「【試演会】オペラシアターこんにゃく座『オペラ≪ピノッキオ≫』」
出演:岡原真弓、井村タカオ、佐藤敏之、田中さとみ、萩京子(ピアノ演奏) ≪アジア5カ国公演ツアー:マレーシア→インドネシア→ベトナム→タイ→ラオス→2008年5月東京で公演!≫
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原作:カルロ・コッローディ(童話「ピノッキオ」) 台本 :山元清多 作曲・音楽監督: 萩京子 演出:伊藤多恵 美術・衣裳:荒田良 舞台監督:久寿田義晴 制作:山崎亜季、オペラシアターこんにゃく座 主催・制作:オペラシアターこんにゃく座 助成:平成19年度文化庁国際芸術交流支援事業、日タイ修好120周年記念事業草の根助成、財団法人「ロームミュージックファンデーション」
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2007年5月12日(土)〜5月30日(水)/アジア5カ国/http://www.konnyakuza.com/
日本語のオリジナルオペラを創作し続け35年の老舗カンパニー、「オペラシアターこんにゃく座」による新作公演の初演地はマレーシア!そうなんです、今回は新作オペラを海外の地で初演するという画期的な企画。日本時間の先日16:00にマレーシアで幕をあけた本作品は、アジア5カ国を今月下旬まで「東南アジアツアー」をします。さて、そんな新作オペラのタイトルは「ピノッキオ」。ディズニーのアニメ映画などでもお馴染みな、カルロ・コッローディの名作童話です。今作では黒テントの山元清多さんが脚本を手がけ、萩京子さんが作曲されたのちに、伊藤多恵さんが演出されました。そんな先日の開幕が迫りつつあった先週のこと、関係者を集めた試演会がカンパニーの本拠地で行われました。90人の観客を前に初めてベールを抜いた今作を、しかと見届けて参りました。

こんにゃく座の本拠地はJR南武線・宿河原駅から徒歩10分強ほどの場所に佇み、稽古場のほかにも倉庫や事務所が増設されており、非常に恵まれた環境でした。天井が高めで広々とした稽古場には一般の劇場と同じように、舞台と客席がプロセニアム形式で配置されています。関係者90人ほどが満員の客席から見守る中、いよいよ開始定時となりプレビューが開始されました。舞台上には薄汚れた大きな袋がいくつか点在しており、客席から見て左手にはグランド・ピアノが一台あるだけ。とても簡易かつシンプルな空間に、太鼓などの打楽器を鳴らしながら出演者全員が登場。いつしかピアノの軽やかなメロディと共に伸びやかに歌いだす、抽象的で素朴な風合いの衣装とメイクをした4人の歌役者さん。そう、今作はこんにゃく座が得意とする少人数編成で、4人のみの出演者で何役も演じ分けながら、演奏もピアノ一台のみというシンプルさ。今回の全体的なツアーメンバーも最小限の人数だけで、装置もすべて手荷物で移動するとのこと。そんな非常にアグレッシブな情報を耳にしていたものの、作品自体の全貌はまったく知らずに拝見することになった自分。しかし今回の作品は今後のこんにゃく座の礎になっていくであろう、なによりも個人的に改心の一撃であったことに間違いはありませんでした。

≪ものがたり−WEB「こんにゃく座」より引用させて頂き、役名を追加−≫
ジェペットじいさんによって、一本の木から人形になったピノッキオ(井村タカオ)。 学校へ行き、いい子にしているといつか、本当の人間の子どもになれるというジェペットじいさん(佐藤敏之)。 しかし、ピノッキオは、学校へも行かず、旅する人形一座のいる芝居小屋へ寄り道したり、ずる賢いキツネとネコ(岡原真弓、佐藤敏之)に出会い、もらった金貨をだまし取られてしまったり、畑では、ニワトリ泥棒と間違えられて農夫(田中さとみ)に捕まってしまったり。疲れて途方にくれていると、今度はオモチャの国行きの馬車に出会い乗ってしまいます。 オモチャの国で遊んでばかりいて、とうとうロバになってしまったピノッキオは、市場へ売られ、海に放り込まれ、大きなクジラに飲み込まれてしまいました。なんと、クジラのお腹のなかで、ピノッキオを探して旅にでたジェペットじいさんと再会。おじいさんを助け、クジラの口から泳いで逃げだします。 「ピノッキオつよくなった。いい子になった。人間の子供になれるだろう」 しかし、旅をして、たくさんの出会いをして、たくさんの思いをして強くなったピノッキオは、答えます。 「ボク、ピノッキオ、木の人形だ、木の人形でも、強くなれた、たくましく、やさしく、なれたんだ、 人間の子供になれなくても、幸せなんだ」
多くの人々が触れてきた名作童話「ピノキオ」。ディズニーの映画や原作ではピノキオが様々な困難に出会い、最終的には望んでいたとおり人間へと姿を変えることが出来ます。しかしこんにゃく座版ではピノキオが人間にならず、自らの意思で人形であることを選ぶと言うエンディング。原作では「善き人間をめざすことが世界を善くする」という、人間を肯定する考えに基づいて描かれています。そこで今回のプロダクションでは人間の愚かさを自覚した上で、人間だけが素晴らしいという考えから脱却することが礎になっていました。こういう解釈を盛り込むことにより、ピノキオは自分が人形であることに誇りを持ち、これから生きていくことを自ら選択するのです。確かに自分たちの愚かさを自覚することに加え、更に自分を肯定すると言うことは非常に困難です。でもあえて、この解釈と結末を選ばれたことに敬意を表したいと思いました。こういう考えや意図などを汲むことができれば、大人でも楽しむことが出来る気がしますが、全体的には子供を対象に仕上げられています。原作を1時間半いう短時間に無理なく凝縮させており、ロードムービーのように疾走感を強めて進行するのは魅力的でした。どうやら海外でも字幕は使用しない方向のようですが、今作は基本的に日本語上演されるようです。しかしそれでは現地の人が理解できないため、随所に挿入される重要な台詞などを、その土地に浸透する言語を語ります。世界中で親しまれている作品ですし、アクションの大きいデフォルメされた演技なので、現地の観客にもきっと伝わるのではないでしょうか。
音楽はとても優しくて親しみやすく、口ずさめるような軽やかな旋律です。しかし軽快なのにも関わらず、実際は非常に奥深いものが潜んでおり、そんな奥深さとは対照的に親近感を覚えました。ピアノだけでなく重唱なども冴えていましたし、打楽器やアコーディオンを演奏するのも印象的です。4人の出演者がストーリーテラーとなって物語を進めますが、しっかりと重要な対話や描写もされているのが巧妙でした。演出も演劇的な広がりがいろいろと散りばめられ、おもちゃ箱をひっくり返した様に次々と繰り出される仕掛けに、いつしか胸が高鳴ります。海の場面やピノキオがクジラに食べられる場面では巨大な布を使い、非常に圧倒的な存在感を見せる事に成功していました。しかしクオリティが高い作品だとは、残念ながら決して思いませんでした。まだまだ全体的に粗が目立っていた気がしますし、ハプニングも多々あった仕上がりだったように思います。しかしそんなハプニングさえも作品の一部と感じられるような、舞台と言う「ライブ」の素直な感覚が生かされる作品でした。きっとアジア5カ国をツアーしていくうちに、現地の観客と共に成長していくんでしょうね。日本での公演は来年の5月に東京で予定されているようです。ぜひ進化した仕上がりを期待します。