12月23日は研修でお世話になった埼玉県小川町の霜里農場の同窓会でした。また同じ研修生仲間で昨年春に急逝された折戸えとなさんを偲ぶ会でもあり、多くの人が集まりました。元研修生の近況報告は、多様な生き方が垣間見れて面白かったですね。霜里農場がどんな所かを研修生の視点で紹介する文章を以前折戸えとなさんから頼まれて書いたことがあるのでここに転載しておきます。
今回で同窓会は最後にしたいと事前にアナウンスがあったのですが、会の終わり頃に来年は金子夫妻の結婚40周年であることが分かり、またお祝いに集まろうという話になりましたとさ。
「私が金子美登氏の霜里農場で研修したのは1995年7月から一年間でした。
当時は農家の子弟でない者が農業を志しても、行政やJAの支援など新規就農を促す制度はほとんどなく、ましてや農業高校などの学校を除けば、私のように農業知識の全くない者が学ぶ場所はありませんでした。そんな中、金子氏のように個人で研修生を受け入れてくれる農家は、暗中模索の若者にとっては希望の光でした。
初めて霜里農場を訪れた時、農場全体を包み込む空気に日本というよりも、もっと広範囲のアジア全体の文化の香りを私は強く感じました。何の知識もない若者でさえ何かすごいこと、オルタナティブな世界がここで展開されていることをすぐさま感じ取れたのです。
金子氏の有機農業は、単に農薬や化学肥料を使わない食の安全だけを目指していたのではありません。数多くの種類の作物を栽培する技術、生き物とともに暮らす豊かさ、周囲の環境を活かす知恵、バイオガスやVDFなどエネルギーの自給や資源循環を取り入れる先進性、地域や国内とのつながり、さらに世界中の人々とつながる懐の深さは、私がイメージしていた有機農業の世界をはるかに超えていました。そこには私たちが目指すべき理想の社会、すなわち持続可能で豊かな暮らし、平和な社会のモデルが凝縮されているのです。
ゆえに私のように農業経験のないものが一から学ぶには、あまりにも濃密で1年という短期間では足りなかったというのが正直なところです。しかしながらあえて学んだことを一言で表すとしたら、それは「生き方」でしょうか。
社会問題に立ち向かうのに必要なのは、相手をねじ伏せる力でも、説き伏せる言葉でもありません。まずはしっかりと大地に根を張ること。土を耕し、天候のみならず社会の風をも読み、自分というものをしっかりと創り上げ、地域とつながっていく。すなわち自給、自立、自治の精神です。派手な演出をすることもなく、粛々とこれを実践し続けてきた金子氏の生き方こそが、私が研修を通して学び、一生をかけて実践していくべき指針となりました。
その結果、研修を終えて私が選択したのは、山間の豪雪地帯で条件不利地と呼ばれる福島県会津地方山間部での就農でした。この地において霜里農場で学んだ「生き方」を実践する。それは金子氏を模倣するのではなく、その地域に合った有機農業を展開し、地域の人々とつながり、一緒になって持続可能な社会を実現するということ。壮大な目標ゆえにすでに研修から20年という月日が経ちましたが、いまだ志半ばです。2011年には東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染もありました。そんな中でも、農業をこの地で続けていこうと決断したのは、やはり農業を軸にした地域の自給、自立、自治の実現こそ、私が金子氏から学んだ生き方だとあらためて思ったからです。」
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