補綴:木ノ下裕一 演出・美術:杉原邦生 出演:諸江翔大朗、田中章義、山村麻由美、長尾晶子、加藤洋朗、鈴木健太郎、殿井歩、岩井千枝、池戸宣人、中本章太、茂山良暢、磯和武明

照明:川島玲子 音響:渡部綾子、清水剛司 衣裳:山本容子 小道具:木岡菜津貴 美術製作:穐月萌、濱地真実 舞台補助:工藤花之助、小松優介 演出助手:和田ながら 舞台監督:小島聡太 制作:木村悠介、土屋和歌子、林里恵 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 企画制作:木ノ下歌舞伎/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 ¥2,000〜2,500

07年8月17日(金)〜19日(日)/こまばアゴラ劇場/http://kinoshita-kabuki.org/
木ノ下裕一さんが主宰を手がけられる「木ノ下歌舞伎」は、現行の形に囚われない新たな切り口で歌舞伎の演目を上演する、そんなアプローチを試みる京都を拠点に活動する集団です。
今回の作品は『東海道四谷怪談』から最も有名場2場を抜粋しての、杉原邦生さんが演出・美術を手がけられる「yotsuya−kaidan」。追加公演が出るのほどの盛況ぶりでした。

舞台前方に設けられた奥行きが2メートルほどのスペース、その背後にはグレーの布地に汚しが入った緞帳が吊下がっています。そんな緞帳を上下に開閉することにより、登場人物が木製の台車に座って登場します。役者さんの演技スペースはその台車の上のみで、その姿はまるで落語家のよう。正面を向いたまま演技をしていく、大胆で出色したスタイルの作品でした。上演時間は1時間30分強。
役者さんの喋り言葉は古風で歌舞伎の言い回しに近いものですが、衣装は現代の若者そのものであり、演技もその容姿に沿っていたような印象を持ちます。黒子が小道具を動かしたり、赤ん坊の声をラジカセから流したり、舞台上で物事をヘルプしていきます。
台車の上に乗ったまま可動されていく登場人物の姿は、悲劇的な結末へと引っ張られていくようで、怖いほどの疾走感が生まれていたと思います。ただ、役者さんの力量が大きく問われるであろう演出でもあり、そういった意味で満足の良く仕上がりにはまだ少し遠い気がしました。
それでも飛躍の可能性は大きく実感することが出来ました。アイディアはどれも面白いと思いましたし、情熱さと冷静さが同居する空間構成が痛快です。良い意味で尖っていてキレている印象があり、古典的な歌舞伎を新たな方法で体現させているのは、非常にカッコ良かったです。
火の玉を電球で表現していたり、巨大なネズミの人形が舞台頭上から振ってきたり、鮮やかに舞台を演出する照明効果は残像が残るようでした。ロックのような現代的な選曲も作品全体に主張しつつマッチしていて、今までの喧騒とのギャップが素晴らしい、ラストシーンの静寂も印象的。
2006年、杉原邦生と木ノ下裕一という志向の異なる演出家が、鶴屋南北の『東海道四谷怪談』から「雑司が谷四ツ谷町浪宅の場」「同伊藤喜兵衛内の場」を抜粋し、2つの新しい「四谷怪談」を作り上げました。<髪梳きの場>として名高いこの場は、お岩の顔が醜く変わり頭髪が抜け落ちるシーンを含む、同作中でも最も有名な場の一つです。今回は、荒廃した定式幕がめくり上げられ俳優が押し出されてくるという空間構造で、現代社会の見えない<チカラ>をユーモラスに描き出した『yotsuya−kaidan』を再演します。京都で生まれた舞台芸術の新たな動き、お見逃しなく!−−−−−WEB「木ノ下歌舞伎」より