珍しく東京に数日滞在。連れ合いによると昨日もまた雪が降ったとのこと。今冬の積雪はたぶん早稲谷の冬を経験した中でもっとも多くなりました。
秋に上堰通信で「今年の雪はたぶん少ない」と書きましたが見事に外れました。喜多方市は除雪費の予算を使い尽くし、補正予算で追加したとのこと。その総額は5億円を上回り、市の総予算額の5%。
今年は小屋の屋根のペンキを塗り直したおかげで屋根に上っての雪下ろしは免れています。ただし雪がスムースに落ちてくるように軒下の雪をどこかに持っていかなければなりませんが。もっともこの仕事は冬家にいる時間の多い連れ合いがほとんど担当しています。
昨年雪下ろしをしていてふと思ったのが、除染と除雪は似ているということ。屋根の雪をスコップで切り、下に落とす作業を繰り返す。屋根の上はすっきりしていくけど、雪の総量は減ったのではなくただ軒下に移動しただけ。雪が消えるには春が来るのを待つしかない。解決するのは時間です。
22日に国分寺にあるカフェスローにて福島のことを話すイベントがありました。発表のテーマは「原発事故以降ひとりの百姓として考えたこと」。こういった機会があると日頃生活に追われ何となくうやむやにしてしまっている意識を再考する良い機会となります。
なかでも今回考えたのが、なぜ福島の農家は自分の土地から離れることなく、そこで耕し続けたのだろうかということ。
普通に考えればそれは先祖伝来の地であり血縁・地縁があるだからということになります。
インドで行われたCOP11に参加した時、ボクはその理由を農家は土や風土と深く結びついているから、つまり自然の一部だから、簡単に移動することができないのだと伝えました。
それはたぶん間違いではない。でも正直言うと、その言葉だけではしっくりしないと自分でも感じていました。何かもっと別の理由もあるのではないかと。
放射能汚染に向き合っていく農家の真理は何なのか。その辺りの自分なりの解釈を今回のイベントで伝えたいと思ったのですが、やはりちょっとまとめきれなかった。何しろ農業の本質を問う深いテーマですから。
自分は有機農家だから、まずは有機農家とはいったい何なのかを考えたい。
有機農家というものは常に未来を見つめて生きている。耕している。
それは自分の、子供の、子孫の未来という個人的なこと=血縁だけではなく、地域や田畑=地縁、さらに未来の環境も含まれている。決して目先の利益を追ってはならない。つまり耕すことが「社会的役割」を担っている。
だから継続性、それに関わる技術、地域や環境にこだわるのです。それを達成する上で必要な条件が安全であること、安心であること。だから有機農家にとって、安全・安心は結果として付いてくるものであり、それが第一目的ではないと思いたい。
現在と未来、人と人、人と自然を紡いていくのが農業、特に有機農業のあるべき姿だと思う。そのために環境を守ることに、持続可能な資源の使い方、そして生物の多様性などを目指し多くの農家は努力してきました。
放射能はその努力を一瞬にして無にしてしまったのです。
とはいえ、未来に伝えるべきもの、農業のあるべき姿が、変わるわけではない。全てを未来に引き継ぐという社会的役割には変わりありません。
だから(もちろん望んでいなかったけれども)、降り注いでしまった放射能と向き合うしかないのです。(自分で振りまいたものではないけれど)、これを受入れながら未来につないでいくしかない。田畑を耕し続け、技術を引き継ぎ、文化を継承していかなければならないと思うのです。
もちろんこれは震災から約2年が過ぎたからこそ力強く言えるのです。
幸い放射能汚染された土壌でも、移行が少ないことがこの2年、多くの人の研究によって少しずつ判ってきました。継承していくうえで最大の懸案であった安全性の問題が最小限の影響で済むことが判ってきたのです。(もっとも外部被ばくによる健康被害はこれから現れてくるかもしれませんから油断はできません)
日本の土の力に感謝しながら、この財産を負に遺産とともに未来へと引き継いでいくのです。負を解決してくれるのは時間だけです。
いま福島では耕作放棄地が急激に増えています。これらを見ると悲しくなる。荒れた里山を見ると胸が痛みます。
この感覚は先祖伝来の土地とか、地元だからとかは関係ない。ボクのようにIターンで何の縁もゆかりもなく土着を目指している人でも同じ感覚になります。
それは耕す意味を知っているから、土とつながった暮らしをしているから、未来につなげたいからだと思うのです。
少なくとも、先祖伝来の土地だから、血縁や地縁、しがらみがあるからだけではないのです。
ゆえにIターンと言われる元々根なし草だったボクらでも山都や福島に居続けよう、耕し続けようとしているのではないでしょうか。
最近はそんな風に考えています。
それにしてもカフェスローは素敵な空間でした。イベントにはたくさんの方が来てくれました。久しぶりに再会した人、新たなる出会いもあり、その場に参加させてもらったことを深く感謝したいと思います。
豊かな自然に育まれたお米・野菜たちってホントに美味しい!
〜山間の小さな農業を応援して下さい〜
安心な農産物の生産・提携「ひぐらし農園」

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