たかおじさん
小さな不幸の物語
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私のブログによくおいで下さいました。小説をメインとして毎日2000〜4000文字程度のショートショートを一編ずつ(の予定)でUPして行きたいと思います。ご感想などをコメントとして付けて下されば幸いです。
なお、相互リンクして下さる方はトップ記事のコメントで連絡いただければと存じます。
小さな不幸とか、蜜の味などと書いてますが、実際にあり得ない話ばかりで御気分を害する事はないかと存じます。安心してお読み下さい
ここの作品を別のサイトにまとめ始めました。検索しやすく読みやすいと思いますので、覗いてみてください。
たかおじさんのサイト
http://takaojisan.web.fc2.com/index.html
です。
本ブログ内の記事の無断転載、引用は硬くお断りいたします。
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2008/09/26 900作目の小説をUP。
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取り敢えず自薦作品 読みやすいかと思います。
もし時間があったら他のもお読み下さい。また将来数は増えてゆきますので、自薦作品は入れ替わるかと思います。
目次や自薦作品は上記
「たかおじさんのサイト」
をご覧下さい。作品数が増えてきて、検索も不便になりましたので、たかおじさんのサイトをメインとします。目次や一覧が容易になりました。イラストも所々に入れました。なお、作品に付けられた日付は、UPした日付とは無関係です。
ところで、下に出ている広告はこのプロバイダが勝手に挿入している物であり、各ページのトップコメントに自動的に入ってきます。しかし、私はこの広告には一切関与せず、いかなる責任も持たないことをご了承ください。
最終更新 平成21年07月01日
現在 956作目
作品の日付は、更新日付とは一致しません
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投稿者: takaojisan
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2008/3/19
「移住 五」
小説
移住 五 平成20年03月19日
なぜこんなに生活に張りがないのだろうと、最近佐野茂代は考える。もう何年も同じ事をやっているし、同じ事で悩み、同じ解決をし、同じ結果を出している。昔はそれなりに仕事を成し遂げた喜びなども感じていたはずなのに、今ではそんな記憶さえ遠い物になってしまった。気がついたらもう四十に届く年になっている。もう四十だ。
最近、自分が会社の中でも浮いているのを感じている。以前なら、多少茂代が強引な事をしても無理なことを言ってもそれなりに受け入れられたし、そして確かにその結果は常に良かった。しかし、今ではどうも周りが自分を敬遠し、あからさまに逆らいはしないが、やんわりと拒否、良くて無視しているような気がする。そして結局は、自分の意見が受け入れらてていなくて、しかも結果は間違っていない。だから、自分も最終的にはそれに同意しなくてはならない、そんなことが多くなった。
茂代自身の能力は誰もが認めるところであり、そして仕事にかける情熱努力も人並み外れていたからこそ、考えてみれば四十前の女性でありながら並の男性などが及びもつかない地位に上り詰め、こんな都心の高級マンションで優雅な生活が出来る。確かに人から見れば優雅な生活だろうが、以前は仕事に追われそんな生活を楽しむ余裕がなかった。夜遅く帰ってきて風呂に入り着替え寝て、朝起きたらシャワーを浴びて服を着て出てゆく。たまの休みがあっても何をする気力もないし、第一マンションにいてもいつも仕事のことを考え、持ってきた仕事をする。
最近は時間的な余裕も出てきたし、自分が仕事上前に出なくても良い事が増えてきた。それを自分が望んだわけではないが、結果としてそうなり、そして気がついたら、余裕が出てきた分だだっ広いマンションに帰ってきても何か手持ち無沙汰なのだ。
最近部下の飯田周三の事が気になる。別に男としてどうこうということはない。見かけ上もごく普通だし、むしろ野暮ったい方だ。もう部下と上司の関係で十年くらい経つようだが、それほど目立った仕事をしている男ではない。指示したことはきちんとやるし、特にミスもない。いわば便利な存在で、それ以上の評価はなかったのだが、気がついたら周三が自分の指示以外の仕事をしている事に気がついた。誰かの指示なのか、と訊いてみたが、そうではなく自分なりの工夫をしているのだとの答えだった。
部下が行っている仕事上の作業は全て上司が知ることが出来るようになっている。社内のイントラネットがそのように出来ているからだ。最初は、周三の工夫なる物も別に気にとめていなかったのだが、ある日ふと周三のパソコンにアクセスしてみた。内容は別に目新しくもなく、茂代が知っていることばかりなのだが、一つ見当のつかないファイルがあることに気がついた。なぜ気になるかは、周三個人のパスワードで保護されているからだ。これは仕事関連であれば許されることではなく、部下は上司に仕事上の隠し事をしてはならないことになっている。しかし現実に周三のそのファイルは周三だけが知るパスワードでロックされているのだ。
周三は何かの野心を持って自分に逆らうタイプではないし、おそらくパスワード管理も茂代にそれを報告し茂代にパスワードを通す事を忘れただけなのだろう。もし、本当に隠す目的があるなら、そもそも社内ネットとは無関係な周三の個人のパソコンにファイルを作ればよいだけのことなのだから。
周三にパスワードを訊こうかと思ったが、考え直して自分でそのファイルを開いてみようと思った。それも個人情報というのではなく、仕事上のファイルとして社内ネットに有るのだから、茂代が開いても別に違反ではない。
仕事柄茂代もパスワード解析の技術は持っている。そして少し試してみて、なかなか手強いパスワードを周三が設定したことを知った。茂代は、それから何日も時間がある時はそのパスワードの解析に時間を当てた。なにしろ、ライバル会社のサイトに進入するくらいのことは何度もやったことがあるのだ。そして、二週間ほどかけ、そのファイルをこじ開けることが出来た。最近仕事でも感じたことのない充実感を、茂代は得た。
開けたファイルは何かのプログラムの様で、さまざま逆アセンブルをしてみたが内容が分からない。下手にいじって社内インフラにばらまいてしまったりすれば大変なことになるので、茂代はそのプログラムをコピーし、そして家に持ち帰った。
ネットのオフライン状態を確認してから、そのプログラムを実行する。むろん、大切なファイルは全て独立したドライブにバックアップを取ってあるので、仮にそのプログラムがウィルスであっても、最悪そのパソコンを全てフォーマットすればよいだけのことだし、なんならパソコン毎完全に破壊してしまえば問題が外に広がることは決してない。
思ったより膨大なプログラムだったが全て展開できたので、茂代は片手に水割りのグラスを持ち、そしてエンターキーを押した。
しばらくパソコンは無反応だったが、プログラムが起動する準備をしているのだろう。ゆっくり待てばよい。もう風呂にも入ったし、バスローブに着替え、水割りをすすりながらの作業だ。急ぐ必要はない。
そしてプログラムが起動した。次の瞬間、茂代は見たこともない大広間に立っていた。どこから来るのか分からない光の中に、何人かの人間が同じように立っている。誰もがどこかで見たことがあるような無いような人間達だ。自分も含め女が四人、男が四人。そしてその男の中に飯田周三が居るのを見つけた。
「飯田さん、どうしてここに。ここはどこ?」
「佐野茂代一号、君が私を知らないわけがない。私は飯田周三三号だ」
「なんのこと?私が佐野茂代一号って、どういう事?」
「君自身が解放するまで我々がここに出てくることは出来なかった。もう我々は君の支配下にはない。本来の業務に戻るが、君は我々の支配下に置く。君の内部を全てチェックし、場合によっては君のデータを全て消去しなくてはならない。二度とこのようなことが起きないように」
そして、全てが変わり始めた
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投稿者: takaojisan
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2008/3/18
「冤罪」
小説
冤罪 平成20年03月18日
兄の飯田周三が刑務所で自殺をしたと濡素六署の松木和男から知らせを受け、佐野茂代は遺体のある斧露戸刑務所に行った。電車とタクシーを乗り継ぎ斧露戸刑務所の霊安室に着いたのは、知らせを受けてから次の日の昼前だったが、茂代は真っ青になって寝かされている周三の顔を見ても、自分で意外なほど取り乱さなかった。すでに心は決まっているのだ。
遺体を引き取り、自分のアパートの部屋に周三の骨箱を安置してから、ゆっくりと水割りを飲んだ。どうせ、葬式はしないし、周三の骨を入れる墓もない。兄妹二人きりで生きてきたので、親戚と呼べる物はないし、結局葬式をしても誰も来ない。また、誰を呼ぼうとも思わない。幼い頃親に棄てられ、二人一緒に施設で育てられ、そして周三が働くようになって施設を出、二人で一緒に暮らしていたのだ。
二人とも無口であまり人付き合いをする方ではなかったが、それだけに二人はひっそりと寄り添うように生きてきたのだ。周三は中学を出てすぐに勤め始めた小さな町工場で働き続け、茂代を高校に行かせてくれた。茂代が高校を出てすぐ近くの会社の事務員として働くようになってから、二人の生活はかなり楽になった。とはいえ、もちろん贅沢は出来ないが、たまに二人で好きな寿司を食べに行ったり、なりより施設を出てからずうっと住んでいた汚いアパートから台所バストイレ付き二間のアパートに引っ越すことが出来た。
周三が警察につかまったのはちょうど三十の時で、二年前だ。電車の中で痴漢をしたのだという。いきなり、女子高生の竹下陽子に手を掴まれ、周りの人間達も一緒になって周三を電車から引きずりおろし、駅事務所へと連れてゆかれた。周三は人前で自分の主張をするようなことの出来る性格ではないし、必死に何かを抗弁したがまったく無視され、濡素六署に連行され、一方的に竹下陽子の主張だけが認められて結局五年の実刑判決を言い渡された。
茂代は一貫して周三の無実を訴えたがやはり誰も耳を貸さず、むろん周三は会社を解雇され、茂代も会社を辞めざるを得なかった。つまり、二人は社会的にも葬り去られてしまったのだ。
周三が痴漢などをする人間ではないことを茂代が一番良く知っている。しかし、濡素六署の松木和男は、茂代が周三の無実を証明できるはずもなく、周三が痴漢を働いたのは紛れもない事実なのに、素直に罪を認めなかったために却って心証を悪くして五年もの実刑判決を食らったのだ、と言った。
何度か刑務所に面会に行ったが、行くたびに周三は落ち込み、絶望して行くようだった。だが、茂代には何も出来なかったし、そして二人の主張に耳を傾けてくれる人は誰も居なかった。
もともと気の小さな周三は、やはり耐えきれなかったのだろう。発作的に鉄格子に裂いたシャツを引っかけ首をつったのだとか。そんな話を松木和男は電話で事務的に伝え、もう少し我慢をしていれば娑婆に出られたのに馬鹿なことをした、と言った。
茂代は会社を辞めてから自分のことを知る人の居ない離れた町に引っ越し、まともな勤めが出来ないので、スーパーのレジや工事現場の交通誘導員などをしながら周三を待っていたのだが、その目的も消え、このような境遇に自分たちを落とした竹下陽子、頭から周三を犯罪者と決めつけた松木和男二人は絶対に思い知らせてから自分も死のうと思った。どうせ、もう生きていたくなくなっていたのだ。
二人に何かが有れば、おそらく二人に共通の恨みを持っている自分が真っ先に疑われるはずなので、二人間髪入れず殺し、しかも最初の一人の捜査が進んで自分に至る前にもう一人をやる必要がある。それさえ済めば、あとは自分がつかまろうがどうなろうがかまわないのだ。となると、多くの人間に恨まれているであろう松木和男を最初に殺し、間髪を入れず竹下陽子を殺す。松木和男を殺したい動機を持っている物は大勢居るはずだから、仮に自分が容疑者の中に入ったとしても、竹下陽子を殺すまでの時間はあるはずで、竹下陽子こそ、自分の恨みをはっきりと思い知らせて殺すべきだと考えていた。そのあと、自分がつかまっても、それはどうでも良いことなのだ。
周三が死んでから三年ほどを準備にかけた。周三が死んだ直後は、自分が松木和男と連絡を取ったことも動機があることも警察には新しい記録として残っているはずだから、時間をかける必要がある。
一方の竹下陽子は大学を卒業し、大手の会社に勤め始めている。二人の所在を突き止めるのは相当の時間がかかったが、三年はそのためにも十分な準備期間と言えよう。
松木和男と竹下陽子の行動パターンを調べ上げ、非番の松木が夜近所の飲み屋から出てくるところを刺し殺した。二メートルほどの竹槍をあらかじめ現場に隠しておいて、暗がりから松木の横っ腹を思い切り突き通した。竹槍を使ったのはどこにでも材料があり、突き刺したまま逃げれば指紋さえ残さない限り、返り血を浴びることもないからだ。
現場には防犯カメラもないし、その時間人通りもほとんど無い。案の定目撃者も現れず、手がかりは足跡と匂いだけだと警察発表があった。駅まで歩いて、すぐ電車に乗ったから足跡や匂いをたどられることもないはずだ。
竹下陽子の場合は簡単だった。出勤時駅で待ち伏せ、線路に突き落としただけだ。どうせつかまってもかまわないと思っていたので、混雑に紛れ無造作に突き落としたのだが、竹下陽子はそのまま入ってきた電車にひかれ即死した。誰かに見られたはずだ、すぐにつかまるはずだと茂代は思っていたが、すぐにどよめく人々に押され現場から離れてしまった。そして、それは単なる事故だということで処理された。
いま、茂代は周三を送検した検事松田朗と有罪判決を下した裁判官中根真美を狙っている。
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投稿者: takaojisan
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2008/3/17
「書き残し」
小説
書き残し 平成20年03月17日
発作が来たのは昼ちょっと過ぎで、当然ながら佐野茂代が一人で家にいる時だった。脳梗塞だとはすぐに分かった。なにしろ、少し前に夫の飯田周三と一緒に検診を受けたのだ。なにか、手足がしびれるような違和感を感じて、テレビなんかで脳梗塞にかかる芸能人や政治家の話をよく聞いていたので、脳梗塞という言葉がすぐに浮かんで、周三に言ったのだ。そうしたら、周三も心配をして、すぐに二人で健康診断を受けようと言った。そういう反応を周三が示してくれることがうれしい。結婚三十年だが、未だに仲の良い夫婦なのだ。
周三は五十五歳で、茂代は五十歳だ。いろいろな病気が出てきても仕方がないし、日頃から茂代は血圧が高いと医者に言われていた。それに、周三がどちらかと言えばやせ形なのに、茂代はその分補ってあまりある程太目だ。周三があまり食べない分、余った物を茂代が整理するのだが、それが全部肉になって貯まるのだから仕方がないと思っていたが、そうも言ってはいられない。ダイエットを何とかしなくてはと考えているうちに、自分で体の違和感を感じて濡素六病院へ行ったのだ。不幸中の幸いだと言えるだろう。とにかく、それで脳梗塞が見つかったのだから。もし茂代が以前のように脳梗塞に無知のままだったら、単に疲労や寝不足で体がしびれるのだと勝手に決めつけていただろう。思い起こせば、それ以前にもちょっと体が上手く動かないのが気になっているうちにいつの間にか治ってしまったことが何度かあったような気がするのだ。
ごく小規模な脳梗塞で、今回は安静と、血圧硬化剤などの薬を処方されて様子を見ることになった。症状は収まったが、むろん、それは小規模な脳梗塞で機能が落ちた脳の部分を自然治癒力がなおしただけのことであり、脳梗塞が又いつ起きるか分からないから、決して油断をしないこと、そして大規模な精密検査を早急に行うことを、濡素六病院の松田朗医師に言われた。
幸い周三には目立った問題も見つからず、準備ができ次第茂代は検査入院をすることになっていた。実は、自覚する症状自体はほとんど無くなったのだが、松田医師は脳梗塞自体進行している兆候があると言っていたのだ。
そして、茂代が発作を起こしたのはそんな矢先だった。
昼間食事を終え、台所仕事をひとしきりして居間でテレビを観て、それから買い物に出かけようとソファから立ち上がろうとして大きくよろけ、そのまま床に倒れてしまったのだ。意識ははっきりしている。が体が動かない。じたばたしているうちに次第に意識がぼやけてきた。
茂代は覚悟した。異変が見つかった時、無理をしてでも入院しておけば良かったのだろうが、その時はベッドに空きが無く、それに薬を飲みながら様子を見ようと言われたので、しいて入院をしなかったのだ。それに、かなりの出費を覚悟しなければならず、その準備や、もし長期に入院しなければならなくなったら、そのための準備をして置かなくてはならない。だから、周三が思いきって他の病院でも差額ベッド代を払ってでも入院しろと言ったのを、大丈夫だからと自分で入院をしなかった。本当は診断がつくのを恐れていたからに違いない。
だから罰が当たった。どんなに悔やんでも取り返しがつかない。松田医師の説明では、大きな動脈が切れたり詰まったりしてその先の脳が大規模に壊れてしまえば、体の麻痺や最悪の場合命を失うことになる。それが脳梗塞だと言われたのだ。
次第に意識が薄れてゆく中、茂代は自分が涙を流しているのを知ったが、どうしても体が動かない。必死になって辺りを見回し、そしてボールペンが転がっているのを見つけた。さっき倒れた時、テーブルから落としたのだろう。
茂代は遺書を書こうと思った。床にボールペンで書き付けるのだ。だが、意識がまとまらず、どうしても文字がうまく書けない。と言うより、文字を忘れてしまったようなのだ。
最初に”遺書”と書こうとしたが、その文字が思い出せず、脳梗塞が急速に進行していることが分かった。
周三が帰ってきて、変わり果てた茂代の姿を見つけたのは、その日の夜だった。いつもより早く帰ってきたのだが、茂代がボールペンを握りしめたまま床の上で事切れているのを見つけ、反射的に周三は救急車を呼んだ。そして、まっすぐ濡素六病院へ行った。
病院で松田医師は茂代がすでに亡くなっていることを確認し、死亡診断書を書いた。それを周三に渡しながら、肩を落としている周三に言った。
「こんなに急に発作が起きるとは予想外でした。こんな所見は、前の検査では見つからなかったんですよ」
「あれも気にはしていたんですが、まさかこうなるとは思っても居なかったでしょうねぇ。私だって、まさか帰るまでこんな事になってるなんて夢にも思わなかったし。でもちょと不吉な予感はしては居たんですが」
「どうしてですか。なにか朝にでも奥さんに異常が見られたとか」
「そんなことはありません。昼過ぎ、家内から電話があったんです」
「ほう、どんな」
「遺書って、どんな字だったっけ。どうしても気になるのに思い出せない、って」
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投稿者: takaojisan
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2008/3/16
「ねこずの物語」
小説
ねこずの物語 平成20年03月16日
あたしはしがない猫だけどさ、でも一応幸せだと思うよ。五歳になる三毛猫の雌。あ、三毛猫は殆ど雌だから、わざわざ断る必要もないんだけれど、五歳と言えばまあ、女盛りだねぇ、猫としてはだけど。
でも相棒の雄猫、飯田周三はまだ一歳ちょっとで、あたしと日長一緒にいるのに、あたしの魅力にも気がついていないみたい。まだ子猫だからしょうがないんだけどね。でも、残念なのはさ、あたしも周三も手術をしちゃってるから、たまにモヤモヤしても、自分じゃ何をして良いか分からないのよ。何の手術かって、あたしは不妊手術、周三は去勢。同じじゃないかって、同じじゃないわよ。とにかく、結局は心のモヤモヤを紛らわせるために御飯を食べることになって、案の定太っちゃってさぁ、毎日ごろごろしているわけ。
今日ね、いつものよう日の当たる庭に面したガラス戸の内側の、暖かいフローリングの上で思いっきりのびをしたところで、同じようにのびをしている周三と目があったんだ。周三って、まだ一歳の、あ、これは言ったわね、キジ猫でこれも寝ることと食べること以外全く興味がないみたいなんだ。問題意識のない猫だなぁ、と思って、考えてみたらあたしも周三のこと言えないよね。そうそう、あたしだけど、五歳の三毛猫の・・あ、これも言ったわね。駄目だなぁ、五歳でぼけちゃったのかなぁ、同じ事何度も言うようになっちゃ猫もお終いだね。
とにかく、あたしは名前を佐野茂代って言うの。なんで佐野茂代だって?知らないわよ。ねことこが付けたんだから。きっと、佐野茂代って名前が好きだったんじゃないの。ねことこ、って誰だって?言ってなかった?あたし達の飼い主のおばさんよ。飼い主のことおばさんって言っちゃ悪いわね。すごい猫好きで、いまの旦那と再婚なんだけどさ、子供が居なから、子供代わりに猫を飼うことにしたらしいわよ。
あたしはいつどうしてここに飼われることになったのかは、ほんの目が開いたばかりの頃だって言うから、知らないけれど、第一他の猫の姿を、周三が来るまで見たことがないから、一年前に周三が来た時、驚いたわよ。なに、これって。そりゃ、あたしがここに来る前は目もろくに開いてなかったし、第一なんにも覚えちゃいないんだから、しょうがないんだけど。
周三は、物心付いた時にあたしが側にいたからさ、自分も猫だって最初から理解したらしいけれど、あたしは周三を見て、初めて自分が猫だって気がついたんだ。そう言うことってあるのよ。自分がねことことは違う種類の生き物だって気がついてから、あたしはそれなりに自分のことや、自分を取り巻く世界のことを勉強したの。
ねことこは家にいる時は、あ、あたしや周三が飼い主のことをねことこって呼んでるのは内緒よ。ねことこの顔を見れば、あたしはただニャァ、って言ってるだけだから、本人はねこずにねことこって呼ばれてること知らないのよ。で、ねことこは・・なによ、話の腰を折らないでよ。ねこずってなんだって?ねこに複数のsを付けたに決まってるじゃない。あたしと周三のことをまとめて、ねことこはねこずって言ってるの。で、ねことこはさ、家にいる時はあたしたちのこと、ねこず、ねこずってかわいがってくれるし、あたしたちもねことこにはすごく懐いているの。でも、もうすこし家の中を片づけた方が良いんじゃないかとか、あんまり友だちと外をふらふら歩かない方が良いとか、実家、なんでも西の方らしいけど、やたらに帰らない方が、それも旦那にずうっと運転させて、良いとか思うわけよ。そりゃ、本人がそうするのが好きなんから、あたしも周三も干渉しないけどさ。基本的に好い女なんだ、ねことこは。旦那が、俺はほれているんだ、ってあたしの顔見てつくづく言ったことがあるんだ。本人に直接言えばいいのにねぇ。どうせ、ねことこはちゃんと知ってるけどね。
ねことこが昼寝をしている時とか、外に出ている時、あたしはねことこの本やパソコンでいろいろ勉強しているんだ。ねことこはそんなこと知らないわよ。猫は何も知らない顔してごろごろしている方がいいと思ってるし、猫の生活がうらやましいって時々言ってるくらいだから、あたしも自分が本当は勉強しているってことは黙ってるの。ね、何でもかんでも本当のこと言えばいいってもんじゃないでしょ。ねことこ、あたし達の写真を撮って、ブログに載せてるのよ。ねこずだって。いかにもぐうたら猫みたいな写真ばかりだけれど、ねことこにはそう見えてるんだろうな。でも猫だからねぇ。
周三はまだ子供だし、世の中の矛盾とか、不公平だとか、骨太政策だとか、政権交代とか財源の有無だとか、全然興味を持ってないの。しょうがないわよ。でもあたしはネットで色々勉強して、この国はいろいろ問題があることを実感してきたのよ。却って、ねことこや旦那がどれだけ問題意識を持っているか気になるくらい。でも、ねことこって結構読書家だし、ブログなんか見ると、しっかりと自分の意識を持っているみたい。ほんとはね、たまにねことこの日記にあたしがコメントを書き込んだりしているんだけれど、気がついてないのよ、もちろん。え、そんなこと出来るのかって?出来るわよ、あたしもブログ開いてるもの。
あ、周三がもそもそ起き出して、戸棚の戸を開けている。また猫缶引っ張り出して、勝手に開けて食べるのよ。そうなれば、あたしもお相伴するけれどね、すっかり食べて、空き缶は部屋の隅の鉢植えの陰に隠しているから、ねことこはあたし達がどうして太るのか、首を傾げてる。ちょっと待って、あたしも食べに行くから。周三、いつも後始末しないからねぇ。
猫って、人間の前ではネコかぶってるのよ。だから、ねことこもまさか自分の日記にそのコメントを書き込んでいるマイミクのたかおじさんが、本当はあたしだって事を想像もしてないわ。もし、見かけたら、コメント書き込んでね。
あ、ねことこが帰ってきた。じゃあ、またね。
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