風立ちぬ  新作レビュー

この映画、いろいろ言われてます。

賛否両論・・・でも、物語の説明不足を挙げて批判するのは、「映画」という媒体に対する批判としては、そもそもどうかなあ、という想いがあります。

「映画」は、アニメであろうと実写であろうと、2時間ていどの時間の中で、映像と音を組み合わせて、大きなスクリーンで有料の観客に向けた媒体であります。

有料である以上、そこに表現の規制はなく、作り手(監督)の作家性が発揮されるべき媒体であり、大スクリーンで感じてもらうための感性を観客に向けて問いかける芸術でもあるので、観客もまた、そこに込められた感性を自ら感じていくのが、映画だと僕は思うのです。

ですから、そこに込められた「間」や行間が「映画」にあるのは優れた「映画」であるなら当たり前であり、だけれどもそんな「間」があってもダメダメな映画があるのもまた事実で、そこがまた「映画」の面白いところだと思うのです。

最近、何でもセリフで説明して、やたらカット割が細かい映画(とくに日本映画)が多く、それも監督だけでなく、いろいろな人の意見が入って無難な映画づくりに終始している作品が多いので、観客もそんなのに慣れている感はあります。

もちろん、いつも言っていることですが、そういう「映画」の中にも、面白いものもいいものもありますが、正直、ダメダメなものも多くある、と思います。

で、この映画ですが、はっきり言って、この映画は宮崎監督のプライベートフィルムです。

ものづくりに没頭している人の、純粋さを描いた映画であり、その純粋さを表現するための飛行機であり、恋愛であるので、主人公の姿は、正に宮崎監督そのものだと思います。そのの分、映画自体もこだわりの固まりで、くどいぐらい出てくる飛行シーンをはじめ、絵のクオリティは物凄く、これまでのジプリ作品の中でも最高と言っていいでしょう。

冒頭の飛行シーンと、地震のシーンだけでも観る価値はあります。これは、劇場のスクリーンと音響で是非、あじわってほしいものです。

戦争メカ好きなのに戦争反対者、という宮崎監督そのものの姿、苦悩がこの映画にはちりばめられています。肝心なところが「夢」で語られているのも、アニメづくりに夢をかけてきた宮崎監督の想いが現われているようです。

時代の流れに様々なことは感じていても、その想いを、ものづくりと1人の人を愛することに費やしていく・・・そこに説明がないので、これはその「間」を感じていくしかありません。ただし、その「間」が面白いかどうか、感動できるかどうか、そこは人によって分かれるでしょう。僕は正直、好きです。


そもそも、宮崎駿監督は、「もののけ姫」の成功をもって、物語を映画で「語る」ことを辞めたように思います。もともと、ストーリーテリングには天才的な監督さんなので、最近の映画に対して批判的な声があるのも正直、分かります。「未来少年コナン」や「ルパン三世 カリオストロの城」のストーリーテリングは、正直物凄いものがありますから。

これは、晩年の黒澤監督にも言えます。黒澤監督も、製作環境は正直、大変でしたが、晩年は感性のみで作っていたように思います。いつまでも黒澤監督に「七人の侍」と同じような作品を、というのはファンのわがままのような気がしますが、それも正直な気持ちなのかもしれません。

黒澤監督とは少し違うと思いますが、宮崎監督が「物語」を語らなくなったのは、物語を描かず、自分の感性をそのまま表現しても、興行的な失敗になることはまずあり得ない状況になったこと、が大きいと思います。

宮崎監督は、物語を語らなくても自分の好きな世界を豊富な製作費を使って自由に表現できる、数少ない映像作家のひとりだと思いますが、そういう意味でも今回は文字通り「最後」の長編でもあり、そういう意味で、これまで以上に自らの気持ちを思い切り作品づくりにぶつけたのかもしれません。

そういう意味では、無心で純粋にものづくりに没頭する主人公は、宮崎監督の分身でなければなりませんから、当然、声優は「演じる」プロの俳優さんや声優さんではダメな訳で、庵野監督ということになるのでしょう。これはいろいろな意見があると思いますが、僕はよかったと思います。

観終わったあとの何とも言えない余韻とともに、点数は80点です。
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