青いパパイヤの香り
l'odeur de la Papaye verte
93年フランス・ベトナム合作作品
脚本・監督/トラン・アン・ユン
音楽/トン・タ・ティエ
54年のサイゴンの話。
ある一家に使用人として雇われてきた10才のあどけない美少女ムイの目を通して、家族の喜びや悲しみ、ムイ自身の初恋や淡い官能の目覚めが、息を飲むほどそのしっとりとした夏の雰囲気が納められている。子供の頃の素直さや朴訥さ。
ベトナムで生まれパリで育った監督の思い描くアジア、そして女性の姿が描かれている。
音楽もそのシーンで弾いている主のベトナムの弦楽器や、長男が弾くクラシックピアノがそのまま使われていることが多く、ほとんどその家の中で起こった出来事だけが、カメラに納められている。小さなその一家だけの世界だが、窓から見える庭のパパイヤの葉がとっても素敵です。ある事情で遠い昔に失った娘を思う両親や祖母たちは儚い悲しさを抱えている一方、子供たちの無垢な表情が豊かに描かれている。夜の暗さや日差しが家に入り込む昼間のその照明感覚がとても素敵な雰囲気。ムイたち使用人がつくる食事のパパイヤの添え物や野菜がとっても美味しそうなんです。ムイが少女から女性へと、青虫〜さなぎ〜蝶へと育ってゆく姿は、その仕草一つ一つから感じとることが出来ます。
映像や雰囲気がすばらしい映画です。

0