6月21日未明、チョパ男はたったひとりで旅立ちました。
それは「バカ男バカ男」と言われてた彼の最後に見せた賢さであり、「ウザ男ウザ男」と言われてた彼の最後の潔さでもありました。
見た目だけぢゃない、そんな立派なフェレットのオーナーになれた事を誇りに思います。
以下最後の闘病記です。一部説明書きだったり生々しい描写になりますがご理解下さい。
6月19日(日)
土曜の朝に点滴を受けたもののタール便が止まらない。
脱水の進行も普段と同じなので、ただの尿毒症ではない様子。
食事は普通にふやかしを食べるが、結局1日中タール便だった。
6月20日(月)
朝1番で獣医サンへ。
昨日のタール便の原因は「潰瘍による胃と十二指腸からの出血」と診断された。
腎臓の濾過機能がダメになってるので、血中にアンモニアがまわり胃壁などが出血しやすい状態になってるそうだ。今日から胃薬を飲む事になった。
正午まで家で様子をみていた。普段通りだったので出勤。夕方4時に帰宅。
いつも通りシリンジ給水を試みるが激しく拒否。薄めたキドナなら自ら飲んだ。しばらくすると吐く事はなかったがエヅキ始めた。ハンモに上がらなくなったのでお世話しやすいよう取り払い、床に毛布を入れた。
何かいつもと様子が違うように見えたので、獣医サンへ電話した。やはり潰瘍が苦しいと思われるので、1日2回の薬を4回に分けて与えてみるよう指示を受けた。
電話を切ってからトイレを確認するとチッコ量が異常に少なかった。朝は出てたのに…エヅキが酷くなると共に呼吸が早くなり始めた。慌ててもう一度獣医サンへ電話。
チッコが出なくなるのはアタシ達が1番恐れていた事。。
利尿剤を打つために即獣医サンへ走った。
待合に入ってすぐ看護士サンが様子を見にきてくれた。意外と落ちついていたし、他の方が3人ほどおられたので診察順を待つ事にした。
看護士サンが離れて数分後、猛烈にエヅキ始めたと思ったら大量に吐いて、一気に呼吸が荒くなった。慌てて看護士サンを呼んだ。
チョパ男は利尿剤の注射と酸素吸入の為、スグに別室に移された。
アタシは…既に半べそかいてたからだろうか?待合に放り出される事も無く、チョパ男の処置をしてる部屋の横にある、第2診察室で待つ事になった。
どれだけ待ってたのだろう…時間の感覚が無くなってた。ただひたすら、センセが他の方の診察の合間にチョパ男を覗きに行く姿だけを追っていた。
センセが何度目かの確認から出てきて、「鼻の色が戻ってきましたよ。後はオシッコ出るのを待ってます」と笑顔で教えてくれた。
アタシの涙が止まった。「入院はない!自分でお世話できる!!」と心が決まったからだったのか。。
ほどなくチッコも出たようで、血色はイイがちょっとやつれたチョパ男が戻ってきた。
チッコは利尿剤が効いてくればもっと出るでしょうとの事だった。呼吸が荒い原因のひとつに「のぼせ」があるようで、潜れるハンモなどは使わないよう指示された。
帰りも体が熱かったので巨大アイスノンがキャリーに入れられた。
しかし家に帰ったチョパ男は元気が無かった。水も飲まない。何より隠れるように潜りたがるので、部屋を寒くして小さな毛布を入れてやった。
念の為に酸素を買いに行った。確かみっちょんの闘病日記を読んで「買っておかねば…」と思いつつ、忙しさにかまけて買って無かったのだ。
とにかく見守るしかない状況だったけど、見守ってるのも辛かったので、りんりんさんやタロシーに電話しまくった。ちょっと落ちついた。
それから何度かケージを覗いたがトイレに行く気配がない。そっと下腹部を触ると少しだけ垂れ流していた。出るだけマシか…
時間が経つほどに、垂れ流しの量だけでは足りないと感じた。
それと時折苦しそうに「プキュー」とため息をつく。いつもなら抱っこのサインだ。でも抱き上げようとするとかなり抵抗する。
センセに何度か電話で状況を報告した。
やっぱり毛布は即刻取り払うよう言われた。他に色々と注意を頂き後は観察するだけだった。
ただチッコが出ないのは「チッコが出ないから血中の水分量が多くなり、利尿剤が効きにくい状態だろう」と。。しかし運良く(?)下痢し始めてたので、この際何でもいいから水分が出るのに期待するしかない。あとできる事と言えば乾燥室に入れる事くらいだと。
この時点でアタシとセンセの共通の見解では「今までのチョパ男の体力から考えれば、明日朝1番で乾燥室入りで余裕」と思っていた。と言うか不測の事態なんて想像もしてなかった。なのでそれからは乾燥室後の治療方針について話し合っていた。今後は輸血しかないと…
この時、6月21日午前0時半。。。
チョパ男の治療全ては内科治療、アタシ達は手を変え品を変えするだけで、後は常にチョパ男の順応性と体力に期待するしかない。
今日を乗り切っても、すでにホルモン注射をしても造血の反応が見られないのだから、今後は新しい治療(輸血)になる。他の子の血を入れると言うのは相当な体力が必要な事に加え、潰瘍が酷い場合は激しい痛みを伴うらしい。
そして乗り越えられる可能性は……わからない。でも乗り越えさえすれば、今よりずっと楽な生活が送れるかも知れないとも考えられる。
このチッコ騒動が治まっても、今後の治療については「苦しむなら安楽死しかないかな…」そんな事がアタシの頭をよぎっていた。。
6月21日(火)
そんなこんなを考えながら時だけが過ぎて行く…。チョパ男は依然呼吸が荒く、チッコもほとんど出ない。抱っこも拒否。見かねて強引に抱っこを試みたけど「ガツッッギューーーーーッ!!」はじめてチョパ男に噛まれた。今まで甘噛みしかしたことのないチョパ男に。
そんなに苦しいのか?かなり不安になったけど、目はしっかり見開きアタシの顔をずっと見ていた。意識はかなりしっかりしている。「やっぱ大丈夫だよね?!」自分に言い聞かす。モチロン「死」は全く意識していなかったし。。
普通で考えればもっと緊急性を感じても良かったのかな?
今までのチョパ男の経過から何でも乗り越えると過信してたのかな?
午前2時ごろ、突然アタシは仮眠しようと思った。経過観察せねばならないのに、何故か寝ようと思った。なぜそんな行為に走ったのか未だに不明。。
仮眠は熟睡になってしまった。早朝パパンに起こされた。
「ママ、ママ、チョパ男が冷たくなってる。。。」
驚いて飛び起きた。パパンが言った事、自分が寝てしまった事、どっちも驚いたから。
慌ててケージのチョパ男を触ると、、、冷たい。
心臓を確認する。無音……
この時朝の6時すぎ。センセに電話した。
「もうダメ。。。」
「どうしました?」
「………冷たくなっちゃった。」
「えっ………!」
「誰も見送れなかったんですっ!!ひとりで逝かせてしまったんです!!」
最後の方は絶叫に近かったと思う。後は先生からの慰めの言葉があったと思うがほとんど覚えていない。少し落ちついてから今の状態を報告した。
アタシが寝る前と同じ状態で、タオルのシワもそのままで、寝床は全く荒れておらず、トイレの縁に頭を乗せて……自然に目を瞑り、眠るように、穏やかに横たわっていた。
「だったら苦しんでないと思いますよ。良かった。。。。」
センセの声も涙混じりなのがわかった。
終わった。何もかもが……突然の幕切れ。
それから息子を起こしチョパ男に合わせた。寝ぼけていて事態が把握できないみたい。あとは電話したり、ケータイメールを送ったりした。正直、何をしたらイイかわからなかった。
月曜の時点で看病が長期化すると思ったので、すでに会社は休みをとっていた。
パパンと息子を送り出し、家に一人っきりになった。
泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて…気が狂いそうだった。泣き過ぎたのか目が猛烈に痛くなった。昨日チョパ男に使ったアイスノンをケージから出し目を冷やした。起きてられないし、チョパ男を抱っこして寝ようと思った。
そしたら次ぎは吐き気……干からびるかと思うほど吐いた。吐くと苦しさで泣くのを忘れるから、水を飲んでは吐くを繰り返した。しばらくして、、「そんな事しててもアカンしな。。」と思った。そしてチョパ男に悪いと思いながらも、別の部屋で寝る事にした。
夢を見た。
夢の中でまたパパンに起こされる。
「ママ、ママ、チョパ男なぁ、寝てただけやったで!!」
なぁ〜んだ!でしょでしょ!!チョパ男が死ぬワケないぢゃん♪
それから大慌てでふやかしを作ったり、シリンジ給水のお世話をした。
目が覚めた。チョパ男を確認しに行く。
やっぱ夢だった。。。。。。。。。。。
ケータイがピロピロ鳴る。見るとイッパイお悔やみのメールが入っていた。
中には「今から行こうか?」とまで言ってくれる人も…
みんな優しいな。なんて心強いんだろう。
それからある行動を起こした。
チョパ男がこの病気になってからずっと考えていた事。
「検体として捧げる」
自分的に本意でなかったけど、症例の少ない病気だから後の医療に貢献して欲しいのだ。いや…症例が少なすぎて無駄な努力になるかも知れないんだけど。。
チョパ男と一緒に入荷した兄弟は大阪のどこかにいるはず。先天性の病気だけに今まで気になって仕方なかった。そりゃ…何ともない子もいるだろうし、もう死んでる子もいるかも知れないけど、、爆弾を抱えたまま爆発寸前の子だっているかも知れない。3ヶ月獣医サンへ通って、「このセンセなら全てを託せる」そう思ったのも理由のひとつ。
とにかく午前診が終わりそうな時間だったから、獣医サンへ急いだ。
センセと早朝の電話と同じような話しをした。センセが「どうかなー?」と触診を始めた。
「センセ、そんな事しなくても…急な話しですが、、」と検体に捧げる旨をお話しした。そして「どんな形でもイイから体だけは返してください。」とお願いした。センセはかなり驚かれていたが、「大切に扱わせて頂きます」と快く承諾してくれた。
預けている間、チョパ男がアタシの元を離れた事で気持ち的に楽だった。
まずテキエロさんへ行ってご飯を食べよう!いつもソフトに包み込んでくれるようなおしゃべりと、たくさんのワンコ(特に子犬〜!)に囲まれてるのは安らいだ。
そしてチョパ男の出身ショップへ…以前から病状の報告はしてたし、アタシの顔を見てすぐ悟ってくれた。彼も小鳥の看護中である話しから始まって、「フェレベビコーナーで遊ぶ?」と連れていってくれた。「かわいいねー」なんて言おうものなら「49日の喪が明けたらおいでよ」って…(泣笑)
ホントにホントに…みんななんて優しいんだろう。。
夕方センセから電話があり、チョパ男を迎えに行った。
午後診までの5時間めいいっぱい使って終わらせてくれたらしい。
洗ってくれたのだろう。爪の先までキレイなチョパ男は、鼻に詰め物がしてあって、お腹は包帯で丁寧に巻いてあった。
「お腹はキレイには閉じられないから、こうさせてもらいました。」そして詰め物の説明のあと、「腎臓の炎症は想像以上に酷かったです」と教えてくれた。でもそれ以上は聞かなかった。きっとそれ以上は素人のアタシが聞いても「聞きかじり知識」に過ぎなくなると思ったから。
全てはセンセが後の医療に尽くされる事を祈るだけ。
センセは診察室を出ても、待合室を出ても、玄関を出ても、涙目になりながら深々とおじぎをして見送ってくれた。最後にバックミラーから見えた。車が見えなくなるまでずっと頭をさげていらしたのを…
「このセンセと頑張ってきて良かった。」はじめてチョパ男以外の事で涙が溢れた。
それからは…泣いて、保冷剤を取替えて、泣いて、保冷剤を取替えて…で長い1日は終わった。

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