2013/9/29

「さよなら渓谷」  映画

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☆☆☆★★★。(☆=20点、★=5点)

 なかなかの力作。この監督はこれが一番では?と思います。と言っても「まほろ駅前多田便利軒」しか見ていないですが。ずっとうまくなった気がします。とくに前半の出だしがなかなかいい。濡れ場から取材陣が大勢集まるシーンなんて唸ります。

 ちょっと謎ときの部分もあるので内容は伏せますが、真木よう子が不気味です。で、この映画の謎を引き受けます。

 そして相手役の大西信満という役者。私は初めてですが、なかなかいい。言わば汚れ役なのですが、汚くない。表情が少なくて、暗いけどいい男、で、共感してゆく。願わくば、堕ちる前の栄光の時代をしっかり描けば悲劇性が強くなったのにと思います。

 脇を締めるのが監督の弟、大森南朋。彼自身の挫折が男のほうの主人公と重なるのですが、大森南朋のほうは主人公と違ってリアルに汚く中年で堕落しているのです。肉が弛んだ全裸シーンは迫力すらあります。
 彼が言わば語り部としてこの謎のカップルに関与していきます。自分の思いとダブらせながら。鶴田真由との夫婦関係もけっこう示唆に富んでいて、ウチもこんな関係かも、と思ってしまいます。

 後半、謎解きというか回想のかたちでこの二人のカップルのあてのない道行きがあるのですが、ここがこの映画の見せ場です。ここで感情をぶつけ合いながら引き合っていくのです。ぶつけ合うというより、一方的に真木よう子扮するかなこが大西扮する尾崎にぶつけるのですが。

 その重要な道行きシーンで我が三条中央商店街が出てきます。うらびれた商店街として。(残念ながら…)
 ラストのクレジットタイトルにも「三条中央商店街振興組合」と出てきます!

 「寝具のすみや」さんはいい宣伝になりました。あと近くの昭栄大橋がこの映画のクライマックスで使われています。なんか簡単にパヤパヤと撮っていきましたが、あんなテンションにすぐなれる真木よう子はさすが役者です。商店街のシーンでも啖呵きっていましたから。撮影時間は準備もふくめ30分ぐらいでした。すごいものです。まあ、キャメラが多分ハイビジョンのVTRで、照明がほとんどいらないのでライティングに時間がかからないので早いのでしょうが、驚きの早さです。(そのせいか、画質はすこしザラついた感じでした。とくに暗いシーンは)


 映画の終り方は、結論を出さないようなフワっとして終り方で、観客に考えさせるような終わり方です。
 男女の関係は、理屈で割り切れるわけではないですから。あとはそれぞれ見た人がその後を想像するということで。

 でも、またくっつくんだろうな〜。
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2013/9/26

「黄金を抱いて翔べ」  映画

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 やはり井筒は、「大阪の暴力」を撮らせたら右に出るのがいないですね。

 やくざがモノホンという感じで。それも筋に関係なく出て来る人たちながら。

 話は今のハイテクからは、考えられないくらいアナログな設定ながら、肉弾相撃つようなアナログ風なところは井筒らしいというか、こちらのほうが演出としては合っているのでしょう。

 けっこう頑張っているのですが、☆☆☆.5(☆5個で満点)といったところ。私は好きな映画です。井筒らしいアメリカンニューシネマの映画群の雰囲気がそこかしこにあって良かったです。金庫内のやり取りは、「明日に向かって撃て」のブッチとキッドのやりとりそのものですし、妻夫木と東方神起のチャンミンとの関係は「真夜中のカーボーイ」を思い出す。それに「ゲッタウエイ」も思い出す。浅野忠信の単純さはなんとなく「ゴッドファーザー」のソニーを思い出す。そう思うと妻夫木は「ゴッドファーザー」のマイケルの繊細さを感じさせるし、とここまでくると私のこじつけでしかないのですが。

 こじつけついでに言えば、浅野の奥さんが子供をあやしながら出てきますが、まるで「青春の蹉跌」でショーケンの先輩(森本レオ)の奥さんを思い出す。

 テンポの良さは深作欣二の映画を「いつかぎらぎらする日」を思い出すし、切なくなる哀愁は石井隆の「GONIN」を思い出す。でも、カラッとした突き抜けた躍動感は「いつかー」に劣るし、切なさは「GONIN」に劣るのが残念。

 高村薫の原作があるので、人物造形が良く練られているようで、映画は書き込んだ氷山の一角が見えるだけで、その点は、観る側の想像力をかき立てよかったのですが、テンポが良かった分、停滞部分がないというか、気持ちをグッと来るようなシーンがなかったのかな、と思いました。もう少し長くてもよかったのでは?もう30分ぐらい。2時間40分ぐらいでも持ちそうなストーリーだと思いました。そうすれば、妻夫木とチャンミンの関係はもっと泣けたかもしれません。

 浅野も妻夫木もチャンミンも西田敏行もいいですし、やくざの青木崇高や田口トモロヲや鶴見辰吾もいいですし。
アクションシーンも危険なシーンが多いし、面白いのですが…。

 個人的にはラストで警察との対決があってもよかったかなと思いました。もうちょっとボロボロになったほうがよかったかなと。

 日本映画では難しい銀行強盗の話をイイ線までがんばっているのですが、残念でした。けっこう好きな映画なんですがね。


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2013/9/24

「夢売るふたり」  映画

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 あまり評判がよくなかったように記憶していましたが、これがなかなか傑作でした。

 松たか子は基本的に「嫌い」な私ですが(演技に心がないから)、今回は良かったです。今回の彼女を見ていると「痛い」ですね。それが良かったです。

 やはりこの西川美和監督は上手いな、と思います。相性がいいのか、見ていて唸ってしまいます。

 出て来る女性たちがとてもきれいに見えました。鈴木砂羽、田中麗奈、木村多江、それにウエイトリフティングの太い女性、と、松たか子も。

 ☆☆☆☆。(☆5個が満点)

 松たか子は前から好きでなかったのは書きましたが、この映画での松たか子はよかった。主演女優賞ものだと思うんですが、思ったより取ってないようで。今回の演技、好き嫌いが分かれるのかな?

 阿部サダヲは、調子のいい意思の弱い男を好演していました。

 あんまり面白くて、3回見ました。初見の感動はなかったけど、やはりうまい監督だと改めて思いました。


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2013/9/21

「アルゴ」  映画

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 ☆☆☆★★★。(☆=20点 ★=5点)

 監督のベン・アフレックは映画好きでよく研究はしていることは感じられました。今回は70年代の映画の作風だとか。確かにちょっと濃いめのカラーとざらついた雰囲気は「ダーテイハリー」や「フレンチコネクション」を彷彿とさせる色彩でした。撮り方もそんな感じ。人物の顔のアップがほとんどないのが今風でしたが。
 ズームレンズで気づかないぐらいのゆっくりしたズームアップで人物を撮るカットは「エクソシスト」を思い出しました。

 イランのシーンはフィルムの質感をニュースフィルム風に撮ったりかなり凝って再現していました。人質の人物もけっこう実際と似ていたり、再現には力を入れているのが分かりました。

 話もそこそこ面白いというかかなり面白い。
 でも……。

 なんか物足りない。見て、「あ〜映画を堪能した」という気にはならなかったです。

 アカデミー賞の作品賞ということで期待したのがいけなかったのでしょう。
 演出は、言ってみれば、映画好きなまじめな青年がガンバってけっこういい線で撮ってます的な。

 ラストの飛行機で飛び立つシーンで、偽装と気づいた人民軍(かな?)がパトカーや装甲車みたいなので飛行機を追っかけたりして要らぬ演出がありましたが、そのへんでこの監督の限界が露呈してしまったような気がします。

 ベン・アフレックが映画をよく見ているのが分かります。映画オタクなんだと思いました。その映画好きが、ラストの飛行機の飛び立つときのおっかけシーンになってしまったと思います。映画的な劇的なシーンですが、この映画は「大統領の陰謀」のように映画的なアクションシーンを排除して緊張感を高めるべきだったと思います。いらない追っかけシーンだったと思います。このシーンが映画のレベルを下げていると思います。
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2013/9/19

「あなたへ」  映画

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 高倉健主演の映画。「ぽっぽや」を見てから降旗監督も力量が落ちたなと思い、あまり見る気がおきなかったのですが。ちょっと評判も良かったので見てみました。予習として降旗さん監督、健サン主演の30年ぐらい前の「冬の華」を見直しておきました。

 ☆☆☆☆(☆5個が満点)

 チャンイーモウ監督が健サンで撮った「単騎、千里を走る」を思い出しました。この映画は、チャンイーモウ監督が大好きな健さん主演で、エッセイのように撮った楽しい映画でした。

 今回の「あなたへ」も健さんでなければ成立しないような映画で、降旗監督の余裕の演出がしっかりとじわじわと感動を起こさせます。役者たちやエピソードがどれもイヤミのないほどほど感があっていいのです。それに画面の隅々までしっかりコントロールされた演出が、久々に映画の楽しさを味わわせます。飲み屋のシーンがけっこう出るのですが、活き活きしていてうまいもんだと思います。他にも大勢いるシーンの何度かあるのですが、どれも自然でビックリです。隠し撮りでなく堂々と段取りをして撮っているようなので、エキストラを入れて撮っているのでしょう。これは監督の力でなく助監督たちの力かもしれませんが。

 脚本も撮影もあまり知らない人ですが、いい仕事をしています。

 役者は、主役級を贅沢に使っていますが、百恵の息子の三浦雄大が出ていて、「冬の華」で山口百恵を熱望していたが(百恵本人も出たがっていた)、東映とホリプロの確執で実現しなかったということなので、それを考えると感慨深いです。

 亡くなった大滝秀治も「冬の華」では父親役、「駅」では上司、といつも出ていた人でしたし。

 田中裕子は、最初はちょと無理があるかな、と思いましたが、段々愛おしいく思えてくるのです。宮沢賢治の歌を歌うのですが、これが絶品。それほど上手くはないのですが、なんか染み入るのです。

 軽い感じの映画ですが、久々にいい映画を見たなと思いました。

 ダラダラ書きました…。
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