もうけっこう経つわけだけど、CDレコーダーが壊れてしまったオーディオコンポを修理してから、やはり自分が一番大切にしている作品群はCDが多いので、それを再びセットして通して聴くことが出来るようになって良かったと思っているこの頃なのですけれども。やはり年齢のせいなのか、ヘビー・ローテーションなってしまう作品が多いようです。その中でも特に聴く機会が多いのがヴァン・モリソンの1990年作、いわば中年円熟期の名作「Enlightenment」。
随分前にも紹介したことがあるので、同じようなことを書いてしまうかもしれませんが、この作品はひと言でいえば「渋い」のですけれど、同時に高揚感に満ちた明るい曲と、ヴァン・モリソン特有の広大なる内省(変な形容ですね)がポップに溶け合っており、この前年、次年作も名作なのですが、その狭間にある本作品こそが個人的には一番名作に思えますね。1曲目の高揚感溢れる曲でわしづかみされますし、そこから続けて始まるヴァンのこころの真理を辿る旅、もしくは人間の心の真理を探究する旅を表現するような2曲目「Enlightenment」以降の世界もけして重く沈殿することなく、独特な広がりと誠実さが溢れていて、訳詞を見ながら聴くともうたまらないものがあります。
基本的に「捨て作」がない人であり、キャリアも長く、かつコンスタントに新作を出しているこのようなベテラン・アーティスト特有の現象で、過去のカタログがなかなか簡単に見付からないのが往々あるのがつらいところです。やはりアマゾンなどで注文するしかないのかも。いずれにしても個人的には大推薦の作品です。爽快なロックンロールが好きな人には多少辛いところもあるかもしれませんが、長い時期を洋楽とともに過ごす予感を感じている人には持っていて絶対に損はない作品です。
自分の中の世界を彷徨うこの詩人の曲では、例えば自分の少年時代、自分をいわば救ってくれた過去のミュージシャンたちを回顧しつつ賛美する「In The Days Befor Rockn'Roll」のような曲がまた、たまらないものです。
とはいえ、ヴァン・モリソンは同じリズム&ブルースを基盤にして同時代にデビューした、白人的ソウルを志向した方向でキッチリ大衆性を意識したローリングストーンズ等々とは違い、大衆を無視するような音楽では全然無いけれども、とはいえずっとベクトルが自分自身を向いているヴァン・モリソンのソウルは、入り口としてはイキナリ上記作を聴いてもツライかもしれません。そのような人たちには格好いいビート・ロックを聞かせる「ゼム」時代のシングル曲も含まれた80年代末頃に出た彼のベスト盤から入門にするのが一番かもしれません。ただ、この作品もまた、どうやらなかなか入手しにくいベスト盤になっているようです。その後も各種のベスト盤が出ているようなので。ただ、個人的にはヴァン・モリソン入門はこれが一番最高!と思っているのが以下写真のベスト盤というわけです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/555124
で、ヴァン入門した暁にはぜひ「Enlightenment」も、と思うのですが、やはり中年期の素晴らしき円熟も念頭に置いてもらいたいと思いつつ、よりロック寄りの躍動感とポップ性を持つという側面から考えるならば、ソロ第2作の超名盤「Moondance」を先に聞いてみるのも一つの王道だろうと思うのです。(う〜ん、何となく上から目線的な書きよう)。
これはピーター・バラカンさんも指摘されていることですが、このアルバムのLP盤でいえばA面の部分、すなわち「And It Stoned Me」「Moondance」「Crazy Love」「Caravan」「Into The Mystic」。すべてが名曲ぞろいの捨て曲なしで流れがスムーズ、というとんでもない傑作です。(その分、B面部分がほんの少しだけテンションが下がりますが)。
ヴァン・モリソンといえばご存知の人が多いと思いますがアイルランド出身で、かの地が生んだ最も偉大なソウルマンですが、同時になかなかとっつきずらい人、というのも周辺話を読むとまた事実のようではあります。また、来日したことのない最後の大物ミュージシャンの一人とも言われますが、もしかしたら今後も来日することはないかもしれません。それくらい自分自身というものに忠実な人かとも思います。
そのような気質の人ですからYOUTUBEなどでもビデオチェックが厳しく、なかなかきちんとした映像が見るのが難しく、映像があがってもすぐ削除されるというのがつい最近の当たり前のことでした。
しかし、ここに来てヴァン・モリソンのオフィシャルサイトでまだ若い(若く見えないところが少々ビジュアル的に損をしている人ですが)ヴァンの映像が鮮明な映像で見ることが出来ます。そしてその楽曲がソロ代表作の「Moondance」中心の曲ときているのですから、ファンとしては随喜モノです。
ここでそれらの映像をあげさせていただきましょう。
まずはザ・バンドの解散ライヴをスコセッシ監督が撮った映画『ラスト・ワルツ』。('76年)その中でザ・バンドをバックに歌う「Caravan」。映画でも、最も高揚させられる場面であり、基本的にオーバーアクションの少ないヴァンが何かにとりつかれたような大熱唱。格好つけなど構わないアクションも全開の素晴らしいパフォーマンスです。本当に熱い!
http://www.youtube.com/watch?v=fYr60DVzehg
続けてジャズの要素も溶かし込んだアルバム表題曲で名曲中の名曲、「Moondance」。80年、モンタレーでのライヴです。
http://www.youtube.com/watch?v=B9GBn3EG2Mw
こちらもアルバム「Moondance」からのオープニング曲「And It Stoned Me」。同じく80年のモンタレーライヴから。ゼム時代などの彼の若い時代のフィルムも取り混ぜたファン感涙の映像です。
http://www.youtube.com/profile?user=OfficialExileFilms#p/u/11/s38k5-yl1q4
もう少々。こちらはロック・クラシックソング、「グローリア」。70年代前半のレアな映像で、まさに若きVanの実にディープなソウル。
http://www.youtube.com/watch?v=-bx_djloAsI&feature=channel
最後に。ヴァンのファーストソロアルバム「アストラル・ウィークス」は発売当初は良く分からない作品、という評価だったようですが、現在ではロックアルバムの名盤に数えられています。実は恥ずかしながら私はまだ全体を聴いたことがありません。ベスト盤にも良く収録されている「Sweet thing」。最近、当時のメンバーを再結集して「アストラル・ウィークス」を再現するライヴを行ったとの話。そのライヴからの映像から同曲。実に感動的な音楽。その上に乗るヴァンのボーカルは自由な意識の流れに身を任せてる、っていう感じです。(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=4BYvoH2_XuA&feature=channel
いや〜、ヴァン・モリソンに関しては凄すぎてなかなか簡単には説明できない気も。とにかくこの人のボーカル、そして楽曲におけるアレンジメント。鮮明な映像でライヴ場面を見ると本当に改めてその凄さに思いが至ります。ルックスはけしてポップスターのものではないです。スタイルもけして良くは無い。でも音楽とは実質と魂だ!ということをとことん教えてくれます。オフィシャルサイト提供での映像のようで、残念ながら画像の埋め込みまでは許可されていません。ぜひ、ヴァンモリソンのYOUTUBEサイトで、彼が好きな人は全体像を確かめてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=4BYvoH2_XuA&feature=channel