作:土田英生(MONO) 演出:宮田慶子 出演:那須佐代子、小林正寛、五十嵐明、若林久弥、遠藤好、片岡富枝、森脇由紀、田中耕二、川上英四郎 ≪劇団青年座第189回公演≫
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装置:島次郎 照明:中川隆一 音響:高橋巖 衣裳:加納豊美 舞台監督:安藤太一 製作:森正敏 全席指定:2,500円〜5,000円(中高学生から専門学生、高齢者など各種割引あり)
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2007年6月16日(土)〜24日(日)/新宿・紀伊國屋ホール/http://www.seinenza.com/
MONOの土田英生さんが青年座のために書き下ろした「悔しい女」は、2001年に本多劇場で宮田慶子さんの演出、高畑淳子さんの主演で初演されました。この初演では読売演劇大賞・最優秀演出家賞などの演劇賞を受賞。今回は脚本と演出はそのままに、キャストを一新した公演でした。

≪あらすじ−WEB「青年座」より引用させて頂き、句読点挿入≫
日本のどこか・・・のどかな田舎。あるのは動物園を持つエネルギー研究所(通称エネ研)と、「おやじゼミ」が棲息するという森。そんな地方の町の喫茶店。近所に住む絵本作家高田悟はその店に足繁く通う一人。そんな彼のもとへ、美人で明るい笠原優子が嫁いでくる。「お互いこれで最後にしよう」。高田二度目、優子四度目の結婚生活が始まる。誰にもある普通の生活、夫と妻、店に集う顔見知りの人たちとの他愛の無いおしゃべり、昔ばなしに噂ばなし。しかしそこに見え隠れする虚実のないまぜの会話に、反応し、突き詰めていく優子。不倫の匂い、エネ研、「おやじゼミ」・・・・・・。ちょっとした言葉の食い違いに、高田と優子の間に小波がたつ。やがてそれは喫茶店に集う人たちをも巻き込んで波紋を拡げていく。
土田さんによる味わい深く面白い脚本を、宮田さんが丁寧に演出されたことを実感できる、チームワークやアンサンブルの非常に良いプロダクションでした。
上演時間は昼公演が10分間の休憩を含む2時間20分弱、夜公演が休憩を含めない2時間10分弱です。主役の優子役を高畑淳子さんから那須佐代子さんにバトンタッチされていますし、キャスティングが全体的に変更されていることを踏まえても、初演とはまた違った味わいがあったようですね。笑いがたくさん散りばめられていて、客席もとても暖かい雰囲気でしたが、それと同時に迫る鋭くドキリとさせる眼差しがありました。笑ってしまうのに悲しくて、悲しいのに笑ってしまう。そんな良い意味で複雑な思いを楽しみつつ、最後まで軽快かつ楽しく拝見できました。
作品のタイトル「悔しい女」のとおり、劇中でも何度か本気で「悔しい!」と、感情を露にする優子(那須佐代子)。なぜ悔しいのかが次第に分かるようになり、その悪循環な構造に思わず苦笑いしつつ、痛いほど身に摘まされた気がしました。
そして一人ひとりの登場人物を見つめる自分の視点が、いつしか移り変わっているような構造にも舌を巻きます。良い人かと思いきや実は腹黒く嫌味や人だったり、逆に悪い人だと思っていた人が良い人だったり、はたまた中立派な立場の人だったり。観客が舞台から得る情報が増えるほど、更に人物や物の見方に最初より相違がみられてくるので、人間関係の縮図がとても面白かったです。MONO公演や土田さんの作品で味わえる、独特の感覚とも言えると思いました。
舞台セットは暖かな木造の喫茶店が具象的に作り込まれていて、木々が見える窓から入る自然光の表現をはじめ、非常に雄弁さを持って作品全体を支えている舞台美術(島次郎)と照明(中川隆一)でした。セットは客席に向かって若干傾斜しているので見やすく、木の温かみや質感が客席まで伝わってきました。時間の移り変わりもつぶさに感じられました。