7日に前福島知事である佐藤栄佐久氏を山都・茶房千にお招きして講演会が行われました。栄佐久氏は東電や政府の情報隠遁体質に抗しプルサーマルに反対するなど(そうした面ばかりではないかもしれませんが)「闘う」原子力発電所を抱える自治体の首長として、長く日本の原子力行政を見てきた人です。(彼曰くゆえに収賄容疑の冤罪で逮捕されたと。)講演の中で印象に残ったことを記します。
当然のことながら今回の福島第一原発の事故、そしてその後の対応について強い不満を感じていました。かつて参議院議員時代にチェルノブイリ事故後の現地へ視察に行った経験があるそうですが、そのとき感じたのがソ連という国の体質がこのような大事故を起こしたということだそうです。そして今、フクシマの事故も全く同じことが言える。つまり
「日本は民主国家だったはずなのにいつの間にか原子力帝国になってしまっていた。そんな国の体質が今回の事故を起こしたのだ」と。
「2001年省庁再編で、原子力保安院が科学技術庁から経済産業省の傘下になった時点でこの事故は予想できた。」
2006年フランス・ストラスブール欧州地方自治体会議がチェルノブイリ事故20年記念としてスラヴィティチ基本原則というものを採択したが、その会議に栄佐久氏は知事会代表として出席している。
スラヴィティチ基本原則
(1)各国政府の主たる役割
原子力産業は複雑で危険な工程を伴うため、とくにエネルギー技術にまつわる重大問題への対処や原子力発電所の立地、安全については政府が本質的に責任を負う。政府は本分野における主たる責任を他に委任することはできない。
(2)地方・地域自治体の不可欠な役割
地方・地域自治体は最前線に位置し、直接利害をもつ住民を最も身近に代表する機関であり、国との連携のもと住民参画を促し、住民を守ることにおいて、決定的な役割を果たす。
(3)地域住民の連帯
原子力の安全は国の政治・行政上の制限によって縛られてはならない。国の縛りを越えて関係諸地域すべてをイコールパートナーとする真の地域住民との団結と越境的協力体制が必要である。
(4)透明性と情報
広範で継続的な情報アクセスが確立されなければならない。国際機関、各国政府、原子力事業者、発電所長は、偽りのない詳細な情報を隣接地域とその周辺、国際社会に対して提供する義務を有する。この義務は平時においても緊急時においても変わることはない。
(5)関係者の関与と協議
直接の関係者による関与・協議が必須である。国ごとの手続きに従い、国レベルでは重大な技術的選択、とくに原子力エネルギー選択について、地方レベルでは原発の立地と閉鎖、安全対策について、直接協議を含むあらゆる方法で行われなければならない。
(日経ビジネスの記事から拝借)
特に2条地方・地域自治体の不可欠な役割、4条透明性と情報について日本原子力政策の不備を指摘されていました。
そして再三「敵を間違えるな」と言及していました。
「原子力行政は国策であり全ての責任は国が負うべきである。原子力行政の中心は経済産業省である。原子力帝国とはすなわち経産省が牛耳る国なのだ。しかし経産省は責任者としていまだ全く姿を見せてない。」
「今は地方自治、民主主義という言葉全く出てこない」
「自分の頭で考え、自分で判断する」時代。
講演は3時間ほど続きました。栄佐久氏の長い県知事生活の中での正確な記憶に驚かされると同時に、いわゆる政治家という要素の一面を彼に強く感じました。彼自身県政で果たしてきたことに強い自負をもっていて、日頃接することのない行政の裏話を聞くこともでき、政治とは何かあらためて考えさせられました。我々のような少人数の勉強会に快く参加してくれたことを感謝したいと思います。
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