「世田谷パブリックシアター『死のバリエーション』」
作:ヨン・フォッセ 翻訳:長島確 演出・照明:アントワーヌ・コーベ 美術・衣裳:イザベル・ルソー 音響:ヴァレリー・バイチャ 出演:長塚京三、高橋惠子、瀬川亮、伊勢佳世、笠木誠、杵鞭麻衣
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舞台監督:田中直明 美術補:土岐研一 照明デザインアシスタント:三谷恵子 照明オペ:西泰幸 音響オペ:遠藤憲 舞台監督助手:殿岡紗衣子 衣裳スーパーバイザー:阿部朱美 衣裳進行:森映 ヘアメイク:林みゆき(スタジオAD) プロダクションマネージャー:山本園子 通訳:堀内花子 宣伝美術:鳥井和昌 宣伝写真:野口博 イラストレーション:松尾たいこ 宣伝写真スタイリスト:遠藤百合子 宣伝写真ヘアメイク:今井純子 法務アドバイザー:福井健策 学芸:石井惠 営業:清水言一 広報:森直子 票券:金子久美子(ぷれいす) 制作:根本晴美、三上さおり 制作進行:相場未江、川辺美代 主催:財団法人せたがや文化財団 企画・制作:世田谷パブリックシアター チケット(全席指定):一般は6,000円、TSSS(学生若者割引)だと3,000円
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2007年5月11日(金)〜27日(日)/三軒茶屋・シアタートラム/http://setagaya-pt.jp/
世田谷パブリックシアターが新制作で取り上げたのは、ノルウェーの作家であるヨン・フォッセさんの戯曲「死のバリエーション」。そして演出を手がけるのは2004年の「見よ、飛行機の高く飛べるを」で強い印象を残した、フランスの演出家であり俳優のアントワーヌ・コーベさんという注目作。

≪Introduction−パンフレットより引用させて頂き、役者名を追加−≫
「娘」(杵鞭麻衣)の死を知らせに来た「年をとった女」(高橋惠子)と、それを聞く「年をとった男」(長塚京三)。2人は共に、「娘」の死を受け入れることが出来ない。「年をとった女」は、置き去りにされたやるせない思いを「年をとった男」にぶつける。「年をとった男」はなすすべもなく、ただそこにいる。思い出されるのは遠い過去。2人が若く、純粋さと希望にあふれていた、あの頃。「娘」を産み、育てた日々。愛らしく、優しい「娘」を記憶の中で慈しみ、その思い出に2人は確かな生を実感する。けれど、思い出の中でも「若い男」(瀬川亮)と「若い女」(伊勢佳世)の心は離れていく。「娘」もまた次第に心を閉ざし、架空の「友達」(笠木誠)だけと話すようになる。そして「娘」は、「友達」に導かれるように、夜の海へと歩み入る・・・・・・。
詩のような独白が連なって対話へと変化するような、非常にアーティスティックでポエティックな作品でした。あまりの静けさと研ぎ澄まされた空間に触れ、舞台芸術ならではの臨場感が味わえます。独特の洗練された美意識のある舞台美術や照明、音響、衣装、そして長塚京三さんや高橋惠子さんを初めとする、豪華キャストの皆さんによる存在にも魅せられました。1時間30分弱の間ほとんど会話で紡いでいく作品なので、やはり観客も集中力が少なからず必要かもしれません。しかし自ずと集中力が沸いてくるような、非常に素晴らしい作品だと思いました。真っ暗闇にじんわり浮かび上がる横に長い長方形の「闇」に包まれる舞台、そして壁を隔てた後方には照明で色彩が変化する真っ白い「光」のある空間。比較的天井の高いシアタートラムですが、意図的に低く使用しているのが鮮明に作用しています。登場人物の影さえも美しい渋い照明にも魅せられ、この空間に触れるだけでも幸せを強く感じました。じっくりと意味深い言葉を伝えてくれる役者さん、そして空間とのコラボレーションに感動を抑えきれません。淡々とした語りによって徐々に浮かびがある「娘」の死、この世の「生」と「死」。限りなく難解ではあるけれど、言葉や場面の応酬で胸に迫るものがきっとあるはず。演劇という俳優と観客のコミュニケーションを直に味わえ、終演後はじんわりと心に拡がる余韻を心から楽しめました。アントワーヌ・コーベさんの演出作品はやはり必見だと思います。多くの方々にこの作品と対面して頂きたい、という強い実感を胸にする自分に気づきました。