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2010/12/21

タカハシの非毒非薬  エッセイ


 どこで見た知識だったか、ご近所トラブルの第一位は「騒音」なのだそうだ。まあ、音は真正面にドアから入って来る訳でも無いので、百パーセントの防音なんて出来ようも無いし、音を拾う側の人間が過敏すぎるということも時々あるけれど、自分のプライベートな空間には、たとえ音であっても無断で侵入することは許されない、少なくとも良い気持はしない、というのが大多数の意見だろう。
 誰だって、自分の好きな音を好きな時に好きなように聴きたい。雨の音を聞いて心を静めている時に、横から大音量でヘビーメタルを叫ばれたくない。そうやって日常に喰い込む隣人のちょっとした生活音や、車の音、話し声は、積もり積もって時に犯罪の動機になることさえある。怖いなあ。
 騒音を発している当人は、自分の出している音が騒音であることに大抵の場合気づいていないから、例えばある日突然、隣人がショットガンを片手に乗り込んできて、そこで初めて自分の行いを自覚させられる、という可能性もあるのだ。気を付けないといけない。けれどトラブルを回避しようとするあまりに、梟の如く音を立てずに生活するというのも、また、されるのも、それはそれで面白くない。
 その境界を見極めることは、穏やかに生活していこうと思うのなら、面倒だけれどやっておいて損は無いと思う。具体的にどうしろというのかと問われればちょっと答えに詰まるけれど、とりあえず、身の回りで一体どんな種類の音が「騒音」と捉えられているのか、自分は何を五月蝿いと感じるのか、あえて耳を澄ましてみるのも悪くない。そうやって拾った雑音の中には時々、思ってもみないような面白い音も混じるのだ。

 一月程前、僕の住むアパートの近くで、夜中にミスターチルドレンの歌を大声で歌っている青年がいた。姿は見ていないが声を聞いた感じでは、おそらく高校生くらいのハイティーンで、きっと夜中に自室に籠り、人知れず歌の練習をしているのだろう。僕もやったことがあるから気持ちは解る。
 しかし、それにしたって下手なのだ。いや、下手だから練習しているのであろうが、本当に、布団に入っていてもバッと起き上がって思わずベランダに飛び出て声の出所を探ってしまうくらいに下手なのだ。
 彼は毎晩飽きもせずに同じ歌を歌い、そしてサビを繰り返し練習する。僕も、そして同じアパートに住む人々もいい加減うんざりしてきたであろうある日のこと、青年はサビを歌っている最中に突然「えっ?」と謎の声をあげて、以降何の音もしなくなった。
 その日以来、青年は歌っていない。
 ああもう、青年の身に何が起こったのかが気になって仕方が無い。騒音は無くなったけれど、そんな終わり方って無いぞ。


 
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2010/12/21  23:16

投稿者:アーカム

下手な怪談よりも ぞくっ とする話ですね。何がおきたかわからないところが想像力をくすぐります。


私もよくアパートで歌うので、ひょっとするとそのうち……

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