脚本:佃典彦 演出:松本祐子 出演:飯沼慧、鵜澤秀行、関輝雄、高橋克明、若松泰弘、佐藤淳、山本郁子、奥山美代子、添田園子 チケット(全席指定/割引あり):5,500円〜2,500円
---------------------------------------------
装置:石井強司 照明:金英秀 音響効果:藤田赤目 衣裳:出川淳子 舞台監督:三上博 演出補:上村聡史 制作:伊藤正道 票券:松田みず穂 ≪東京公演、尼崎公演、藤沢公演≫ 第50回「岸田國士戯曲賞」受賞作品、第8回「千田是也賞」受賞作品、文学座創立70周年記念公演
---------------------------------------------
2007年5月8日(火)〜17日(木)/紀伊国屋サザンシアター/http://www.bungakuza.com/
B級遊撃隊の佃典彦さんが文学座に書き下ろしされ、第50回岸田國士戯曲賞を受賞された作品「ぬけがら」。初演では演出の松本祐子さんも第8回千田是也賞を受賞され、多くの人から熱い眼差しを浴びていた本作品の再演です。初演や他劇団での上演も見逃し続け、今回が初見でした。

≪ものがたり−WEB「文学座」より引用させて頂き、役名追加−≫
夏、県営住宅の一室。昨日母親の葬儀を済ませ、今日は妻(山本郁子)に離婚届を突きつけられ捺印を迫られている男、鈴木卓也(若松泰弘)。41歳の元郵便局員。彼は、学生時代の友人(奥山美代子)との浮気がばれ、車で人身事故を起こし、職場もクビになる始末。心臓の悪かった母親は、度重なる心労であえなく他界。そして、残されたのは、84歳になる認知症(痴呆症)の父親(飯沼慧)ただ一人。男は失禁した父親をトイレに連れて行ったが・・・その後気が付くといつの間にか深夜。父親を探してトイレで見たものは、なんと父親の〈ぬけがら〉。そして脱皮したらしい父親は20歳若返り、元気そのもの。その後も、まるでセミのように脱皮を毎日繰り返し、父親はドンドン若返ってゆく。男は、若返る父親に戸惑いを感じるしかなかったが、若返るとともに知れる父親の過去を現前にして、今まで置き去りにしてきた父親との絆を今あらためて感じるのであった。
佃さんによる戯曲では「土管」などを拝読していたので、ずっと何かしら舞台作品を拝見したい!と念願していました。そこで出会った今回の作品ですので、もちろん期待を胸に劇場へ足を運びました。結果的に非常に素晴らしい作品に仕上がっており、2時間15分弱の少々長めの上演時間ながら、最後まで集中して大変面白く拝見できました。歴史ある新劇の劇団だから出来るキャスティングであり、そのポイントをしっかり生かしたユーモアがたくさん挿入される戯曲です。奇想天外な展開に驚かされたりしていましたが、最終的にはとても感動して涙が頬をつたいました。非常に軽快でたくさん笑いも散りばめられますが、終演後に残る余韻はとても深いものだったのが印象的です。これからの文学座の礎であり財産になっていく、そんな作品ではないでしょうか・・・?個人的に当日券で劇場へ駆け込んで拝見しましたが、もしまた上演される機会があるとすれば、その時は家族や友人など、幅広い世代の方々と一緒にこの作品に触れたいと思いました。紀伊国屋サザンシアターでの東京公演は終演してしまいましたが、兵庫と藤沢での公演はこれから行われるようです。きっと若い学生から年配の方まで楽しめる気がするので、ぜひ劇場へ足をお運びください。
★下記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。
特に全体的なクオリティが高いとは思えずに上演中は時が流れましたが、やはり中盤からはじっくりと作品自体に惹き込まれて行き、最終的には強い感動を心に覚えていました。父親がどんどん脱皮していき若返っていく・・・、というかなり奇想天外な物語です。オープニングとエンディング以外はすべて時系列順に進行していき、現在の平成から父親の青年時代にあたる昭和までを応酬します。父親の人格の変化などを通して日本が歩んできた歴史を知り、なおかつその経験を通すことにより、主人公が自分自身と見詰め合うキッカケにもなりました。全体の構成やテーマの巧妙さにも舌を巻きますが、一つ一つの台詞などにも共感や感動を覚え、微笑みながらも涙が零れます。特にハワイアン・ダンスを登場人物全員で踊ったりする場面は、その突飛な光景に驚きながらも、深く心に迫るものがありました。さて、今作は具象的に作り込まれた団地の一室という、主にワンシチュエーションで進行していきます。少し複雑かもしれない作品ですが、心配は無用でした。時間の経過などを表した文字を映写したり、カレンダーで面白可笑しく表現していて楽しかったです。
★上記のレポートには、ネタばれが含まれております。どうぞご注意ください。