アンティ・ラントネン・スタイル(1)
Antti Rantonen(1877-1961)は、「最も若い世代のヴァイナモイネン」と称されることもあり、伝統的な意味合いにおいてのカンテレ奏者として最後の世代の人、らしい。「学校などで学ぶ音楽としてのカンテレ」以前のもの、ということでしょうか。
ともかく、アンティ・ラントネンの演奏のスタイルは、「ミックス・スタイル」とも呼ばれて、コード奏法とピッキングの混合で、メロディとコード感、リズム感、グルーヴ感が同時に出る演奏法。10弦や15弦の演奏にも使われる方法です。
基本の位置としては、左手2・3・4の指を、4・3・2弦に軽くのせておきます。そして、そのうちの2・4のみ、または2・3のみ3・4のみ、2・3・4と押さえ方を替えることで和音を変化させ、かつ、その押さえている状態から、おいている左手指で弦をはじきあげてシングルトーンを鳴らします。
コードに含まれる音は右手のストロークでコードで鳴らし、コード以外の音や経過音を、コードを押さえたあとの左手指で鳴らす、という感じです。
左手は、2・3・4の指の状態で3・2・1弦や5・4・3弦に移動することもあります。
右手は、2の指(人差し指)でストロークして、コード全体を弾いたり、コードの一部(高い方だけとか低い方だけ)を鳴らしたり、1音だけを鳴らしたりします。カンテレの側面をはじいてコンっと鳴らすこともあります。
実際に弾いてみた方がわかりやすいですね。
メジャーにチューニングして、「知事のポルスカ Maaherran Polska」という曲のフレーズを弾いてみましょう。
メロディは、
3/4 D de E e#f #F #fe | D de E e#f #F - |
2/4 A ag G g#f | #F #fe E e#f |D - D - |
(大文字8分音符、小文字16分音符、大文字にハイフンは4分音符)
弦の番号で書くと、
1 122 233 32|1 122 23 3−|
5 544 43|3 322 23|1−1−|
これを、コードとはじく音で構成するのです。コードの中にメロディがあるときは、メロディの音を意識して、和音の中のどの部分に主音があるかによって、どの音域を弾くか、(全体を弾くか、低音域だけ、あるいは高音域だけ弾くか)加減します。
最初に、Iのコードの位置(2・4弦)に左手4・2指を置きます。3指は浮いている状態です。
右手2の指で弾くものに「右」、左手指ではじくものには「左2」「左3」などと指番号も記してみます。
まず、最初の1小節、
右 右 左4(ここで左4指は上げたまま左3指を3弦に置く)
D d e
1 1 2
右 右 左3(ここで左3指は上げたまま左4指を2弦に置く)
E e #f
2 2 3
右 右 左4(ここで左4指ははじき上げたあと再び2弦に置く)
#F #f e
3 3 2
ふぅ、やれやれ、これでやっと1小節。
わかってしまえば難しくないのでめげないでくださいね。
2小節目もほぼ同じです。
2小節目
右 右 左4(ここで左4指は上げたまま左3指を3弦に置く)
D d e
1 1 2
右 右 左3(ここで左3指は上げたまま左4指を2弦に置く)
E e #f
2 2 3
右
#F―
3
そして3,4,5小節目、
右 右 左2(ここで左2指は上げたまま左3指を3弦に置く)
A a g
5 5 4
右 右 左3(ここで左3指は上げたまま左2指を4弦に置く)
G g #f
4 4 3
右 右 左4(ここで左4指は上げたまま左3指を3弦に置く)
#F #f e
3 3 2
右 右 左3(ここで左3指は上げたまま左4指を2弦に置く)
E e #f
2 2 3
右 右
D− D−
1ー 1ー
やったー。お疲れ様!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
言葉ではわかり難くて恐縮です。百聞は一見にしかず、こちらで、オウティ・リンナランタさんによる、優雅な模範演奏映像が見られます。
http://etno.net/index.php?id=106&la=en
他にもオウティさんの演奏がありますので、ぜひとくとご覧下さい。
このサイトで、JPPやマリア・カラニエミなどとのユニットで知られる、「ハルモニウム(足踏みオルガン)の魔術師」ティモ・アラコティラによるポルスカ演奏(ピアノとアコーディオン)なども聴けますよ!!

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