2006/10/1
ライブドア二 平成18年10月01日
結局、飯田周三は経済犯としては異例の重刑、懲役五年の実刑判決を言い渡され、三年目に仮釈放が認められた。未決で拘置されていた期間が約一年あり、刑務所内ではとにかく模範囚だった。収監されていた間に、飯田周三が作り上げた会社、生門は上場停止、全事業、従業員をライバル会社ITヌスム社に吸収され、当然ながら飯田周三を初め全役員が解任されていた。
一時期は数千億と言われた会社資産は株価がゼロになった為に数億しか残らず、ITヌスム社の事業資金に充てられた。飯田達による株価操作で損をした一般投資家には結局飯田周三達の個人犯罪であるという認定から、保全されていた飯田周三の個人資産が補償に充てられ、最終的に飯田周三の手元に残った物はゼロだった。
飯田周三は、三十四歳で無一文になった。どこかに勤めようにもどこも使ってはくれないだろうし、自分で起業をしようとしても資金はまるでない。そして、信用がないのだから金も集まらなければ取引をしてくれる相手もないだろう。ゼロからスタートどころではない。なにより、世間からすれば飯田周三は前科者であり、結局田舎に帰って親の手伝いでもするより仕方がないのだろう。親の手伝いと言っても、細々と農業をやっている。親も周三を継がせようとはしなかった。だから大学にやったのだ。子供につがせられるような仕事ではないと、親が思っているようなところに帰るしかない、と飯田周三は刑務所の門をくぐりながら考えた。父親が何度か面会に来た時、その相談をしておいた。父親はいつでも帰って来いと言った。
どこでかぎつけたのは、何人かのマスコミがいて、カメラを向けられた。
「飯田さん、社会に復帰されて、これからどうされるつもりですか?」
「大勢の被害者に謝罪の言葉はありますか」
「こっちを向いてください。何か一言」
それらの言葉を振り切り、予め呼んで貰っていたタクシーに乗り込み、その場を離れた。今帰るところもないのだ。済んでいたマンションは、管財人が既に処分をしている。収監される時、十万ほどの現金を用意しておいた。それを出所の時私物と一緒に返して貰ったのだが、カードもあることはある。ただ、被害者補償のために殆どの預金を引き出さざるを得ず、いま二,三十万も残っているかどうかは分からない。取り敢えず、ホテルにでも泊まり、弁護士と会い最終的な確認をしてから、田舎に帰ることになるのだろう。それにてしても、疲れた。飯田はぐったりとシートにもたれた。
「お客さん、後の車、尾けて来てるんじゃないでしょうか」
運転手に言われ、飯田周三は後を振り返った。マスコミが追いかけてきているのだろうと思ったのだが、それらしい車はなく、ただあまり車通りのない郊外の道で後にいるのはタクシーだ。
「あのタクシーのことですか?」
「ええ、あれです。刑務所を離れて少ししてから尾いて来始めたんです。どうも、待ち伏せをしていたような気がするんですが」
「誰だろう。親父?いや、親父には来るなっていっておいたしなぁ。俺を迎えに来たんなら門の外にいればいいはずなんだが。一寸停めてみてくれませんか」
運転手は、車を脇に寄せて停めた。すると、後の車も停まった。やはり尾けて来ていたのだ。そのまま飯田はリヤウィンドウ越しに後のタクシーを見ていたが、すぐそのドアが開いて一人の人物が降りた。飯田は信じられない物を見て、驚愕した。
「茂代・・・まさか。あり得ない。茂代が・・」
茂代は飯田の車に近づき、そして凍り付いている飯田に向かい、まどごしに話しかけた。「乗っても良い?」
飯田は運転手に言って、ドアを開けさせた。
「お前、茂代か?」
「何を言ってるの?佐野茂代じゃなくて、誰だというのよ」
「お前、存在しないはずじゃなかったのか。誰もお前のことなんか知らないと言っていた。接見に来た弁護士にも、何度も確かめたのに、お前のことはどう調べても存在が確認できないと言っていた」
「どうかしたの?今日出所すること、弁護士さんから聞いたのよ。弁護士さんから、私が迎えに来ること聞いてたでしょ。なによ、待っていたのに、さっさと行っちゃうんだから」
隣に乗り込んで嬉しそうに話している茂代を、飯田周三は凝視しているしかなかった。結局、ホテルに落ち着き、じっくりと話を聞いてみた。茂代は確かに実在していて、数億の金を飯田周三から預かっていたのだが、その金も生門の幹部が裏切って検察に伝えたため、被害者補償に取り上げられてしまったというのだ。内縁関係だったので茂代はどうしても接見できず、連絡は全て弁護士を通じて行った。だから、事の次第は飯田周三も知っているはずだというのだ。
その場から弁護士に電話をし、全て茂代の言葉が裏付けられた。茂代の言葉は全て弁護士が周三に伝えたし、手紙も刑務所の検閲を経て飯田に渡してあるというのだ。飯田は自分が刑務所から持ってきた私物の鞄を開け、中に茂代の手紙があるのを見つけた。今の今まで、見たこともないものだ。気が付かないうちに茂代が入れたのかも知れない、弁護士とぐるになっているのかも知れない。しかし、刑務所に電話をしてみて、手紙の件は全て事実だった。
自分は何を見ていたのだろう、何を聞いていたのだろう。周三は何もかもが信じられない気持ちだった。あの刑務所の独房の中で見た茂代は、あれも自分の妄想だったのだろうか。だが、全ての記録が茂代の実在を示している以上、独房の中に茂代が現れたと本人に言ってみても無意味だった。そしてその夜抱いた茂代は確かに実在していた。堰を切ったように求めてくる茂代の体は、周三が忘れようにも忘れられない物だった。
幸い、茂代のマンションは今もそのままだという。松木和男検事は茂代のマンションなど存在しない、茂代は存在しないと言っていたが、マンションは茂代名義だったし取り上げられることもなかったのだとか。茂代は、いまITヌスムに編入された旧生門の社員として働いている。給料は減ったが、マンションは維持できているという。
念のため松木検事に電話をしてみて、何を言っているのだと逆に訊かれた。茂代のことはイの一番に飯田に伝えたのだと言われ、周三は自分の勘違いだと言って電話を切った。
「さあ、これからどうするかだが、俺はもうまともには働けないよ。田舎に帰るつもりだったんだが、お前がいてくれるなら、何とかここでやり直す方法を考えたい」
「あるわ。わたしも一生懸命考えていたから。この人に会ってみて。話は通してあるの」茂代は、確信のありそうな顔で言った。
ー 続く(いつ?)ー
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投稿者:竹下陽子
同姓同名(笑)よろしくお願いします。
投稿者:takaojisan
飯田周三様
どうも、何時も無償でご出演下さり、ありがとう御座います。今度、うんといい男に描きます
投稿者:飯田周三
同姓同名(笑)よろしくお願いします