作:井上ひさし 演出:鵜山仁 出演:辻萬長、中川安奈、木場勝己、森奈みはる、久保酎吉、河野洋一郎、大原康裕、栗田桃子、前田涼子 一般:5,250円 学生割引:3,150円(全席指定)
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音楽:宇野誠一郎 美術:石井強司 衣裳 :前田文子 照明:服部基 音響:斉藤美佐男 振付:珠栄 歌唱指導:宮本貞子 方言指導:大原穣子 宣伝美術:和田誠 演出助手:宮腰洋子 舞台監督:加藤高 制作:井上都、高林真一、谷口泰寛 ≪今年1月からの全国ツアー、東京公演≫
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07年4月29日(日)〜5月5日(土)/六本木・俳優座劇場/http://www.komatsuza.co.jp/
井上ひさしさんの戯曲を上演する「こまつ座」の最新公演。今回は何度も上演を重ねられている『紙屋町さくらホテル』が、今年一月からの他地域公演を経て東京に帰ってきました。僕は昨年の東京公演を拝見することが出来まして、本公演ではチラシに観劇時の感想を寄せさせて頂いています。

≪ものがたり−WEB「こまつ座」より引用させて頂きました−≫
昭和二十年、五月、広島。紙屋町ホテルは、名優丸山定夫とスター女優園井恵子を迎えた。そして、女主人をはじめ宿泊客までが、まるごと移動演劇隊「さくら隊」に入隊することになる。公演は2日後。演し物は「無法松の一生」。しかしかれらの前途には山のような困難が待ち受けていた。役者はみな素人。しかも薬の行商人を装う男は、じつは海軍大将。傷痍軍人もじつは陸軍省の密偵。さらに彼ら全員を、特高刑事が監視している。はたして。「さくら隊」はぶじに芝居の幕をあけることができるのだろうか。大日本帝国存亡のときに、全国を行脚した天皇の密使。海軍大将長谷川清が、広島で邂逅した、あのかけがえのない三日間。原爆で逝った愛しき人びとの歌声が、青空のかなたから、いまも長谷川の胸に、清らかに響く。
かつて全国を行脚した天皇の密使であった、海軍大将・長谷川清(辻萬長)。彼が自ら東京巣鴨プリズンに「自分はA級戦犯だ」と名乗り、自首してくる場面から開幕します。それから彼が回想するのは広島の、紙屋町さくらホテルで体験した三日間のこと。今作では実在した俳優・丸山定夫と園井恵子が中心になっている、移動演劇隊「桜隊」にスポットを当てています。彼らは5月から8月まで広島に公演を行い、後に被爆者になり命を落とすことを観客は知っています。そんな重いテーマにも関わらず、劇中は笑いと涙、そして歌も盛り込まれた作品でした。例えば前回の「私はだれでしょう」のようなプレイ・ウィズ・ミュージックの形式ではありませんが、ピアノの生演奏によって何曲か歌を披露される場面がありました。歌唱力やテクニックが先行するのではなく、歌にこめられた率直な思いが伝わってきて嬉しかったです。さて、15分間の休憩を含める3時間20分弱の上演時間は、長さを感じずにいられませんが、終演後の見応えと余韻はかなり強いものになりました。
事実と創作の要素を織り交ぜながら、でも時代背景をしっかり描写しつつ、普遍的な人生から戦争責任までを井上さんの視点で応酬していきます。優しさと鋭さを兼ね備えた眼差しに強く惹かれながら、ユーモアや笑いもたくさん散りばめつつ、舞台で奏でられる暖かいメロディーが体を包み込みました。去年観たとき同様に涙が次々と流れてしまって、でも見逃したり聞き逃したくなかったので、最後まで集中して舞台を見つめ続けました。今作は新国立劇場やこまつ座でキャストを変えたりしつつ、何度も何度も上演を重ねられています。そしてこれから後世に伝えていきたいような、やはり傑作に相当する作品だと思いました。でも今回の上演に関して言えば、一幕はまだまだカンパニーの本領発揮には至らないようでした。なんだか物語や台詞をなぞっている印象を否めず、若干説明的な表現が目立っていた気がして、あまり惹きこまれることがありませんでした。でも二幕から抜群に冴え渡る本領発揮の仕上がりになり、爽快なほど惹き込まれていきました。ただでさえステージ数の少ない東京公演ですので、もちろん前売券は既に完売状態というところです。僕が劇場に到着したのが開演の15分ぐらい前でしたが、その時点でやはり当日券のほうも完売していました。客席には所狭しと補助席がたくさん並び、注目や人気の高さを伺えます。でも、だからと言って見逃してしまうのは、とても惜しい気がしてしまいます。もしもお時間とご興味のある方は是非!
井上 ひさし著
小学館 (2001.2)
通常2-3日以内に発送します。
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序盤と終盤の巣鴨プリズンでの場面を除き、ほぼすべてが「紙屋町さくらホテル」で進行します。具象的に生活感や古さを感じさせる舞台美術(石井強司)が印象的。さてさて、一幕は残念ながら役者さんの演技にあまり惹かれませんでしたが、二幕からは脚本上でもかなり魅力を感じる仕上がりでした。桜隊の演目である「無法松の一生」の稽古をしながら、正体を偽った人物同士による対話を交えつつ、次第に戦争責任や人生について、着実に問い始めるのが大きな見所です。いろんなことを劇場で学び、そのことについて考えながら劇場を後にしました。なのに幅広い観客層が楽しめるであろう、「エンターテイメント」として成立しています。今回は祖母と一緒に劇場へ足を運びましたが、帰路につく時の会話は非常に豊かでした。祖母は戦争を直に体験した世代です。なのでこまつ座や井上作品を観劇すると、戦争を体験していない僕とは、また違った感じ方や見方があるようでした。もちろん学生の方や若い方にもぜひ観て頂きたいですが、世代の違う家族と足を運ぶのもオススメです。ちなみに今回祖母はとても感動していたようで、隣の席で号泣していました。
さて話が少し逸れたところで、昨年の上演同様にですが、ラストシーンでは胸を打たれます。「すみれの花咲く頃」を舞台上でコーラスする登場人物、そしてホテルを後にして客席通路で振り返る長谷川。舞台頭上に浮かび上がる真っ青な青空は、原爆が投下された朝のことを連想します。すると歌がピタッとやんで青空は暗闇に消えていき、客席と舞台とを遮断するように薄い黒幕が下りてきます。このとき長谷川にはスポットライトが当たっていて、舞台上の人物たちは原爆で命を落とし、長谷川は被爆せず生きながらえることを、観客へと強く暗示させるラストシーンでした。全体的な演出を総合してみると、とてもオーソドックスな印象だったように思います。今作での鵜山仁さんによる演出は手堅く、奇をてらわず、しっかりと戯曲本来の良さを惹き出していました。ちなみに今作をこまつ座で上演するのは今回で三演目ということで、基本的なキャストはほぼ変わらないカンパニーです。でも今回からはホテルの女主人役が土居裕子さんから、中川安奈さんへバトンタッチされました。このように上演を重ねていくのは素敵ですし、この傑作を上演し続けて欲しいと思います。
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