2006年2月25日、大阪市生野区にある大阪府立桃谷高校視聴覚室にて、在日朝鮮人研究会第13回全国大会が開催されました。関西・関東・四国・九州ならびに国外から、70余名の参加者があり、活発な議論が繰り広げられました。
【総会】では、代表の高柳俊男(法政大学教授)さんによるあいさつと研究会設立当時からの歩みの説明の後、運営委員の藤井幸之助(神戸女学院大学非常勤講師)さんから、「在日朝鮮人研究会」を改称し、研究会編の論文集『コリアン・マイノリティ研究』にあわせ、今後は、研究者・実践者・運動家・当事者をまじえて幅広いマイノリティ研究の交流の場を目指して「コリアン・マイノリティ研究会」として活動していくという旨の報告があり、承認されました。
【第1部】の自由研究報告では、運営委員の文京洙さん(ムンギョンス・立命館大学教授)の司会のもと、@文鐘聲さん(ムンヂョンソン・大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)による「在日コリアン高齢者ADL,QOLに関する比較研究」、A宋実成さん(ソンシルソン・大阪府立池田北高校・関西学院中等部非常勤講師)による「朝鮮学校初級部1年生児童の朝鮮語使用の一事例−文法諸形式の使用状況について−」、B前田達朗さん(韓国・中央大学校教員)による「奄美大島・瀬戸内町における「シマグチ」伝承運動」の3編の研究発表があり、報告者とフロアーとの間で活発な質疑応答が繰り広げられました。
昼食後の【第2部】では、まず、庄司博史さん(国立民族学博物館教授/多言語化現象研究会代表)に基調講演「多言語化するニホン−ホスト社会の母語教育のあり方−」というテーマで、多民族化しつつある日本社会における多言語化の現状と欧米諸国の母語(民族語)教育の系譜や日本における母語(民族語)教育の必要性と可能性についてお話しいただきました。
その後、神戸市在住の日系ブラジル人3世の高校生松原ルマ=ユリ=アキヅキさんの「私って何人?」をテーマにしたビデオ作品『レモン』(約8分)を上映しました(作品は
http://tvf2006.jp/movie/index.php?itemid=14で公開されている)。
パネルディスカッション「マイノリティの子どもたちに民族語/母語をどう伝えるか?−継承のための努力−」では、ヴァニア=アラルジさん(大阪府立高校特別非常勤講師)は、大阪府内の教育現場での、在日ブラジル人の子どもたちへの母語教育保障について、朴洋幸さん(パクヤンヘン・トッカビ子ども会代表)は、八尾市における在日ベトナム人・中国帰国者の子どもたちへの母語教育保障について、金美善さん(キムミソン・日本学術振興会外国人特別研究員)は、生野区在住の在日朝鮮人1世が朝鮮語と日本語を混用する言語使用について、具体的な言語使用の側面と言語に対する意識の両側面にふれ、母語継承の観点から何をどういかすか、韓成求さん(ハンソング・朝鮮大学校教員)は、朝鮮学校における「国語(朝鮮語)」教育の現状と課題について、そして、庄司博史さん(国立民族学博物館教授)は、ヨーロッパの少数言語政策の上、フィンランドやスウェーデンを中心に、北欧の移民2世への母語教育の現状と法整備などの観点から、おのおの発言がありました。司会進行の藤井幸之助さん(神戸女学院大学非常勤講師)からは世界人権の水準を示す国際人権規約・子どもの権利条約・人種差別撤廃条約などをふまえた上で、各地の自治体が策定している在日外国人教育指針・方針の具体的な運用をはかるべきだとの指摘がありました。
パネルディスカッションの後半では、パネラーとフロアーとの間で質疑応答があり、学術的・実践的な観点からの議論が交わされました。
大会終了後の懇親会(鶴橋「ぶあいそう」)では報告者・パネラーをまじえて、各地からの参加者が活発な交流をおこないました.
本大会にご参加くださったみなさま、ならびに、会場を提供してくださった桃谷高校の槇野聡さんほか、大会開催のためにご尽力・ご協力・資料情報をご提供くださったみなさまに対し、本研究会より、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。また、今後ともよろしくお願いします。
2006年3月1日
コリアン・マイノリティ研究会
(旧称、在日朝鮮人研究会)

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