
わが町、名古屋市東区の白壁界隈にも、実は近代建築の名作があります。
あめりか屋の二葉御殿であるとか、武田伍一の春田邸、春田住宅などがよく扱われますが、実は、コルビュジエのもとで直々に学んだ坂倉準三の作品があるのです。
それも、かなり近代建築の5原則を忠実に実現した作品といえます。
外壁のタイルやインテリアは他の坂倉作品と比べて、多少豪華ではありますが、これも名古屋的なのかもしれません。
それだけ、現代まで大事に使われ続けて、保存というより、現役の建築です。ただ、キャパの問題でしょうか、私が物心付いたときには南側に白い平凡なビルが増設され、南側のファサードは見られなくなり、おそらく当初あったと思われる、前庭も消えてしまいました。バスレーン沿いの建物ですから、この白いのっぺとしたものがなければ、堂々たる坂倉建築は皆の目に留まり、記憶にも残るのですが、残念ながら、
東西北のファサードのみの存在感です。ただ、限定された分、
自分たちだけ知っているという幸せはあります。下町育ちの私は、坂を上るとこの建築が出迎えてくれるという環境に育ったことを光栄にも思います。
今朝、ここを通りかかると、怪しげな仮囲い・・・。
耐震補強の工事です。これで5原則のうち、ひとつが完結しなくなりました。
この損失をどう自分の中で折り合いをつけたらいいのか解りません。
完成を見ないと解りませんが、鉄骨による筋交いが入れられ、それをボード類で覆うのでしょう。あるいはガラス張りにして、その鉄骨を見せるくらいにすれば納得できるのでしょうが・・・。全国のコル系の建築はこの構造ファシズムにどう抵抗するのでしょうか。

1