週末の春の嵐。帰りの飛行機が無事かどうか気になるところだったが、幸い自分は往復ともに安定フライトだった。ライブの渋谷AXも雨が強かったのは帰りだけ。その帰りもすぐバスで渋谷まで乗ったので。。。そっから渋谷の新南口に出るまでにつまらない遠回りはしてしまったが。。。
それにしても、PILのライブは凄かった。自分の今まで見てきたライヴのベスト5、あるいは思い入れ記憶抜きにしても、ベスト3にはいるものだったと間違いなく言える。ジョン・ライドンという「生きるドラマ」みたいな人への思い入れや特殊な感慨はさておいて、というかそういう彼(等)の”音楽以外の情報”に踊らされた自分の全てをひるがえす、まさに素晴らしいサウンド。その音楽としての機能が半端なく圧倒的だったし、プロフェッショナルなものだった。
大歓声の中、威風堂々と現れたジョン・ライドン。「ニッポン、イチバーン!」とハナから上機嫌な様子で、ああ、きっと今日のライヴも上手くいく。まして最終日だしな、と早々と期待が高まる。
そして、ジョンのどこから生じるのか?と思える圧倒的な声量が一曲目から怒涛のごとくに炸裂。そのボーカルは雄叫びにも聞こえるかもしれないし、彼の声に馴染みが無い人にとっては単に怒鳴っているように聞こえるかもしれないが、実は非常に低い音域から高い音域まで歌い切るボーカリストとしての力量の持ち主なのだ。初めてナマで彼の声を聞いてしかと再認識させられたし、しかもボーカルのコントロールがされているのがわかる。それでも、この日2時間のライブの中でも何度かジョンが自分自身で歌い上げる声の限界に挑むようにも聞こえた。それが彼のスピリットにも通ずる気がして、非常に感動的であった。
それにしても彼らの音楽をどう形容したらよいか。とりあえず、ダイナミックでパワフルなダンスミュージック、あるいはトライバル・ミュージックの現代的に計算された音の塊、とでも言うべきか。だが、根本はポップで活気があるのだ。そう、「活気」。
それを体現するのがブルース・スミスのドラムとスコット・ファースのベースだ。プロフェッショナルな彼らの作るリズムの土台が強靭なPILサウンドの要となり、その上にルー・エドモンズのエレクトリックギターや、各種弦楽器の操りにより、時に浮遊感を生みだしながら、時にパワフルでキャッチーなメロディを奏でる。
YouTubeの映像などを聴いたり、ライブDVDを見る限り、ときにルーの奏でる上モノのメロディが冗長に思えたりもしていたのだが、実際のライヴを聞いたらそれは全然違うと気がついた。「Death Disco(Swanlake)」で主旋律として流れる「白鳥の湖」のメロディは伸びやかだったし、同曲でのリードギターとリズムギターの目まぐるしい変転の中でも、見事にダンサンブルなサウンドを構築していた。
個人的には「Flowers Of Romance」でのスコットのウッド・ベースとルーの弦の絡みが決まると快感の極み。こういう曲では耳だけで身体を乗せると滅茶苦茶気持ちいい。どこか不思議とReggaeを思わせる。ロックから中東音楽風まで、多彩な音を聞かせるこのバンドだけど、あえて言えば、この音で踊るにはRoots Reggaeをイメージするのが一番かと思う。
ライヴの選曲はニューアルバムの曲も含め、ベストオブ・PILというべき内容。個人的にはブルースの力強いドラムスに反応してしまい、最初から乗りまくって、本編ラストのデビュー曲「Public Image」で飛び跳ねた後は、年のせいか心臓がバクバク、頭がフラフラ、冷や汗がタラタラ。ここで倒れたら前代未聞、人生最大の恥です(笑)。故にアンコールでの新作のハイライト「Out Of Woods」ではお休みモードに入ってしまった。申し訳ない!
「Rise」はPILライヴのコール・アンド・レスポンスの定番曲で、もちろんその盛り上がりようは凄い。ジョンも前面にやってきてマイクを向けて盛んにレスポンスを求める。「怒りはエネルギー」と。
前述したとおり、とき折、ジョンの声は絞り出すように、唸るように威圧するかの野太い低い声で歌うし、逆に、高い声で「ホ、ホホー!」と雄叫びするが、実は全体に自分のボーカルをコントロールしているのが確認できた。そうでないと、2時間もあれだけの声量で歌いこなせるはずはない。でも、同時にPistols時代から続く、自分の歌で自分の声の限界と向き合うかのような一瞬があって、ジョンライドンという男の極めて冷静に周囲を見回す視点と、同時に完全に呪術師としての性格に自ら入っていくような瞬間もあり、単なるプロのライヴパフォーマーには思えないところがやはりリアルそのものだし、ジョンの誠実な自分の仕事への向き合い方に思えた。
昔の、オリジナルメンバーが抜けたあとの日本公演などの演奏も悪くはないんだろうけれど、あの時のイメージは、彼自身の中でも挑発やら皮肉やらの「若さ」がやっぱり勝っているところがあって、コール・アンド・レスポンスを求めるシーンもいささか本気なのかどうかわかりにくい時があるように見えたけれど、今は本当にお客さんとのやり取りを心底楽しんでいるようで、そこに変な裏を読む要素が無いのが当たり前のことだけど、「大人になったんだなぁ」「いい年の取り方をしたよなぁ」と感慨が深いというか、元気をもらえた。(偉そうですみません)。
バンドは単線的なメロディとビートの曲でも、ハイライトでバックビートで物凄く激しいアクセントを付けるので、とんでもない高揚感を与えてくれる。
やっぱ、このバンドで見て良かった。初めてジョン・ライドン(EX:ジョニー・ロットン)を、このバンドで見ることが出来て本当に良かったと。最高な気分の時間であった。
一度のアンコールで3曲立て続け、最後にバンドメンバーを紹介して、ドラムのブルースの紹介の時に「お前の名前は?」なんていう分かり易いジョークを飛ばしていたジョン(笑)。ブルース・スミスがまた、えらくジェントルマンな感じで、改めてこの人が好きになりました。アンタは凄いだよ、ブルース。
最後にいつもステージの端に立って一番鋭い目つきで上体だけ動かしている用心棒?ランボーさん。映像ではいつもコワモテで怖そうにみえるおじさんがジョンと一緒に結構さわやかな笑顔で退場したのが何か楽しかった。髪の毛も少し長めになって。人柄も悪くなさそうにみえた。(何の話じゃ?)
ありがとう、ジョン。ありがとう、PIL!またこのメンバーで来日してよね。
このブログの更新はもうどれくらいぶりでしょうか?1年以上ですね。申し訳ない。何しろ、ジョンライドンとPILですから、何か書かずにはいられなかった。
セットリストはこんな感じです。
Four Enclosed Walls
Albatross
Deeper Water
Memories
Reggie Song
Disappinted
Warrior
Flowers Of Romance
Death Disco(Swanlake)
This Is Not A Love Song
Public Image
〜Encore〜
Out Of Woods
Rise
Open Up