作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 音楽:宇崎竜童 出演:古田新太、田中裕子、段田安則、六平直政、梅沢昌代、山本龍二、神保共子、松田洋治、景山仁美、壤晴彦 ギター演奏:赤崎郁洋
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美術:中越司 照明:原田保 衣裳:前田文子 音響:井上正弘 ファイトコレオグラファー:國井正廣 振付:花柳錦之輔 音楽助手:池上知嘉子 演出助手:井上尊晶、石丸さち子 舞台監督:小林清隆 主催・企画・製作:ホリプロ、Bunkamura チケット(全席指定):9,000円〜3,000円
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2007年5月8日(火)〜31日(木)/シアターコクーン/http://www.bunkamura.co.jp/
1973年にパルコ劇場のこけら落としとして初演された『藪原検校』は、井上ひさしさんが書かれた長編の戯曲として世界でも好評を博した作品です。今回は主役を古田新太さんが演じられ、演出を蜷川幸雄が手がけられる話題作でした。立見も満員で盛況なシアターコクーンに足を運びました。

≪あらすじ−WEB「Bunkamura」より引用させて頂きました−≫
時は今から二百年ほど遡る江戸中期の享保、塩釜の地。小悪党の魚売り七兵衛は、醜女だが無類に気立てのよいお志保を嫁にもらい一旦は改心するが、女房のお産の金欲しさに行きずりの座頭を殺して金を奪う。が、生まれてきた男の子は盲だった。「座頭をひとり減らしてまたひとり殖やしただけだ」とめぐる因果の恐ろしさに、七兵衛は自害する。生まれた子は、塩釜座頭・琴の市に預けられ杉の市という名前をもらう。手癖が悪く手が早い杉の市は、十三で女を知り、師匠の女房のお市にまで手をつける始末。ある日、難癖をつけて金を巻き上げようとする佐久間検校と言い争ううち、検校の結解(けっけ=目明きの秘書のこと)を刺してしまう。別れを告げに寄った母の家で、誤って母を刺し、駆け落ちしようとお市と共謀して師匠琴の市を殺すが、お市は瀕死の琴の市の返り討ちにあう。一人になった杉の市は師匠から盗んだ金を携えて江戸に向かい、門下生になるために学者・塙保己市の元を訪れる。晴眼者以上に品性を磨くことを目指す塙保己市が、万事が金と考える杉の市を弟子にするわけもない。その後、藪原検校に弟子入りし、貸し金の取立てで見る間に頭角をあらわす杉の市。そして二度目の主殺しをし、念願だった二代目藪原検校の襲名披露の日、彼の前に立ちふさがる影が・・・・・・・・・。
稀代の大悪党・藪原検校の生い立ちからその終結までを描く、休憩ありの3時間10分強に及ぶ長丁場の演劇作品に仕上がっています。場面を重ねるごとに次々と昇進していく杉の市を古田新太さんが演じ、総勢十人の役者さんが次々と何役も演じ分けていくのが見所の一つ。ストーリー自体は非常に残酷で悲惨な内容なのですが、ユーモアのセンスがある役者さんが揃っていたため、深刻になりすぎず軽快さも持ち合わせていました。しかし魅せる場面はしっかり魅せていただき、そこはやはり役者さんの腕の見せ所でしょう。舞台は薄汚れた多数の戸板によって三方向が塞がれ、閉塞感溢れる抽象的な空間にコクーンが変貌しています。そして舞台には何本もの縄が横切っているのが特徴的で、目の見えない座頭が登場人物の作品では非常に効果的でした。そんな舞台上に黒子によって次々と小道具が運ばれたり、豪華な照明によって場面転換を行っていきます。それに加えて今作では、「音楽劇」のスタイルを採用していました。赤崎郁洋さんによる舞台上でのギターの生演奏にのり、たくさんの歌が随所に散りばめられる構成です。やはり初期の井上さんの作品と言うこともあり、日本語を生かした言葉遊びの台詞に惹かれました。でもあからさまに卑猥だったり猥雑な要素が多いのも確かで、その要素は今作でも然りだったようです。そういった場面をどう成立させるかは難しいと思うので、そのあたりはプロダクションによって変化がありそうです。全体を応酬してみると、戯曲自体のト書きなどを忠実に追っていき、比較的オーソドックスな仕上がりだったように思いました。しかし、もう少しパンチ力のような大胆さや奇抜さがあったとしても、きっと成立しうるような戯曲や作品ではないでしょうか。まだまだ可能性が広がるような要素が多々あったように感じましたので、また違ったアプローチの演出にも触れてみたいと思いました。そして随所に散りばめられた歌につきましても、一つひとつをじっくりと長く聞かせる趣向が施されたため、舞台全体が低迷していた印象は否めない気がします。個人的には座席が舞台に近かったこともあって臨場感も楽しむことができ、最後までじっくりと藪原検校の激動の行く末を見届けられました。