「NYLON100℃『犬は鎖につなぐべからず−岸田國士一幕劇コレクション−』」
出演:松永玲子、みのすけ、村岡希美、長田奈麻、新谷真弓、安澤千草、廣川三憲、藤田秀世、植木夏十、大山鎬則、吉増裕士、杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗、緒川たまき、大河内浩、植本潤、松野有里巳、萩原聖人 ≪NYLON100℃ 30th SESSION/東京公演のみ≫
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脚本:岸田國士 潤色・構成・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 和装監修:豆千代 振付:井手茂太 舞台監督:福澤諭志+至福団 舞台美術:加藤ちか 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一(モックサウンド) 映像:上田大樹(iNSTANT WiFE) ヘアメイク:武井優子 大道具:C−COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 演出助手:山田美紀(至福団) 宣伝美術:坂村健次(C2デザイン) 宣伝写真:小木曽威夫 イラスト:フカザワテツヤ 宣伝ヘアメイク:山下まきえ/山本絵里子 舞台写真:引地信彦 制作助手:市川美紀、土井さや佳、寺地友子、松田美緒 制作:花澤理恵 企画・製作:(株)シリーウォーク チケット:¥6,000〜6,500
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2007年5月10日(木)〜 6月3日(日)/青山円形劇場/http://www.sillywalk.com/nylon/
NYLON100℃の最新公演は岸田國士の戯曲に挑戦する、という魅力的かつ期待が高まるプロダクションでした。同カンパニーの公演を青山円形劇場で観れるのも楽しみですし、なによりもKERAさんが岸田戯曲に挑戦するのが見所です。個人的には
雑誌の連載で本公演を取り上げました。

≪公演紹介−WEB「ナイロン100℃」より引用させて頂きました−≫
大正末期、日本で最初に近代的な台詞を書いた劇作家、岸田國士。ありふれた近所同士の会話や、力みのない夫婦のやりとり。短い日常語が繰り返されるその内容は、イプセンやチェーホフにインスパイアされながらも、独自のユーモア、そかはかとないエロス、じわりと広がるシニカルさといった、彼ならではの世界観を構築した。80年近く前に書かれた幾多の岸田戯曲を、ある時は原作に忠実だったり、またある時はちょっとそれどうなんだと言われるぐらい忠実じゃなかったりしながら、あくまでナイーブに、でも時としてひどく乱暴にコラージュし、ケラリーノ・サンドロヴィッチとナイロン100℃が21世紀に再生させる、これはもう、必見の試み。
日本の近代劇を初めて書いたと言われる岸田國士の一幕劇七本を、今作では一つの町内で起こった出来事として纏め上げていました。「犬は鎖につなぐべからず」、「隣の花」、「驟雨」、「ここに弟あり」、「屋上庭園」、「ぶらんこ」、「紙風船」という7本もの岸田戯曲に一度で触れられたのは、非常に大きな収穫となりました。でもKERAさんが潤色を手がけられていますし、演じるのはNYLON100℃の俳優さんが中心です。自然とナンセンスでシニカルな要素がプラスされ、また新しい岸田戯曲の一面を覗かせてくれように思いました。たわいもなく日常的な人間の姿を描き、特にたいした事件も起こりませんが、心に深く浸透して強い印象を残す岸田戯曲。こちらが意図を汲み取ろうと思わないと、なかなか分かることが出来ないような、とても意味深で味わい深い作品と言えるでしょう。まったく直接的ではないのですが、台詞や間を初めとした所作などからじんわりと、だけど切迫するように伝わるエロスにも酔いしれました。やっぱり傑作はいつになっても色褪せません。
さてさて、全体的には上演時間が休憩込みで3時間10分弱と言う長さですが、砕けて軽い印象で拝見できるエンターテイメントに仕上がっています。豆千代さんによるモダン和装を目を輝かせつつ拝見し、井手茂太さんによるコミカルな振付を楽しみました。円形劇場の特色を生かしたレトロでポップな舞台美術(加藤ちか)で、センスの良いとてもお洒落な岸田作品を楽しめます。でもシニカルでナンセンスな演技や要素を挿入することが、岸田戯曲の魅力を生かしているとは思えませんでした。この演出や構成のままでももっと上を目指せるのではないか、という印象が拭えないままで終演に至った気がしてしまいます。役者さんの演技も個性的なキャラクターが多かったですが、その個性に縛られている気がしてしまい、あまり率直に惹きこまれ辛かったのが正直なところでした。キャラクターの狙いや個性などを重視するのではなくて、いきいきと一瞬一瞬を舞台上で生きて頂きたかったです。とは言うものの、やはり貴重で価値のある公演だったのではないでしょうか。もし若い観客の方が岸田戯曲に興味をお持ちになったら、ぜひ新国立劇場の『屋上庭園/動員挿話』に足を運んでいただきたいと思います。こちらはかなり硬派で濃密な作品に仕上がっています。