束する。しかし、いよいよ地上に出るというところでオルフェオは喜びのあまり後ろを振り返ってしまう。たちまちエウリディーチェは冥界に引き戻され、もう二度と愛する妻は帰ってこなかった・・・。(ギリシャ神話より)
アメリカ人の注目振付家が日本の新国立劇場で「新作バレエ」を創作する・・・、そんな非常に意欲的かつ画期的な試みだということを感じ、このプロダクションの初演を観れたことを嬉しく思います。作品全体から刺激的かつ新たな息吹を力いっぱい受けながら、興味深く最後までじっくりと拝見することが出来ました。僕は細部で感動や興奮を味わっていたのですが、最終的には一環した感動には出会うことは出来なかった気がします。なんだか全体がデコボコと突出した状態だけで終演してしまって、心に残ってくれるものが僕には少なかったのが正直なところでした。振付はバレエ的なエッセンスを色濃く残すものの、コンテンポラリー・ダンスの要素も強く感じることが出来ます。演出は「ハッ」と息を呑んでしまうような大胆さがチラホラと挿入され、オーケストラの演奏はなかなか聴き応えがあったのですが、歌手の方々が少し不調な気がしたのは気のせいでしょうか。僕が一番感動した点は、ダンサーの方々でした。特にエウリディーチェ役の湯川麻美子さんと、相手役であるオルフェオ役の中村誠さんは出色の仕上がり。心揺さぶられる思いになり、魅せられました。
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舞台美術(島次郎)はいくつかパターンが用意されていて、オーソドックスなものから奇抜なものまで幅広かったです。まずエウリディーチェとオルフェオの住む、神殿のような空間。どこか「古代ギリシャ時代」を彷彿とさせる、遺跡のような仕上がりになっていました。でもどこかチープさやハリボテ感が拭えなくて、僕は少し物足りない気がしてしまいました。個人的には島さんの作られる美術の質感や空間構成が好きなのですが、今回の作品は島さんがやる必要があったのだろうか・・・、と少し疑問に感じました。でもオルフェオがエウリディーチェを取り戻しに、「黄泉の国」にやって来た場面は凄まじかったです。その場面では神殿のセットが撤去されて、何も無い素舞台が広がっていたのですが、なんと舞台頭上から吊ってあった照明器具が下に降りて来ました。舞台を包み隠してしまうほどに次々と降りてきて、すっかり天井から床まで照明器具の数々で覆われてしまいます。そんな光景を真っ赤に照らし出す照明(沢田祐二)の効果もあわさって、すぐさま今表現されているのは現実世界とは異なる世界である、「黄泉の国」だということが分かる奇抜な演出でした。
ほかにも印象残った演出はいろいろありました。黄泉の国でオルフェオが彼女を探して旅に出る、一幕のラストシーン。広い広い奥行きを持った新国立劇場・中劇場の舞台を露出して、優美な音楽が流れる中、ゆっくりと舞台奥へ歩いていくオルフェオ・・・。さりげないけど非常に効果的な、中劇場での奥行きの使い方だったと思います。迷路の洞窟でエウリディーチェとオルフェオがさまよう場面では、2人の避けられない悲恋的な運命を、しっかりとダンサーの方々が体現してくれました。その場面を舞台頭上のカメラで撮影されて、ライブで舞台奥の壁に映写するのも興味深い演出です。それからエウリディーチェが命を落としたり生き返ったり、怒涛の展開がテンポよく進行していきました。ラストは生き返ったはずの彼女が消えていて、嘆き悲しみ唖然とするオルフェオ。しかし最後バスタブから彼女が顔を出す、という印象的な場面で今作は締めくくられます。今までの出来事はなんだったのか・・・?、と良い意味であやふやな終わり方だったのが、効果的に作用していました。
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