山都町で新規就農した人たちが中心になって結成した「あいづ耕人会たべらんしょ」(名前が長いという苦情が過去にあり)では「大地を守る会」に『 〜里山の有機農業とつながる〜 会津・山都の若者たちの野菜セット』(これも長い) を毎年8月から10月に出荷させてもらっています。今年も会員向けの野菜セット募集チラシのためのメッセージを書かせてもらいました。以下よかったら読んでみてください。
今年は3月11日に最初の種を播きました。
まだ辺りには 1m もの雪の残る中、鎮魂と希望の思いを込めた種蒔きでした。
その野菜たちも気温の上昇とともにぐんぐん育ち、間もなく収穫の時を迎えます。
昨年の今頃、私たちは不安の中にいました。
未曾有の放射能漏れ事故で、一体これからどうなっていくのか。会津での放射能の影響はどれくらいなのか。
福島で農業が続けられるのだろうか。
不安を払拭するために、そして今まで通り安心な農産物を作り続けることができるのか確認するために、収穫のたびに野菜を検査に出しました。
そしてうれしいことに、放射能が検出されることはありませんでした。
風向きの影響で、喜多方市山都町での放射能の降下はわずかに留まりました。
しかしその偶然の上に胡坐をかいていくわけにはいきません。
と同時に有機農業の基本である土づくりや循環を断ち切ることもしたくはありません。
ゆえに今年は農産物だけでなく、田畑に投入する堆肥やぼかし、米糠、鶏糞などの有機質肥料も放射能検査をしています。
これ以上の放射能の蓄積や拡散を防ぐため、
そしてこれからも会津で安心な農産物を生産し続けるために。
一方で残念ながら福島全体では、農業はますます苦境に立たされています。
昨年の混乱の中、多くの農民や研究者の努力や検証の結果、会津だけでなく中通りや浜通りでも放射能の作物への移行は予想以上に少ないことが判りました。 そのメカニズムも判りつつあります。
福島の豊かな土壌は、降下した放射性物質の多くを土中に吸着させ、農作物への移行を防いだのです。
しかし放射能は土壌だけでなく、農家の心にも大きな影を落としました。
先祖伝来の土地で耕し続けることはおろか、住む所さえ奪われた人たち。
土地を耕し作物を育てたことをなじられ、被害者がまるで加害者のように言われたこと。
真摯にデータを取り、公表することが一部の人には理解されないこと。
そしてこの春には県内の一部の地域では新たな作付禁止、制限指示も出されました。
誰かのせいで勝手に降り注いだ放射能を、農家自身が骨を折って除染しなければならないという現実。
その厳しさを前にあきらめという気持ちが広がっています。
あれだけ美しかった福島の豊かな農村風景が、まるで櫛の歯が抜けるように、壊れ始めています。
それはただ農地が荒れていくだけではありません。
地域社会が壊れ始めているのです。
だからこそ、今までと同じように農業と向き合え土に触れることができる有難さを、私たち 「あいづ耕人会たべらんしょ」 は昨年よりも増して感じます。
そしてこの幸運に感謝し、耕せる以上は、できなくなってしまった人たちの思いも込めて耕し続けなければなりません。
今年も山都町にはたくさんの新規就農希望者が集まってきてくれました。
彼らも近い将来、福島の代弁者・後継者にきっとなってくれるはずです。
そんな私たちの思いも一緒に、野菜セットを味わっていただければうれしいです。
豊かな自然に育まれたお米・野菜たちってホントに美味しい!
〜山間の小さな農業を応援して下さい〜
安心な農産物の生産・提携「ひぐらし農園」

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