2007/6/24

トゥモロー・ワールド  映画

 2006年公開映画。これはレンタルDVDで見ましたが、やはり、劇場で見るべき作品でした‥。

 なかなか凄い。画面の色合いといい、役者の雰囲気といい、ストーリーといい、まったくハリウッド製SF映画と異にしています。イギリス映画らしいテイスト。ちょっとくすんだ、ちょっと疲れた、ちょっとシニカル。ニール・ジョーダンの「クライング・ゲーム」を思い出しました。

 劇中、プログレッシブロックの名曲「クリムゾンキングの宮殿」が流れたときは鳥肌ものでした。たぶん高校以来だと思います。この曲自体、破壊と再生をイメージさせる荘厳な曲で映画のイメージにぴったりですが、ぴったりすぎるのか、ちょっと外して使っていました。でもゾクッときました。

 CGをかなり多用して、破滅的な終末的世界を圧倒的なリアルさで作り込んでいます。ロンドンの風景なんて、ちょっと変なバイクが走っているけど違和感なく今のロンドンかと思えるぐらい。
 長回しのワンカットで撮られているシーンが多く、臨場感を上げます。トップシーンから爆弾テロによってビルが爆破されるシーンや、ラスト近くの戦闘シーンはあたかも戦場に遭遇してしまったようなリアルさ(この長回しは村川透監督、松田優作主演の「殺人遊戯」を思い出す)。それに子供が生まれるシーンも凄い。中盤の車が襲われるシーンは、ワンカットも驚きですが、あの話の展開も凄い。初めわき合い合いとしていたと思ったら、急に襲われて一人死亡。
 ハリウッド的な派手なCGの使い方と違い、CGとは感じさせないリアルな使い方です。渋いです。

 内容は、悪く言うと雰囲気で終わっているというか、寓話的なストーリーです。いろいろと現代の終末的な問題点を描写して詰め込んで、それらの要素は時代背景で実際のストーリーには直接かかわってきません。メインのストーリーは、全世界で18年ぶりに生まれた子供(!)を、得体の知れないヒューマンプロジェクトのトゥモロー船に無事乗せること。それだけなのです、そのなかに、現在の環境問題や、テロ、ましてやアウシュビッツを彷彿とさせる収容所が出てきたり。

 結局この映画は、圧倒的なリアルな終末世界をビジュアルで楽しみ、そのなかでしっかり希望の胎動を感じて終わる。それだけで充分なのでしょう。今さら何が悪いと告発調にすることすら手遅れの時代状況に我々はいる、ということが暗に示されているのかもしれません。もう手遅れだと‥。

 だから、ストーリー的には若干不満ですが(あれだけ苦労して生き延びたのに、なんで安易にトゥモロー船を信じるのか?)、テロや環境破壊などの破滅的な現在の状況をいろいろ考えさせ、破滅と破壊の先の希望について雰囲気たっぷりに描くことしかできない現在の状況を表した「娯楽映画」として充分楽しめました。
 マイケルケインがいい味を出していましたし、出演場面は少ないのですがジュリアン・ムーアが存在感があっていいです。

 監督は「ハリーポッタ アズガバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロン。

 ☆☆☆☆
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2007/6/10

時をかける少女  映画

 あの大林宣彦版ではなく、昨年作られたアニメ版。
 筒井康隆を原作にしていますが、まったくのオリジナルといえるストーリー。評判も上々で今年の日本アカデミー賞のアニメ部門で賞をとったとか。

 期待が大きかったせいか、期待ほどではありませんでした。普通に面白い作品。舞台を現代に置き換えて、配役もガラっと変わっています。ヒロイン性格がぐっと明るくなり、原作の三角関係は薄れて、今ふうに片思いがの連鎖するストーリー。すこしダラダラした展開ですが、高校時代の雰囲気がうまく出ていてなかなか楽しめました。

 ただ、ヒロインの反応や画のタッチが「ジブリ」風だったり、家族の反応などが大林版を彷彿させ、なんとなく既視感があるのです。まさかテーマどおりデジャヴ感覚が狙いだとは思えませんが。結局それらの作品(ジブリ「おもいでぽろぽろ」、大林版「時をかける少女」)と比較してしまうと‥‥残念ながら弱い。
 人物の動きは、製作会社のマッドハウスらしい躍動感があり、なめらかで素晴しいのですが、それも先輩作品今敏の「千年女優」と比較してしまい、やはり軍配は‥「千年女優」。
 できはそんなに悪くはないのですが、結局、作品密度がそれらと比較して軽い。
(未来から来た青年の動機もイマイチ軽い)
 そういえば、芳山和子(原作のヒロイン)は、おばさんとしてヒロインをサポートしていました。続編的な設定になっているようです。

 でも、けなしてばかりですが、そこそこ気に入っています。
☆☆☆

 
(※駄作と言われた角川春樹監督「時をかける少女」(97年製作)も意外と気に入っています。ちなみにこの作品はラストでしっかり二人が出会って終わる!
 出来の良さの順は、1.大林版、2.アニメ版、3.角川監督版)
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2007/6/6

蛇イチゴ  映画

 昨年のベストテンの上位に位置した「ゆれる」の西川美和監督のデビュー作(2002年作品)。
 「ゆれる」も良かったがこれも面白い。こちらの話の方がむしろ恐い。平穏な家庭が、実はいとも簡単に崩壊していく様がリアルに時にコミカルに描かれます。

 真面目一方の父親がリストラに合い、それを家族に隠すために、ウソを重ね、あげくに借金まみれになってしまっていた‥。家にはボケ老人。娘は結婚相手を紹介に家につれてくる。一見平凡で、慎ましやかな生活ながら平穏に暮らしている家族が、今まで溜めていたウソ(借金)が表面化することでいとも簡単に崩壊していく。そこに勘当したはずの息子が帰ってくる‥。

 見ていて思わず「あるある」と思ってしまいます。例えば介護をする嫁の表情とか(大谷直子、ボケの舅の世話をしている)、家に結婚相手を連れてきたときの反応とか(つみきみほが交際相手を連れてくる)。見ていて実生活で思い当たることがいろいろと出てくるのです(つみきみほの結婚相手は、いたって普通の人という感じで普通の反応の恐さが良く出ている)。それでいつもの日常だと思えたことが、アッいう間に壊れていく。自分自身の日常もそんなかも、と思ってしまいます。日常にはいつも地獄の淵がポッカリ空いていることに気づかされます。

 ラストに出てくる「蛇イチゴ」は、現実なんて欺瞞にだらけで、それでもそのなかに実は真実がちりばめられていると言っているのか。その象徴が「蛇イチゴ」。余韻を感じさせ、いろいろと考えさせられる終り方。

 宮迫は、軽さもいいが時おり無表情になる不気味さがいいです。ボケ老人の舅役の笑福亭松之助もいい味出しています。つみきみほもいつまでも若くで驚きでした。母親役の大谷直子の開き直る恐さ、父親役の平泉成がなんとも哀れ。芸達者に面白いシナリオ、ちゃんとした演出で、見ていて心地がいい映画でした。でも内容は、ちょっと恐い‥。

☆☆☆
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