3.地域づくりの実践(1)−経済再生
新しい地域産業構造の構築ー2つのポイント
@地域資源保全型経済
・資源保全+資源磨き+資源活用
・資源保全の「物語」に都市住民の「共感」が集中
※地域資源保全→物語→共感の循環を作る
A小さな経済の構築(年間36万〜60万円の所得形成機会)
・「小さな経済」の累積の上の、若者定住を可能とする「中程度の産業」
※もう一つの農村開発方式
従来は大きな経済→波及効果→中程度の経済
現在は小さな経済→積上げ効果→中程度の経済
感想
@は堰浚いを例に挙げると見事の当てはまります。堰という地域資源の保全から活用へ。その時に都市住民の「共感」を得ることで循環を作る。
Aについては、非電化工房の藤村靖之さんの『月3万円ビジネス』を思い出しました。ただ個人プレーでは意味がなく地域を巻き込んだ仕組みをつくる必要がありそうです。
西日本では庭先集荷というものがあるそうで、足の無いお年寄りが直売所に農産物を出荷できるよう、各戸に集荷に回るというもの。担うのは若者。こうした小さな連携と積み重ねが若者の定住につながるのでしょう。
ただ堰浚いボランティアの取り組みは、小さな経済の積上げ効果をまだ地元担い手が実感できるレベルではないようで、担い手の世代交代が進んでいません。これを数年の間に乗り越えられるかがポイントか。もちろん、農だけでなく、様々な「小さな経済」を、しかも早急に作る必要性を感じました。
4.地域づくりの実践(2)ーコミュニティ再生
農山村の新しいコミュニティの特徴
・西高東低(市町村合併が早く進んだ西日本に先行事例が多い)
・範囲は旧村(昭和合併)、旧小学校区、大字=「手触り感」のある範囲(400人から1000人程度)
先発する「手作り自治区」の4つの性格
@総合性→小さな自治・小さな役場
A二面性→自治組織でありがなら経済組織の側面を持つ。(共同売店など)
B補完性→2階建て組織。一階は行政区(守りの自治)、二階は地域づくり団体(攻めの自治)
C革新性→「一戸一票制」を乗り越える新しい仕組みつくり
ポイントは段階的発展(無理をしないコミュニティづくり)
感想
ボクが今まで関わってきた地域づくりの最大の欠点に、地域(行政区)全体を巻き込んだ取り組みに至っていないことがあります。堰浚いは結局関わっているのは田んぼの耕作者のみで今となっては集落内では少数派です。
喜多方市山都町で小田切先生の言う「手作り自治区」に近いのは沼の平行政区でしょうか。ただ規模は一行政区のみなので、規模ははるかに小さい。実際に高齢化が進み、今やっている福寿草祭についての運営も年々負担感がふえているようです。
逆に二本松市東和町のふるさとづくり協議会は単位としてはかなり大きい。旧小学校単位というのは「手触り感」という絶妙な表現の通り、理想的な大きさです。廃校になってしまいましたが、山都二小学区の行政区が協働で「福寿草祭」のような先進事例を支え、それをきっかけに「手作り自治区」をつくるという視点は必要です。
組織を2階建てというのはとても判りやすい。行政区の区会で前の方に男性が座り、後ろの方に女性や若者がかたまっているという風景はきっとどこの行政区もあるのではないでしょうか。こうした意思決定機関では、攻めの行動はとれません。地域づくりは構成員は同じでも別組織=二階でというのがよいということ。しかし残された時間のない中、無理をしないコミュニティ再生と言われても気ばかりが焦ります。
5.新たな動きー「田園回帰」の胎動
・若者の「田園回帰」志向は団塊世代よりも高い。
・地域おこし協力隊(地域サポート人)は2013年現在310自治体が導入し、隊員は978名、20代〜30代80%、女性37%、地元定着率56%
・地域サポート人の3つのタイプ、@仕事探し派、A自分探し派、B貢献の場探し派←これが最大
・地域サポート人の3つの活動(役割)、@生活支援、Aコミュニティ支援、B価値創造(守りから攻めへ)
・地域サポート人の定住へのプロセス、交流→支援(協働)→定住
・地域サポート人の集落再生(二つの段階)@初期段階=寄り添い型支援(足し算)、A地域づくり段階=事業導入型段階(掛け算)
・二階建て再生 @素人でもできる→A知識と経験が不可欠 ←サポート人の成長過程でもある。
感想
若者の田園回帰志向は実感しています。だからこそ喜多方では早急な「地域づくり協力隊」制度の導入が必要。定着率が高く、地域に対する貢献意欲も高い。ノウハウのない素人でも確実に効果があることが小田切先生の研究からも判ります。
6.展望
・日本版「逆都市化」現象への期待。←英国ではオイルショック後から状態化
・今必要なこと @昭和ヒトケタ世代の完全リタイア(「2015年問題」) A若者を中心とした「田園回帰」の流れを安定化させる。
⇒今は下りのエスカレーターを上っている。まずは「踊り場」づくり。そして上りのエスカレーターへの乗り換えを
そのためには
@ブームでない国民的関心を!(東京オリンピックによる逆流を乗り越えて)
A農山村の国家・国民的位置づけ 「国内戦略地域」@食料、A再生可能性エネルギー、B水、CCO2吸収源(森林)
感想
農業をやっている身としては、日頃から農山村がいかに日本にとって大切なものかを知ってほしいと思っています。残念ながら、現政権も目先のことばかりで、農山村や農林業の国家的重要性を理解していないとしか思えない。せっかくの若者の田園回帰志向が、オリンピック誘致という打ち上げ花火でしぼんでしまわないよう、門戸を広く開けておく必要がありますね。
豊かな自然に育まれたお米・野菜たちってホントに美味しい!
〜山間の小さな農業を応援して下さい〜
安心な農産物の生産・提携「ひぐらし農園」

1