小原弁護士と別れ、自分は搭乗ゲートに向かった。
外はまだ、雪が降り続いていた。
これで本当に飛べるのだろうか。
前を向いて歩く私の前方に、懐かしい顔が見えた。
和久さん、恩田刑事、真下警視、それに先日結婚したばかりの柏木…いや、今は真下雪乃くんだったか。
私は彼らの前で立ち止まり、軽く会釈をした。
皆、何も言わなかった。
しかし、瞳が暖かかった。
(行ってらっしゃい。)
そう無言で言われているようだった。
「俺はアンタが無実だったって信じてたぜ。」
和久さんが口を開いた。
「あたしだって分かってたわよー。室井さんにそんなことが出来るわけないってね。」
恩田くんがにやっと笑った。
「あ、室井さん、向こう行っても頑張ってくださいね。」
「ああ、君もな。」
「はい。」
真下くんは仕事の方はやっと軌道に乗ったのだろうか。
私は自分の事件のために、それを知ることも出来なかったが。
「仲良くやってるのか。」
「はい、そりゃもう、いつでも子供生まれるように毎日っ。」
・・・私は何もそこまで聞いていないんだが・・・。
「やだもう!真下さんたら!!」
柏木…あ、いや、真下雪乃くんが真っ赤になって真下くんをいさめた。真下くんは自分の細君から「真下さん」と呼ばれることに違和感は感じないのだろうか・・・
しかし、あの男がいない。
何かが足りないような、そんな気がする。
「青島は・・・」
私は無意識に口に出していた。
「あいつは来ねぇよ。仕事だって行っちまった。」
和久さんが苦笑して言った。
「室井さんのこと信じてるって。帰ってきて実力で上行って変えてくれるって。だから、信じて待ってるって。」
恩田くんが寒そうにコートのポケットに手を突っ込んで、肩をすくめた。
体を私の方に乗り出して言う。
「青島くんの伝言。」
・・・・・・。
私は返す言葉が見つからない。
「確かに伝えたから。」
目頭が熱くなった。
湾岸署の彼らとは本当にいろいろなことがあった。
そして、私に信念を、そして勇気をくれたあの男。
『青島俊作』
私は今更ながらに、彼の信念の強さに感嘆させられた。
今頃どこを駆け回っているのか・・・
フッと笑みがこぼれた。
・・・まったく・・・かだっぱりこいで・・・
「ああ〜僕、室井さんの笑った顔初めて見ました!」
真下くんが素っ頓狂な声を出した。
「ちょっと!失礼よ!真下さん!」
早速尻に敷かれてるのか、雪乃くんにグイと腕を引っ張られていた。
『羽田発広島行きご搭乗のお客様はご出発のお時間が迫っております。ご搭乗のお手続きを・・・』
私の乗る便の搭乗案内アナウンスが響き渡る。
私は皆に会釈をし、「お元気で」と、その場を後にした。
エスカレーターを上り、搭乗ゲートに向かおうとしたとき、モスグリーンの色が目に入った。
視線が合った。
・・・青島・・・
彼は敬礼した。
私も敬礼を返した。
私は敬礼をしながら不敵に微笑んだ。
青島も、挑戦的に笑みを返した。
私は約束した。
『警察を変える』と。
青島と。
それはどこに行っても変わらない。
見てろよ青島。
「絶対上に行ってやる。」
私は一人口ずさんだ。
そして、搭乗ゲートに向かって歩き出した。

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