「アラン・プラテル・バレエ団『聖母マリアの祈り vsprs』」
演出・構成:アラン・プラテル 音楽:モンテヴェルディ(原曲)、ファブリツィオ・カソル(編曲) 演奏:アカ・ムーン、アンサンブル・オルトレモンタノ、チャ・リンベルガー&ヴィルモシュ・チコシュ、他 出演:アラン・プラテル・バレエ団 ≪アラン・プラテルのポリフォニック・ダンス・シアター≫
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チケット(全席指定):11000円(S)、9500円(A)、7,000円(B)、5,000円(C)、3,000円(D) 日本国内ツアー:滋賀県立芸術劇場、テアトロジーリオショウワ、オーチャードホール
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2007年5月17日(木)〜20日(日)/オーチャードホール/http://www1.ocn.ne.jp/~ncc/
ベルギーから世界に作品を発信し続ける「アラン・プラテルバレエ団」は、「バレエ団」というカンパニーの肩書きとは対照的に、独自の世界観を持つコンテンポラリー・ダンスカンパニーです。アラン・プラテルさんが構成・演出を手がけた、『聖母マリアの祈り vsprs』の日本初演に伺いました。

バロック音楽の巨匠クラウディオ・モンテヴェルディによる、宗教音楽「聖母マリアの夕べの祈り」は、このようなジャンルでは非常に重要な位置をしめる作品です。今回はこの楽曲に着想を得たプラテルが原曲であるクラシックをはじめ、ロマの音楽やジャズを取り込んだ新しい形へと変貌させました。ソプラノ歌手1人と10人編成の楽団が舞台上に陣取り生演奏します。その舞台というのも非常に個性的。白いシャツがたくさん点在している広々とした舞台の後方には、これもまた大量の白いシャツで覆われた巨大なオブジェのようなセット。このオブジェにはダンサーが体当たりしたり、乗って踊ることが出来るスペースもあります。そんな舞台に登場してくるラフな軽装の男女10人のダンサーは、多国籍でほとんど一人ひとり国籍が違いました。世界中で注目されている今回の作品は2006年2月にパリ市立劇場で初演されて以来、「FIFAワールド・カップ2006公式文化芸術プログラム」に選ばれたため、2年にもわたって世界の国々を巡演し続けています。個人的にはチラシを観たときからこれは必見だと勝手に興奮していたものの、すっかりチケットを取り逃していたので、当日券で伺いました。それなりに空席があった模様でして、当日券も余裕で購入できたのが少し残念です。そうこうしている間に客席の電気が落ち、いよいよ開演のとき。世界へと発信される「ダンス・セラピー」の幕が開き、未だかつてない舞台芸術に出合えました。上演時間は休憩なしの1時間40分弱です。
さて、賛否両論が真っ二つに分かれた評判を耳にしていたので、開演前は不安と期待が入り混じった気持ちでした。そして開演した作品はこの賛否両論に深く納得する、非常に挑発的で斬新なステージに仕上がっていました。誰にでもオススメできる娯楽作品ではないと思いますし、拒絶反応してしまう人も少なからずいる気がします。でも、個人的には本当に素晴らしいと思わずには居られません。時に体が強張って緊張したり、時に不快感を感じたり、時に睡魔に襲われたり、時に笑ってしまったり、時に涙を流してしまったり。それらすべてを総合して非常に面白いと思えました。ただ、そういった挑発的な内容だということを抜きにしても、ダンサーの方々の驚異的すぎる身体表現と全体的なクオリティの高さだけでも、既にこの作品は必見の価値に値するのではないでしょうか。さて作品の核心に迫りますと、プラテルが影響を受けたのは宗教音楽だけではありません。精神医学者であるアートゥール・ヴァン・ゲフッテン博士が、障害者や精神病患者の行動を記録した短編映画に、強く触発された作品に仕上がっていました。終始ダンサーは静止する状態がなく痙攣を続け、カタコトの日本語で意味不明の言動を喋るダンサー、そして舞台全体を彩る新しい形のバロック・・・。振付はとにかくエキサイティングです。人間の体の可能性を感じずには居られず、目が点になったように舞台を見つめました。総合すると人生においての喜びも悲しみも希望も絶望も、なにもかもが混在していた作品だったように思います。多国籍のダンサーなのも効果的でしたし、なによりすべてが尖った突出したままだったのが良かったです。人間同士が一致すると言うことは難しいわけで、では何を目指したらいいかというと、それはきっと調和だと思いました。この作品では人と人とがぶつかり合うコミュニケーションが、調和と言う形になって表現されていたのです。日本公演は既に終了しましたが、ご興味をお持ちになった方はぜひ再来日を期待して待ちましょう!