「長兄。こうやって会うのは久しぶりです。」
「ああ、いつも学校じゃミズクといいしょだからな、イヅナ。」
「カガリは?」
幼女と言ってよい声音がしかし、しっとりとした艶かしい口調で答えた。
「もうだいぶ前からここにいるわよ。にいさま。」
かつてこの国の情報思念体の頂点を極めた存在。それは「みずく」と呼ばれていた。
今から1千年近く前、「みずく」はこの国の中心、京都の御所に仕える女官の一人に憑依した。彼女は天性の美貌と憑依した「みずく」の意識もあって、たちまち宮廷の中で持て囃され、やがて時の上皇のお手つきとなった。女御として入内、玉藻前という尊称を奉られたものであった。
そこまではよかった。とカヅキは思う。
あろうことか、玉藻前は時折宮中に参内を許される下郎、左衛門尉、草深い東国常陸の押領使の倅、平小次郎なるものに懸想することとなり、なんと彼と共に東国に出奔することとなった。
「みずく」=玉藻前の力は平小次郎将門をして新皇を名のらしめ、周囲の国々を枯野の野火の如く併呑せしめることとなったが、ついに中央からの追討軍と敵対する国人衆に包囲され、将門は戦死、「みずく」も陰陽師との戦いで傷付き、消滅した。
だが、情報思念体として息絶える直前、「みずく」は9体の己の不完全なコピーを残した。これが9尾と呼ばれる存在である。
時がたち、今や九尾は、あるものは非業の死を、あるものは不完全なデバックのせいで消え去り、今や3体に減った。
カヅキ、イヅナ、カガリである。

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