電車に乗っていたら、ドアの近くになんだか見知った顔の人が立っていた。
「あ、Kさんだ」。
Kさんは、とあるモンスターTV番組の、陰の立て役者。一般的な知名度はともかく、業界では知らない人はいないという存在である。
思わず、声を掛けてしまった。
いつもなら決してしないことだ。東京にいると、有名人とすれ違うことは珍しくも何ともないし、彼らにだってプライベートがある。
しかし、Kさんの場合、状況は少し違っていた。
Kさんは、おれの旧知の友人と懇意にしており、彼からKさんについては何度か話を聞いていたのだ。
何となく、知らない間柄では無いような気がしてしまった。いや無論カン違いなのだが。
事情を話すと、Kさんは
「へぇっ! 世間は狭いなぁ!」
と嘆じた。そこでおれは、
「いや、Kさんの顔が広いんですよ」
と返した。
でも、聞こえていたかどうかは判らない。
だってKさん、通る声が良く響くんだもの。気圧されちまって、ボソボソとしか話せなかったからさ。
顔が広い人は声もデカいらしい。なるほど、皆に聞こえるようにするためには、自ずとそうなるか。

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投稿者: Francois Quevouxquien
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