ヤマビルとは日本本土では唯一の陸生ヒルで、普段はじっとしているが、一たび動物に吸い付くと満腹になるまで離れることがない。
一度吸血すると1年間以上絶食しても生きていける。
さて今回は友人の有機農家があった災難。その相手はまるでヤマビルのようだというお話。
昨年11月に友人にネットショップを通じて仙台からお米の注文がありました。
無農薬・無化学肥料で栽培されたコシヒカリ。
ちなみにこの農家さんは有機JAS認証をとっています。
しかし震災後は有機JAS認証を必要とする米業者との取引が激減し、もともと個人消費者には有機JAS表示をする必要がないと考えて、ネットショップ向けも有機JAS とは言っていませんでした。
ところがネットショップの納品伝票には以前のまま「有機米」と記入されていたのです。(ちなみに伝票を用意したのはネットショップ側です)
つまり有機JAS認証はとっているものの、ネットショップ上にも、農家さんが出荷するコメ袋にも、手書きのメッセージにも有機米とは一切謳っていないのですが、納品伝票だけ昔のまま「有機米」と記載してしまっていたのです。
これが東北農政局の目に留まり、偽装表示で指導に入ると連絡がその農家さんに入りました。
(ちなみに仙台からの注文は不正表示調査のためのものでした。復興支援イベントに使いたいということを聞いていた友人はご丁寧に御礼の手紙を同封したそうです。)
指導担当は東北農政局の出先機関である福島地域センター。
まずは福島地域センター会津若松支所から職員二人が立ち入り検査に。出荷伝票を洗いざらい確認。
こうした立ち入り検査は合計5回行われました。
検査中ひっきりなしに若松支所職員にかかってくる電話。相手は本所の方のようです。
電話からは「あれは調べたのか、これはもう確認したのか」と怒鳴りちらす声が漏れ聞こえる。
そのたびに、友人は該当する書類を用意することに。
なぜか今回の案件と関係ないはずの野菜の出荷伝票まで調べていったとのこと。
帰り際にはどっさりと資料を渡され、その資料を使って勉強会を開催するように要請される。
「どなたか講師を呼んで勉強会を開けばよいのですか?」
「いえ、その資料をしっかりと呼んでください。その時の写真を添付して、勉強会を開催したことを報告するように」
ということで一人勉強会が行われました。その様子を写真に撮り、勉強会報告書に張り付けて送付したところ、書類に不備があり再提出せよとの連絡が。
「写真に日付が入っていません」
再発防止のために、出荷時にチェックするための表を作るように言われ、形式は自由だということで、用意したところダメ出し。
理由は全角、半角の使い方が統一されていないから。
修正後に、実際にチェックした表を提出したところ、直ちに電話が掛かってきて再提出の要請。
「チェックした部分がパソコン入力されている。その場で一つ一つチェックしているはずですから手書きでなければいけません。」
さらにチェック表はいつまで実施するのか聞いたところ、「ずっ〜と」だそうです。「ずっ〜とって2年とか3年とかですか?」
「いえ2年とか3年とかではなく、ずっ〜とです。」
なお野菜についても同じチェック表で記録に残すようにとのこと。
この騒動の最後には、福島地域センターに呼び出されて、センター長室に通され、センター長直々のご指導。
読み上げられた指導文に対して、口頭で謝罪と反省を述べされられる儀式。
別の友人曰く。「彼らは獲物を見つけたら離さない。だって違反がなくなったら彼らの仕事がなくなってしまうから。彼らは仕事を創るんですよ」
そう見つけた獲物に吸い付いたら、満腹になるまで離れない。そうすれば当面彼らは職を失うことはないのです。
かつて全国各地に食糧事務所というものがありました。
食糧庁が農水省に取り込まれたことで、出先機関であった食糧事務所は農水省の農政事務所に取り込まれ、2011年に地域センターと名称が変わりました。
この一件で明らかになったのは、残念ながらこの地域センターは農家のための組織ではないようです。
ちなみに今回の処分は、3段階でもっとも低い「指導」だそうです。
その次の段階が、「購入者すべてに謝罪文を出す」
もっとも重い処分は「農水省のHPに公表する」だとか。
いっそさっさとHPに公表してもらった方がよい気が。
それよりもまずはこうしたくだらない仕事で、生き伸びているお役人さんがいることを広くみなさんに知ってもらいたいですね。
豊かな自然に育まれたお米・野菜たちってホントに美味しい!
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