2012/11/29
「鍵泥棒のメソッド」見てきました 映画

見たいと思っていたのですが、ワーナーマイカル県央でやらないようで残念とおもっていたら、2ヶ月遅れでやってきました(やらないよりいい!)
監督脚本は、傑作「アフタースクール」の内田けんじ。
ひょんなことから、売れない役者と殺し屋が入れ替わるコメディー的でもあるし、スリラーというかサスペンスもの的でもある、で、ハートウォームな話でもあります。
☆☆☆☆。(☆5個が満点)
この監督(内田けんじ)の映画は、ストーリーの巧みさが目を引きますが、ちゃんとしっかり感動させるのは、根底に人間愛というか、倫理観というか、しっかりした道徳観念があるからだな、と思います。
堺雅人は、一応主役ですが、「アフタースクール」につづいて今回も恋の橋渡し役のようなピエロ役ですが、なかなか冴えない顔がいいです。で、香川照之と広末涼子の恋がメインのような趣きです。
今回の広末涼子はやたらいい。こんなにいい広末は初めてです。
香川照之は相変わらずいいですし、森口瑤子がなんともいいです。それに荒川良々のやくざが恐いですし。役者がちゃんときっちり仕事をしていいアンサンブルを奏でます。
ちょっとしたアクションも手を抜かないし、カーアクションも普通のアクションものより上手い。
あ〜幸せな映画体験でした。
またこの監督の新作を早くみたいですね。話の緻密さや意外性、細部のこだわりは、日本のビリーワイルダーというよりヒチコックを彷彿させます。(話がコメディ調なのでビリーワイルダーをよく引き合いに出されるようですが)

2012/11/15
「北のカナリアたち」見てきました 映画

先日の日曜、県央ワーナーマイカルは見るのがないな〜と思いつつ、なにか見たいと思い、これを見てきました。阪本順治だし、ちょっとは骨のある映画では?と思い、またラジオで、パーソナリティーの女性の面白かったという言葉に興味を持ったのもあります。
☆☆☆☆。(☆5個で満点)
原作が湊かなえ(「告白」の原作者)だったので、けっこう人口的な話で、それをいかにリアルな風を入れて成立させるか、がポイントだと思いました。結果、阪本順治の手堅い演出が、ちょっと考えられないような人口的なストーリーをリアルに息づかせました。それが素晴しい。
何よりもやはり吉永小百合です。この人は、いい意味で「お化け」ですね。この年で清楚で、色気があり、尚かつ、公平さを感じさせる魅力。吉永小百合でなかったら、これほどまで説得力があるか、と思います。宮崎あおい、満島ひかりや小池栄子、松田龍平など主役級、それもイメージのつきすぎている彼ら彼女らも吉永小百合の前にはいい意味で「平準化」されて、ちゃんとそれぞれの役に納まっていました。演出力、演技力もあると思いますが、吉永小百合の存在感のおかげだと思います。(まあ、正直言って過去のシーンで、40歳という設定は全く見えませんが。)
それと、吉永小百合にからむ夫役の柴田恭兵、と警官役でからむ仲村トオルがいいです。脇役なのですが、キラっと光る。それもこの映画の要となる重要な設定です。(この二人が説得力がなかったら、この映画は成立しないぐらい重要な役で、出番は少ないながら見る側の想像力を掻き立てる力のある演技でした。)
それでこの映画の鍵になる森山未來は、助演男優賞ものだと思います。謎解きのある映画なので、あまり内容は語れませんが。
お涙頂戴映画ではないのですが、けっこう泣けました。
子役たちの合唱も素晴しい。野原を歩きながら歌っているシーンは「サウンドオブミューック」なみの感動があります。(子役たちが、まったくの素人で、歌唱力で選ばれたそうですが変なくせがない分とても自然な演技をします)
まったくの娯楽作です。でも、上質な娯楽作で、吉永小百合はいい映画に出演したと思います。

2012/11/13
「アウトレイジ・ビヨンド」 映画

久々に劇場で映画を見ました。気になっていたタケシの「アウトレイジ・ビヨンド」。
☆☆☆。(☆5個が満点)
思ったよりつまらなかった、というのが第一印象。
出だしはかなり良くて、「仁義なき戦い」のような話と知っていたので、あの「仁義〜」が東映印のチープなセットでチープなステージガンで演じていたのと違い、それこそあの頃から見ればアメリカ映画のような画質の、豪華な「やくざ映画」が見られると期待をしながら、いいぞ、いいぞ、と思いつつ見ていました。
話は前作より綿密で、たしかに「仁義なき戦い」のような筋でした。それはそれでいいのですが、けっこうこの筋にまじめに撮っている北野監督が、なんかあまり魅力を感じないのです。
北野監督は、今回、何をテーマにして撮っているのかな、というのが見えないように思えました。
本音を話さない駆け引きと、男同士のあの怒鳴り合いを楽しめたなら、面白いと思えるかもしれません。彼らには、まったく女(妻、愛人)も家族も出てきません。その意味ではその純粋さはハードボイルドな世界です。男のみ。
ただ、話の筋からどうしても「仁義なき戦い」を比較してしまうのです。「仁義〜」に比べて人物の造形が浅いように思います。彼らそれぞれの背景が見えない、というか感じないのです。「仁義〜」はその点、魅力的な人物が騙し合って罵り合って、弱音を吐いて面白かったと思えるのです。かたや「アウト〜」は、背景を感じさせない点も、ある意味ハードボイルドな感じにも思えます。それを浅いと思うかクールに思うか。
ただ、ハードボイルドに決めるなら、やはりアクションシーンはより残酷に、よりリアルに、銃撃戦も、華麗にやってほしかった、と思います。今までのタケシならできるのですから。銃撃戦は、引きの画がほとんど。撃たれた相手はフレームの外だったり、ましてや黒沢明の「影武者」を彷彿させるような、銃撃戦は省略して死体が転がってしるシーンを移動で見せたり。
もう銃撃戦は飽きた、と言わんばかりなのです。
私は、男たちの言葉の攻防をしっかり描くなら、その結果のアクションシーンも凄惨にリアルに描くべきだったと思います。
マイケル・マンの「パブリック・エネミーズ」の面白さは、人間のハードボイルドな描き方はもちろん、銃撃戦の凄さが面白い。捜査官役のクリスチャン・ベイルが、屋外の燦々と太陽が当たるなか、野原で、凶悪犯を走りながら狙撃するシーンがありますが、そのシーンだけでもドキドキする、胸のすくような、何度でも見たくなるような素晴しいシーンでした。
タケシの今回のアウトレイジは、乾いた現象世界を漉くって描くなら(人間をとことん描かないなら)、アクションシーンも乾いたどん欲さで描いて欲しかったというのが私の感想です。
