名古屋の食文化は他の都市から見ると「おかしい」とよく言われる。
説明すればするほど、ひかれることが多い。説明してもわからないから、その中でも
一流の店に連れて行く。そこで納得させることにしている。
遠くからお客さんがいらっしゃると、かならず、連れて行く店がある。
それが「ナポリ」。いわゆるあんかけスパゲティだが、
37年間他の店と食べ比べてきたが、トップの座を譲ったことはない。
そもそも、あんかけスパゲティなどという名称は失礼で、ナポリはナポリなのだ!!
子供のころ、郵便貯金会館の地下にあるプールの水泳教室に通っていた。
母親と一緒に、歩いて帰る途中、おなかがすいてきて、
当時、東片端にあった、小さなカウンターだけのお店に入ったのが、
ナポリデビューだ。ヨコイよりまろやか、そーれよりこくがある。
その他の後発の店とはレベルが違う。チェーン店のは防腐剤の影響で味が落ちる。
ナポリは料理にまで昇華している。誰にも教えたくない店のひとつだ。
だから、住所も電話番号も書かない。
AUAUにオープンデスクに来てくれた学生さんは必ず連れて行く。
若者の味覚は確かに反応する。日本の未来は明るい!
一度だけ、お婿さんが入店したとき、味が変わったことがある。
すぐに指摘した。オヤジさんが作り上げた味の微塵も壊して欲しくないという
思いだった。これくらいいいや、とか、ここまでできない、とか、少しでも
妥協すれば、全体が死ぬ。ただのB級グルメになってしまう。
他の後発の「あんかけスパゲティ」と同じになってしまうのだ。
今日も行ってきた。おいしければ、レジでお婿さんに目で合図する。
まだ、オヤジさんは現役で、一緒にフライパンを振っている。
このまま、変らず、続いて欲しい。
大衆性の中にも一流があることを、幼いころから自分は知っているつもり。
それそこが僕が生きていくフィールドでもあると考える。

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