2008/10/2

トニー滝谷  映画

 最近惜しくも亡くなった市川準の2004年の作品。原作が村上春樹の短編ということですが未読。

 村上春樹の小説は、学生時代から東京で就職していたころはよく読んでいました。初期の作品から「ノルウエーの森」あたりまでは読んだ気がする。映画は村上春樹の文体を思わせる映画で、原作自体を読んでませんが、確かに村上春樹の世界を感じさせる映画でした。

 大森一樹が以前(80年代)「風の歌を聞け」を撮ったことがありますが、村上春樹の小説を映画化するのは難しいもんだなと思いました。今回は、市川準の作風に合ったのか、とてもいい具合に映像化されていました。

 村上春樹の小説を一言で言うと、自分(主人公)と外界(他人や物など)との距離感を絶えず確認していくことがテーマに思えます。そこには、独特の孤独感があり、群れたがる日本人像とは一線を画す主人公像を感じられ、それが村上春樹の小説の魅力でした。

 この映画「トニー滝谷」はその辺がとてもうまく映像化できていて、尚且つ、美しい。映画としては、劇的な部分が少なく、淡々としているが、その辺も魅力になっています。

 主人公はイッセー尾形。彼の演技は一人芝居的ないつもの臭さは感じますが、それがひとつの孤独をまとったスタイルにも見えて適役。相手役の宮沢りえも危うい雰囲気が魅力的で、これも村上春樹の小説の住人そのものでした(宮沢りえはひとり二役)。

 撮影スタイルの統一感や、スケッチ風な描写(ストーリーで語るのではなく存在(人も物も)のありようを克明に描くこと)で、語られるこの映画世界は、村上春樹の小説の雰囲気を上手く表しています。
 ラストの終わり方も秀逸。見る側に、戸惑いと寂寥感を残して終わります。

 ちょっと変わった映画ですが、傑作です。☆☆☆☆。


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