まだ直接お会いしたことはないけれど、いろいろな面で支えてくださる貴重な友人のお一人、Fさんより、すばらしい贈り物をいただいた。
森本覚丹訳「カレワラ」(講談社学術文庫版)。
底本は、昭和12年に出版された日本初のカレワラ翻訳で、その2年前の「カレワラ出版百年」を記念して出版された、背皮装、天金、限定150部、という豪華本だったそうだ。
覚丹はすでにその十数年前に、カレワラ全50章をフィンランド語から翻訳し終えていたのだという。
香り高い言葉の選び方、文語のややかっちりした響きが小気味よく、脚韻や繰り返しによって生まれるリズムが、フィンランド語で語られる「カレワラ」と通じるものを感じさせる、ような気がする。
ヴァルティナなども演奏しているフィンランドトラッド ”Kyla Vuotti Uutta Kuutta”「村は新月を待ち」は、四分の九拍子のゆったりと美しい曲。
この曲を、札幌ザ・ルーテルホール、斜里・網走のコンサートでは、エヴァ・アルクラさんとaasian kukkaでアンコールに演奏し、カンテレキャンプでは、2日目夜のコンサートで、エヴァさんのコンサートカンテレに合わせ、ヴィルマさんが15弦を弾き語った。
”Kyla vuotta uutta kuutta”の詩は、カレワラの第25章、イルマリネンがポホヨラから花嫁を連れて家に戻る「新郎新婦の帰宅」の場面からとられたもの。イルマリネンの母ルッカが花婿と花嫁を待ちつつ歌った長い詩の一部。
「村は新月を待ち、
若者は陽(ひ)を待ち、
子供は漿果(くだもの)の成る所を探し、
水はタール塗りの舟を待つ、
我は虧(か)けし月を待たず、
また陽を待たずして、
我が同胞(きょうだい)を待ち、
同胞と嫁を待ち、
晨(あした)にも夕べにも視はり、
程もなく帰り来ると
彼が忠実に誓いたるに、
早く帰り来らざるは、
再び帰り来る前に、
一子を挙げしものなるや、
子供をもうけしものなるや、
彼らに何事の起こりしやを知らず。
・・・(以下、続く)・・・」
(森本覚丹 訳)
3日間のキャンプが終わって札幌へ向かった夜は満月だった。
月が海に大きく映り、漣が銀に揺れて、この上なく美しかった。

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